第46話
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「まーくんおはよ!」
「おう、はよー」
今日もいつものように環奈が迎えに来てくれた。
うむうむ、今日も環奈は朝から元気だな。
「うむ、さあ行こうか!」
「え!? は、羽弥さん?」
「? どうした?」
「あ、い、いえいえ……」
驚く環奈の様子を見てキョトンとする姉ちゃんを尻目に、環奈がチョイチョイ、と手招きした。
「(ねえねえ!? 羽弥さんが一緒に来るってどういうこと!?)」
「(……姉ちゃん、昨日のうちに正式に大学に今日の休みを提出したんだって)」
本当に、文化祭に来たいがために大学休むだなんて……。
「ホラホラ、どうした二人とも。早く行くぞ」
「あ、ああ、うん……」
俺達はただ一人張り切る姉ちゃんに続き、家を出た。
「ふむ、しかし二人はいつも一緒にこうやって登校してるのか……うらやま……い、いや、相変わらず仲が良いな」
「「あ、あはは……」」
どう答えていいか分からず、俺と環奈は愛想笑いをする。
「私もあと一歳若かったら、その、一緒に登校することもできたんだがな……」
そう言うと、姉ちゃんの表情が少しだけ曇った。
「姉ちゃん」
「ん?」
「別に一緒に登校しなくても、姉ちゃんはいつも俺と一緒だし、環奈だっていつだって会えるよ。それにさ、その……大学だったら四年間だから、俺や環奈が姉ちゃんと同じ大学に通えば、一緒に通えるし……」
「ま、正宗……」
俺がそう言うと、姉ちゃんの顔が少し赤くなる。
そして。
「ふふ……ありがとう。やはり正宗は優しいな」
姉ちゃんは蕩けるような柔らかい微笑みを浮かべた。
な、なんで俺、姉ちゃん相手にこんなドキドキしてんだ!?
「ま、まあそういう訳だから、早く学校に……って、環奈?」
「むー……」
見ると、環奈がなぜか頬を膨らませて拗ねていた。なんで!?
◇
「さあ! 二日目最終日もがんばろう!」
「「「「「おー!」」」」」
環奈の掛け声に、クラスメイト全員とハルさん、姉ちゃんが歓声を上げる。
……つーか姉ちゃん、いつの間に自分の衣装用意してたんだよ。
や、わざわざ大学も正式に休んだし、朝から俺達と一緒に学校に来たから、おかしいと思ったんだよなあ。
それがまさか、一緒に『執事喫茶』に参加するつもりだったなんて……。
姉ちゃんに問い質したら、「ハルだって参加しているのだから、問題ないはずだ!」と論破されてしまった。
さすがの環奈も姉ちゃんには勝てず、ただ無言で首を縦に振ったのが印象的だったな。
「ふふふ、どうだハル! 今日は私とハル、どちらが多くのお客様から指名を受けられるか、勝負しようじゃないか!」
「う、うふふ……そ、そうですね……」
おおう、気合入ってる姉ちゃんとは反対に、ハルさんが若干引いてる……。
こうやって見ると、姉ちゃんがハルさんを振り回しているように見えるけど、姉ちゃん曰く実際にはハルさんが主導権を握ることが多いらしい。ちょっと意外。
「おっと、時間だ」
時計の針が九時を回ったのを確認し、早速教室の扉を開ける。
「いらっしゃいませー!」
さあ、いよいよ『執事喫茶』がオープン! なんだけど……。
「な、何だあ!?」
俺は思わず声を上げる。
や、だって、既に教室の前には長蛇の列ができていて、お客が開店を今か今かと待ち構えているんだから。
「お、おい……」
「わ、私も予想外だよ……」
「ふ、ふふ……これ全部お客様ですか……」
「うーむ、腕が鳴るな!」
一人おかしな反応を示しているけど、とりあえずは置いといて。
「こ、こうなったらみんな! 死ぬ気で働くよ!」
「「「「「お、おー……」」」」」
さすがの状況に、いつもノリのいいクラスメイト達も若干引いている。
とはいえ……やるしかないよな!
「よし! ハルさんと羽弥さんはホールを仕切ってお客様への対応をお願いします! 佐々木くん達も今日は外での宣伝はいいから、中を手伝って! 雫と長岡くんはバックヤードの管理を! まーくんは……」
「とりあえず、店長に連絡してケーキの追加発注と、それが終わったら教室の外でお客の交通整理をするよ!」
「うん! みんなお願い!」
環奈の適切な指示の元、俺達は一斉に動き出す。
「いらっしゃいませ!」
「お客様、順序よくお並びください!」
「ケーキセット二つですね! かしこまりました!」
教室の内外でクラスメイト達の威勢のいい声が響きわたる。
俺も店長に連絡したら、『任せてちょうだい!』と、心強い返事をいただき、今はひたすら列の整理に追われている。
他のみんなは……ハルさんは、さすがに慣れてるだけあって上手く立ち回ってるな。
姉ちゃんも元々のスペックは抜群だから、こういった接客応対も難なくこなしている。
だけど。
「悪い長岡! チョットここ頼むわ!」
「デュフフ、任されよ!」
俺は長岡とバトンタッチし、教室の中に入る。
「ええと、次……!」
「環奈!」
「ま、まーくん!?」
「落ち着け。チケットの管理は俺がやってやるから、環奈は陣頭指揮だけに集中しろ」
「まーくん……うん、ありがとう!」
役割が多すぎて少しテンパってた環奈の背中をポン、と叩いてからフォローに入ると、安心したのか環奈がホッとした表情を見せた。
「本当にまーくんは……大好き(ボソッ)」
「ん? 何か言ったか?」
「言ったよ! でも、まだ教えない!」
「なんだよそれ? ……って、それどころじゃねえな」
俺は環奈の言葉に思わず首を傾げながらも、とにかく今は目の前の仕事に集中した。
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次話は明日の朝投稿予定です!
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