第43話
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「うちのクラス全員ハルさんから説明を受けてますから、もちろんそのことは知っています」
うまい具合に環奈が追い打ちをかける。
二人のおかげで外堀も埋められ、残されたのは本丸のみ。
俺は環奈からのバトンを引き継ぎ、この二人を追い詰める。
「それより、冷蔵庫の電源が切れてるって話、うちのクラスの人間しか知らないはずなんだけど、なんで二人は知ってんの?」
「あ、い、いや、それは……そ、そう! 他の生徒からその話を……!」
「や、だからその生徒ってのは誰ですか? うちのクラスの奴っすか?」
「…………………………」
「へえ、言えないんだ。おかしいなあ、うちのクラスの奴かどうかくらい、言えるでしょ。別に、個人名教えろって言ってる訳じゃないし、俺達もソイツを見つけ出して責めるつもりもないし」
ま、言えるわけないよなあ。
だって冷蔵庫の電源切ったの、多分コイツ等だもん。
今から考えたら、昨日の夜、教室に戻った時に聞こえた物音、誰もいないはずなのに聞こえる訳ないもんなあ。
大方俺達が教室を出た後に忍び込んで、冷蔵庫の電源を切ったところに俺達が戻ってきたもんだから、慌てて物音立てちまったってオチだろ。
「ああそれと、お客様が大勢いる中で生徒会長と顧問の教師が揃ってこんな妨害行為をしたんだ。どう落とし前つけるんすか?」
「お、落とし前とはなんだ!?」
「つーか、人の話聞いてます? だから、二人はこの件に関してどう責任を取るんだって言ってるんすよ!」
俺はできる限り低い声で、二人に言い放った。
正直、俺は本気で怒ってるんだ。
船田の奴は、環奈に仕事を押しつけて自分はのうのうとソシャゲして、それがバレたら今度は自分は引きこもって佐山に押しつけて。
それが何とかなったら、何事もなかったように普通に現れて、誰にも相手にされないもんだから嫌がらせして訳の分からない難癖つけて。
松木の奴は教師で生徒会顧問のくせに環奈が追い込まれてるってのに無関心で、環奈が生徒会抜けても我関せずで放ったらかしで。
環奈や佐山、俺達ががんばって無事文化祭ができるようにしたら、今度は自分の手腕だとばかりにアピールして、コイツも相手にされないもんだから、船田と結託しやがって。
だから、俺は絶対に二人をただで済ませるつもりはない。
「ま、少なくとも今回の件については校長先生以下、全て洗いざらい話して、二人にはキッチリ罰を受けてもらいますんで」
俺がズイ、と顔を近づけて下から睨みつけると、二人は狼狽えながら後ずさった。
「フ、フン! お前みたいな奴が訴えたところで、生徒会長である僕とじゃ信用が違う! ドッチの話を信用すると思っているんだ!」
「そ、そうだ! 仮にも私は教師だぞ! なのにその態度はなんだ!」
うわお、相当見当違いのことを言い出したぞ!?
これだけ大勢の証人がいる中で、まだそんなこと言える根性があるなんて。
ある意味スゲエ。
環奈とハルさんを見ると、もはや汚物でも見るかのように顔をしかめている。
多分、俺もそんな顔してるんろうなあ……。
「と、とにかく! 学校や他の生徒達に迷惑をかけないようにするんだな!」
っ!? オイオイ! 捨て台詞吐いて逃げる気か!?
ど、どこまで腐ってるんだよ……。
その時。
「待て!」
教室中に凛とした声が響き渡り、全員が一斉にその声の主へと振り返る。
「聞いていれば生徒会長と生徒会顧問としてあるまじき行為! しかも、これだけのことをしでかしたにもかかわらず、謝罪の言葉一つもでないとは! 恥を知れ!」
そこには、本気で怒る、俺が最も尊敬する姉ちゃんの姿があった。
「な!? お、お前は……!?」
「お前? 仮にも先達に向かって言う言葉ではないな。小学校で習わなかったのか?」
わなわなと震えながら姉ちゃんに向かって指を差す船田に、姉ちゃんが辛辣な言葉で返す。
「お前、ほ、堀口か!?」
「お久しぶりです。相変わらず使えない教師ですね」
「な!?」
船田に先達への言葉遣いについて説教したばかりなのに、松木にはこの言葉遣い……掌返しにも程があるぞ姉ちゃん。
「ま、松木先生! この女性は一体!?」
「か、彼女は“堀口羽弥”……お前の二代前の生徒会長で、その辣腕ぶりと冷静沈着なところから、“百合が崎高のマリア=テレジア”と呼ばれていたほどだ」
「な、なあ!?」
姉ちゃんの正体を知って、船田の奴が愕然とした表情になる。
つーか姉ちゃん、そんな二つ名持ってんのかよ!
「ふう……やれやれ。これは私から花山先生……今は花山教頭、だったな。今回の一部始終、全て報告しておく。生徒会長の貴様は最低でも停学、松木先生は懲戒処分を覚悟しておくんだな」
「「…………………………」」
姉ちゃんの言葉に二人は観念したのか、ガックリとうなだれる。
……結局、姉ちゃんにオイシイところ全部持っていかれた。
俺はハルさんと環奈を見ると、二人は苦笑していた。だよね。
だけどまあ。
「お客様、大変お騒がせしました! 引き続き、この執事喫茶をお楽しみください!」
環奈の言葉を受け、お客達も平静を取り戻し、またお茶とケーキをお供に楽しむ。
ふう……バカ二人が乱入してきたからどうなるかと思ったけど、これで一件落着……って。
「で、佐山。お前は何してるの?」
「はえ!? やだなあ、せっかくだし私もお茶しようかなーなんて。で、センパイを指名しまーす!」
そう言って、一〇枚綴りのチケットを高く掲げてヒラヒラさせる。
お、お前え……。
「ダ、ダメだ! 私もまだチケットを半分しか消費してないんだからな!」
「えー! お姉さんは家で一緒なんですから、ここはカワイイ後輩に譲ってくださいよ!」
「ダメだ! ダメだからな!?」
……俺、休憩したい。
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次話は今日の夜投稿予定です!
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