第41話
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「正宗、来たぞ! ただし、今回は客としてな!」
昼頃になり、朝の宣言通り姉ちゃんがやってきた。
だけど姉ちゃん……そんなに俺をジッと見てどうしたんだ?
「うむ……やはり正宗はカッコイイな!」
「んあ!?」
ややややや!? 姉ちゃんみんながいる前でナニ言い出すの!?
や、そ、そりゃあ身内とはいえ、姉ちゃんに言われれば悪い気はしないけど……。
「まあいい、それはこれからじっくり愛でるとして、チケットだ」
そう言うと、姉ちゃんはポン、とチケットを俺に手渡した。
ええと、ひいふうみい……じゅ、一〇枚!?
「ね、姉ちゃんこれ……」
「ああ、ケーキセットを一〇セット頼むから、正宗は私の専属執事だ!」
「はあ!?」
い、いや、確かに一応指名制ではあるし、一〇枚もあればそれなりの時間は拘束できるけど……。
「ほ、本気?」
「うむ」
ハイ、ガチでした。
え、ええと、どうしようか……?
俺はどうしていいのか分からず、チラリ、と環奈を見ると。
「な……! そ、そんな手があったなんて……!」
うん、環奈も困惑してるみたいだ……って、アレ? ハルさんバックヤードから出てきたけど、そのまま教室も出ようとしてる!?
「ハ、ハルさん!?」
「あ、あわわわわわわわわ!? べべ別にチケット買いに行こうだなんて考えてませんよ!? ホントですよ!?」
いや、ハルさんはコッチ側でしょ。
なんで客として入ろうとしてるの!?
「さあさあ正宗、私を席に案内してくれ」
「あ、う、うん……」
「む、執事たるもの、そのような態度はいただけんな」
「も、申し訳ありませんお嬢様、どうぞコチラへ……」
「ううううう、うむ!? ……こ、これはイイぞ!(ボソッ)」
? なんで姉ちゃん、声が上ずってるんだ?
ま、いいか。
俺は姉ちゃんを席に案内すると、軽く椅子を引いた。
「お嬢様、どうぞ」
「う、うむ……何だかむずむずするな……」
所望されたのは姉ちゃんですぞ?
「では、お茶とケーキをご用意します」
俺はバックヤードへ戻り、トレイにケーキとホットコーヒーを乗せ、姉ちゃんの席へ再度向かう。
「お待たせしました」
テーブルにケーキとコーヒーカップを並べ、また戻ろうとして。
「ま、正宗はここで給仕をしてくれねば」
「へ?」
え? 俺はここで姉ちゃんに拘束されるの!?
「え、ええと、俺は仕事に……」
「し、仕事は私の世話だろう! そ、そのためにチケットをあれだけ用意したのだ!」
お、おおう……どうしても俺に面倒を見よ、と。
俺は環奈へと視線を向けると、環奈は肩を竦めて首を左右に振った。
うん、諦めろってことな。
「かしこまりました。では、お嬢様のお世話を誠心誠意務めさせていただきます」
「う、うむ……ふふふ……」
軽くお辞儀をすると、姉ちゃんが嬉しそうにはにかんだ。
ま、たまにはこんなにもいいか。
◇
「うむ、美味いぞ!」
姉ちゃんは俺の目の前でステラのケーキを頬張りながらご満悦である。
ただし、既に五個目だけど。
「ねえちゃ……お、お嬢様、夕食のことを考えますと、そろそろ……」
「む? ふふふ、ケーキは別腹だから心配するな」
女子っていつもそれ言うよね。
別腹の概念を誰か科学的に証明して欲しい。
「いらっしゃ……」
お客を出迎えようとして、クラスメイトが声を掛けようとして一瞬止まった。
なぜなら。
「生徒会だ。この二-一の出し物に“不適切”な部分があると報告を受けたので調査しに来た」
生徒会長のバカと松木のバカ……ツインバカが突然やってきて、うちの執事喫茶に難癖をつけに来やがったからだ。
それにしても。
「生徒会長、それに松木先生、“不適切”とはどういったことでしょうか?」
環奈が少し皮肉を込めた表情で生徒会長に話しかける。
「しらばっくれるな! 君達が提供しているものはなんなのだ?」
松木のバカがものすごい剣幕で環奈に指を突きつける。
「……姉ちゃん、ちょっと席外すわ」
「うむ、行ってこい」
俺は席を立ち、環奈の傍へと寄る。
するとハルさんも同じく俺達の傍に来てくれた。
「ちょ、ちょっと待ってください会長! アンタ何考えてるんですか!?」
その時、佐山が息を切らしながら入ってきた。
「……何だ、佐山くん」
「『何だ、佐山くん』じゃねーですよ! 突然うちのクラスにやってきて、『よりを戻すなら今のうちだぞ』って、バカじゃないですか!? しかも無視したら出て行ったから良かったと思ってたら、今度はセンパイや環奈さんに何絡んでるんですか!」
おっと、どうやら佐山の奴、このバカ共に既に被害に遭ってたみたいだ。
それにしても、『よりを戻すなら今のうちだぞ』って……コイツの中では付き合ってるとでも思ってたんだろーなー……。
佐山よ……お疲れ様です。
「それで、私達の何が“不適切”だと?」
「それだ! そのケーキだよ!」
船田の奴、お客が食べているケーキを勢いよく指差したモンだから、お客が驚いちまった。
コレ、完全に営業妨害なんだけど。
普通だったら訴えられるレベルだな。
「このケーキが何か?」
「『何か?』じゃない! 聞いたところによると、君達が提供するそのケーキ、腐っているらしいじゃないか!」
「「「「「はあ!?」」」」」
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次話は今日の夜投稿予定です!
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