第40話
ご覧いただき、ありがとうございます!
「みんな、準備はいい?」
「「「「「おー!」」」」」
クラスメイト全員……と、ハルさんが執事服に着替え、環奈の掛け声に合図しながら文化祭がスタートするその時を待つ。
そして、時計の針が九時ちょうどを差した。
「さあ! スタートだよ! 宣伝部隊はチラシ配りを! 裏方部隊とウエイター部隊はいつでもお客様を迎え入れられる準備をしといて!」
「「「「「おー!」」」」」
環奈の的確な指示を受け、各自が持ち場につく。
環奈、ハルさん、杉山はウエイター部隊、佐々木は宣伝部隊、そして俺、山川、長岡は裏方メインで、必要に応じてヘルプでウエイターに立つことになっている。
「だ、大丈夫でしょうか……」
緊張からか、ハルさんが手で胸を押さえながら、身体を強張らせている。
「あ、あはは、大丈夫っすよ。みんなでこれだけ準備したんです。絶対にウケますって」
「それもあるんですが……」
そう言うと、ハルさんが俺をチラリ、と見る。
「はああ……」
そして、なぜか手を頬に当てながら惚けた表情になった。
「だ、大丈夫ですか?」
「へ? あ、だ、大丈夫です……」
うーん、やっぱり緊張してるのかなあ……。
ステラでは俺よりもバイト経験長いから、俺と比べてもよっぽど場慣れしてるはずなんだけどなあ……。
「なあ、環奈……」
俺は環奈に同意を求めようと声をかけると。
「はうう…………へ? え? え?」
「い、いや……やっぱいいわ」
なぜだか環奈もハルさんと同様に心ここにあらずといった様子だった。
二人とも一体どうしたんだ!?
「(ど、どうしよう! まーくんがすごくカッコイイんだけど!)」
「(で、ですです! も、もし女性のお客様が正宗くんのことを気に入ってしまったらどうしましょう!?)」
「(そ、それは困る!)」
むう……二人でなにをコソコソと喋ってるんだ?
ものすごい疎外感を感じるんだけど……。
「デュフフフ……予定通り裏方になれたでござる。後はネットで入手したこのクスリで隷属執事喫茶に……ゲボア!?」
「マジヤメロ」
後ろでシッカリ聞いていた山川が、長岡の鳩尾に強烈なヒザ蹴りを叩き込んだ。
コイツ……懲りないな……。
「ぐおお……だ、だが、ありがとうございました……ガク」
そうか長岡……そんな思いをしながらも、女子のヒザ蹴りは尊いか……。
すると。
「「「いらっしゃいませ」」」
おっと、お客様第一号、二号、三号が来たぞ!
「ご指名はございますか?」
「は、はい! 杉山先輩……ではなくて、あちらのお兄さんをお願いします!」
おおう、杉山狙いからハルさんに釣られてチェンジか。
早速一年女子達をつかまえて……ハルさんやるな!
さあて、じゃあ俺も裏方の仕事、がんばるかな。
◇
「「「ありがとうございましたー!」」」
「三番テーブル! ケーキセット二つでレモンティーとコーヒー!」
「七番テーブル入りまーす!」
うちのクラスの執事喫茶はかなりの盛況ぶりで、そろそろお昼の時間になるところだけど、一向に客が途絶えない。
おかげで目が回るほどの忙しさだ。
「まーくん! 悪いけどホールの人が足らないからヘルプ出て!」
「あいよ!」
俺は準備していたケーキセットをトレイに乗せながら、四番テーブルへと運ぶ。
「お待たせしました」
「…………………………」
おい! 俺が持って行ったら無言かよ!?
少しは気を遣えよ! 泣くぞ!
おっと、次のお客様だ。
「いらっしゃいませ」
「ええと……あちらのお兄さんを……」
「すいませんがムリです」
そんな睨んでも、ムリなモンはムリなの!
だって考えてもみろよ? 来てる客の半分以上がハルさん指名だぞ!?
ちなみに指名割合は、今のところハルさん五割強、杉山二割弱、環奈一割弱、そしてその他大勢となっている。ハルさん圧倒的だな。
俺は見事に客捌きをしているハルさんをチラリ、と見る。
これは……。
「ええと、次は……」
「ハルさん」
ケーキセットを取りに戻ってきたハルさんに声をかける。
「ハルさん、休憩に入ってください」
「あ、正宗くん。私でしたらまだ……」
「ダメです。ハルさんちょっと働き過ぎですよ? バックヤードで休憩してください」
「で、ですが……はい」
俺の表情を見て本気で言ってることを察したハルさんは、少し残念そうな表情を浮かべながらもバックヤードへと入っていった。
さて。
俺は冷蔵庫から冷やしてあるレモンティーをグラスに注ぐと。
「ハルさん」
「正宗くん」
椅子に掛けているハルさんに、レモンティーを手渡した。
「あ、ありがとうございます!」
「ハルさんすいません……助っ人に一番働いてもらうだなんて……」
「い、いいえ! 私も楽しいですから!」
俺がハルさんに頭を下げると、ハルさんはわたわたと手を振る。
「……もう少ししたらお互いシフト交替ですから、そしたらその、せっかくなので学校を案内しますね?」
「! は、はい!」
そう言うと、ハルさんはパアア、と満面の笑みを浮かべた。
う、うわあ……すごく可愛い……。
「まーくん! どこ!」
おっと、環奈がお呼びだ。
「すいません、それじゃ戻りますね」
「は、はい! ありがとうございました!」
俺はバックヤードからホールに戻り、環奈に声をかける。
「悪い、それでどうした?」
「あ、ううん。その、ちょっと姿が見えなかったから」
「ああ、ハルさんがさすがにオーバーワーク過ぎたから、バックヤードで休憩してもらってたんだ」
「あ、そっか。ハルさんの指名、ひっきりなしだったもんね」
「おう……あ、いらっしゃいませ!」
いやホント、なんでこんなに人気なの!?
全然客が途切れねえ……って。
「姉ちゃん!」
「うむ。正宗、来たぞ! ただし、今回は客としてな!」
お読みいただき、ありがとうございました!
また、本日は更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした!
次話は明日の朝投稿予定です!
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