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第4話

ご覧いただき、ありがとうございます!


※第1話~第4話は短編とほぼ同じです。既に読まれている場合は第5話からどうぞ!

「……チクショー、スゴイ長かった……」

「あ、お、お疲れ様です」


 事情聴取と被害届の手続きを終え、警察署の受付に戻ってくると、青山さんが待っていてくれた。


「それで、どうなりました?」

「んー、それでですね……」


 事情聴取で状況を説明した際、相手の男から示談にしてくれって話があると警察官から聞いた。


 だけど、二人のあの態度に頭にきた俺は示談を受けずに被害届を出すことにした。


 そしたらあの二人がキレたらしく、色々暴言吐いてたらしい。

 知ったこっちゃないけど。


「……ということで今回はオシマイ、あの二人もオシマイ、ってことになりました」

「そうですか……」


 多分、あの二人は大学停学か、下手したら退学かなあ。知らんけど。


「じゃ、こんなとこにいても楽しくないですし、行きましょうか」

「あ、はい……」


 俺達は警察署を出て、駅に向かって二人並んで歩く。


「その……ありがとうございました」

「へ?」


 何のことだろ?


「正宗くんが斎藤さん……彼女の言葉を否定してくれて、怒ってくれて、う、嬉しかったです……」

「あ、あははは……」


 こんな綺麗な人に面と向かって言われたら照れてしまう。


「わ、私、こんな見た目だから、男の人と間違われることが多くて、それに、あまり人と話すのも苦手で……」


 はい、俺も男だと思ってました。


「だから、男の人に見られても否定できなくて、いつも我慢してたんです」


 そう言う青山さんは、悲しそうな表情で視線を落とす。


「だけど」


 青山さんが俯いていた顔を上げ、そして。


「正宗くん……君が、私のことを見つけてくれた」

「俺……ですか……?」


 青山さんは、コクリ、と無言で頷く。


「いつも朝すれ違う時、女の子達は上気した顔で見つめて、男の子達は不機嫌そうに顔を背けてた。だけど、君だけは、私のことをじっと見つめてくれた」


 違うんです、それ、嫉妬で睨んでただけなんです。


 なんてこと、今さら言えない。


「それに今日も、私があんなカワイイ服を眺めていても、君は否定せず認めてくれた。それだけじゃない、カフェでのやり取りだって、私のために怒ってくれて……」

「……………………」


 そして、彼女はじっと俺の瞳を見つめる。


「だから……だから、ありがとう」


 青山さんは俺の手を握り締め、そして。


「え……」


 俺の頬にそっとキスをした。


「青山さん……」

「あ、そ、その……わ、私のことは“ハル”って呼んでくれると……嬉しい、です……」


 そう言って、彼女……ハルさんは、頬を赤く染めながら、はにかんだ。


 それは、たとえ女神でも嫉妬するほどの美しさを湛えていた。


 ◇


「まーくん、おはよ!」


 休み明け、いつもの朝の通学時間。


 路地の角の待ち合わせ場所で、幼馴染の坂崎環奈が、今日も元気に挨拶を交わす。


「……はよ」

「もー! 相変わらず元気がないなあ。そんなんじゃ、“あの人”みたいにモテないよ!」

「あー……その、環奈さんや」

「? 何よ?」

「件の大学生……青山晴さんは、女の人だ」

「はあ!?」


 うん、そんな反応すると思ったよ。


「本当だ。俺は直接ハ……青山さんに聞いた」

「はあっ!? チョットまーくん!? 一体まーくんとどんな関係なの!?」


 環奈が詰め寄り、俺の襟首をつかんで前後に激しく揺さぶる。


「ちょ!? 環奈、苦し……!?」

「ねえ! それってどういう…………あ」


 すると、向こう側からいつものようにハルさんがやってきた。


 今日もいつものように、女子生徒達が次々とハルさんに声をかけようとして、全員が途中でそれを諦める。


 そして、いよいよ俺達の横を通り過ぎる、その時。


「正宗くん、その……おはようございます!」


 ハルさんは立ち止まり、最高の笑顔で朝の挨拶をしてくれた。


「はい、おはようございます、ハルさん」

「え!? ちょ!?」


 状況についていけない環奈が、目を白黒させながら俺とハルさんの顔を交互に見る。


「あ、正宗くん、襟が歪んでますよ?」


 そう言って、俺の傍に寄ると、さっき環奈にクシャクシャにされた胸襟を直してくれた。


「はい、これで大丈夫です」

「あ、ありがとう、ハルさん」

「はい、それじゃ」


 そしてハルさんは、今日もいつものように駅へと向かっていった。


 ただし、俺はその時のハルさんの表情に気づいてしまった。


 環奈に向けた、あの、どこか勝ち誇ったかのような顔……ナンデ?


「……へえ、そういうこと……」

「ええと……環奈、さん?」

「うるさい! まーくん、早く学校に行くわよ!」

「え? え?」


 俺は訳が分からないまま、プリプリと頬をふくらませる環奈に引きずられるように学校へと向かった。


 ……そしてこれが、俺を巻き込んだハルさんと環奈の長きにわたるバトルの始まりの合図となったんだけど、この時の俺には知る由もなかった……。

お読みいただき、ありがとうございました!


ここまでが短編と同じ、そして次話からいよいよその続きとなります!

これからの正宗を巡るハルさんと環奈とのバトルをお楽しみください!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 晴さんと環奈ちゃんのバトルのゴングが鳴っていますね(ΦωΦ)フフフ…♡ それにしても正宗くん、斎藤さんに絡まれた時の対応が格好いい! これからが楽しみです(*´ェ`*)♡
[気になる点] ん?環奈さんは、主人公が好きなのに、大学生の人が好きっぽく振る舞ってたってこと?? なぜそんなことするのか理解が難しい… 嫉妬心を煽るためくらいしか思いつかないけど、そんなことしたら好…
[良い点] いーねー( ・∀・) ニヤニヤ(おっさんかw) イケメンの中身が女性らしい女性!! 萌えギャップここにきたり!! そして始まる女バトル!! はー!どすこいっ!!
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