第38話
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文化祭に向けた生徒会での最後の仕事を終え、俺と環奈は教室へと戻る。
「……しかし佐山の奴、最後の最後まで行かせまいと粘りやがったせいで、ちょっと遅れちまったじゃねーか」
「あ、あはは……まーくんも災難だったね。でも本当は、ちょっと嬉しかったんじゃないの?」
「嬉しい? 俺が?」
何で?
「えー、だって睦月ちゃんってかなり可愛いよ? 一年生だけじゃなく二年生でもかなり噂になるくらい」
「ふーん」
「あれ? 興味ない?」
「ない」
佐山がモテようがどうだろうが、俺にとってはメンドクサイ後輩でしかない。
「そっかー……えへへ」
「?」
環奈の奴、なんで嬉しそうなんだ?
……ま、いいや。
教室に着いた俺達は扉を開けて中に入る。
すると。
「正宗くん!」
「ハ、ハルさん!」
教室の中にはハルさんの姿があった。
そして、はにかみながら俺の元へと駆け寄ってきた。
「ハルさん」
「はい、今日は店長と一緒に明日のケーキのお届けです!」
さすが店長!
予定通りキッチリ搬入してくれたな。
「それで店長は?」
「え、ええと……」
ハルさんは少し気まずそうな表情でチラリ、と教室の奥を見る。
すると。
「あらあ! アナタ、なかなかカワイイじゃない!」
「は、はあ……」
「それに結構筋肉もあるわね、何かスポーツでもしてるのかしら?」
「え、ええと、サッカーを……」
「んまあ! イイじゃない!」
……杉山の奴が店長に身体をペタペタ触られていた。
「ま、まあ、店長も嬉しそうだしいいんじゃないかな……」
「そ、そうね……」
「いいんですか!?」
いいんです。
杉山一人で満足してもらえるなら、ケーキを持ってきてくれたご褒美ということで。
「だけど、お店のほうは大丈夫だったんですか?」
「はい、今日は元々搬入のこともあったので、早く閉めようって店長が言ってましたから」
「そうだっけ?」
俺は環奈のほうへと振り向くと、環奈も首肯した。
アレ? 俺が失念してただけか。
——ガララ。
また教室の扉が開く音が聞こえたので振り返ると。
「正宗! 手伝いにきたぞ!」
「姉ちゃん!?」
なんと、今度は姉ちゃんまでやってきた。
「ええ!? だ、だけど、姉ちゃんも家のこととかで忙しいんじゃ……」
「心配するな。家事は全て済ませてきた」
なんだこの完璧超人は。
「じゃ、じゃあ俺達もがんばってラストスパートするか」
「「「おー!」」」
◇
「よし! これで後は明日を迎えるだけだぜ!」
全ての準備を終え、佐々木が元気よくガッツポーズする。
アレ? 佐々木ってこんなキャラだったっけ?
「デュフフ、明日は楽しみでござるよ。いよいよ隷属執事喫茶の開て……ブフォ!?」
「するわけないでしょ!」
長岡の闇の計画をうっかり山川に聞かれてしまい、哀れ長岡は教室の屑となった。合掌。
「まーくん……やったね」
「おう」
環奈がスッと俺の左肩に寄り掛かる。
「うふふ、がんばった甲斐がありました」
すると今度はハルさんが俺の右肩に寄り掛かった!?
な、なんだこの状況は!?
「ふむ。終わったのなら帰るぞ正宗」
そう言うと、姉ちゃんが俺の腕に抱き着いて引っ張る。
やや!? 姉ちゃんの胸の感触がダイレクトに!?
「……羽弥、正宗くんにはまだ明日のケーキの保管の確認をしてもらったりする必要がありますから、あなただけ先に帰っては?」
「む? 帰る場所は同じなのだから、一緒に帰るに決まっているではないか」
「ですけど、羽弥はもうすることはありませんよね? ここにいても、後輩さん達が委縮してしまうんじゃないですか?」
「なら早く正宗を開放すれば、私達はすぐにでも帰るが?」
ア、アレ? 姉ちゃんとハルさん、親友同士のはずだよね?
なんでこんな険悪ムードなの?
「ハイハイ、二人とも部外者なんですから、そろそろ帰ってください! 後は私達でしますから、ね?」
「「イヤだ(です)」」
おおう、ここに環奈まで乱入してきて、訳が分からんぞ!?
ま、まあいいや……三人がワチャワチャしている間に、ケーキの保管について店長とすり合わせしておくか。
「それで店長、ケーキは冷蔵庫に保管で大丈夫ですよね?」
「ええ、それで問題ないわ。だけど……」
店長からケーキに関して注意事項を一つ一つ確認する。
「……とまあ、そんなわけだから、少々のことは大丈夫よ」
「ありがとうございます!」
「いいのよ! それより、せっかくだからその執事喫茶でシッカリうちのケーキ、PRしといて!」
「はい!」
うん、やっぱり店長は男前だな。オカマさんだけど。
「よし、じゃあ帰……」
いつの間にか佐山まで加わり、四人はまだ言い争いをしていた……。
◇
「え? あ、あれ?」
ハルさんが少し慌てた表情でズボンのポケットを手で触ったり、ヒューズボックスの中を確認したりしだした。
「どうしました?」
「あ、い、いえ……どうやら教室にスマホを落としてしまったようでして……」
「本当ですか?」
「は、はい……」
「じゃあ今から教室に戻りましょう。みんなはちょっと待ってて」
「私達も行こうか?」
「や、大勢で行く必要ねーだろ。とりあえずハルさんと俺で行ってくるから」
ということで、俺とハルさんは教室へと戻る。
「す、すいません……」
「あはは、それくらいお安い御用ですよ」
「はい、ありがとうございます……で、ですけど、ちょっとだけ、嬉しいです……」
暗がりで良く見えないけど、心なしかハルさんがはにかんでいるように見える。
「文化祭の準備中は正宗くん、あまりステラに来れませんでしたから、こうやって二人きりになるの、久しぶり……」
「そ、そうですね……」
ヤベ、そう考えると緊張してきた。
周りが暗くて静かなこともあるせいか、ハルさんの息づかいがよく聞こえ、それに、ハルさんの香りも……。
お、落ち着け俺……!
そんな緊張した状況に耐えながら、俺達は教室に着くと。
——カタ。
「ん?」
今、中で物音がしなかったか?
俺はハルさんのほうを見ると、ハルさんにも聞こえたようで訝し気な表情を浮かべている。
「と、とりあえず中に入ってみましょう」
「は、はい」
俺達は中に入り、教室の明かりをつける。
……だが、中は特に変わった様子もない。
「……気のせいか」
「みたいですね……あ、ありました!」
「良かったっす!」
「はい!」
ハルさんはなぜか手作りソファーの上に置いてあったスマホを取ると、俺達は明かりを消して教室を出た。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の朝投稿予定です!
また、新作の短編「冷たくあしらう委員長に俺は今日もめげずにチャレンジした結果、その関係が少しだけ進展した話」を投稿しました!
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