第34話
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「コッチ! 入力し終わったよ!」
「おーい! これはどうするんだ?」
「それは雫に渡して!」
「デュフフ……良き、良きですぞ!」
クラスのみんなが環奈の指示に従い、慌ただしく作業をこなしていく。
……まあ、長岡については何も言うまい。
とと、俺も早くやっちまわないと。
「あ、は、掘口センパイ、これ……」
「おう、サンキュー」
俺は佐山から書類を受け取ると、中身にざっと目を通す。
「ん? これ、出店のエリアが被っちまってるぞ」
「え!? あ、ホ、ホントだ……」
「とにかく事情を説明して、どっちかのクラスに別の場所に移動してもらわないと……よし」
該当のクラスに話をつけに行くため、俺が席を立つと。
「わ、私も行きます!」
「ん? 佐山も他の仕事があるだろうし、俺がやっとく……」
「し、出店エリアの調整は元々私の仕事で、その、私のミスですから!」
「お、おう……じゃあ一緒に行くか」
「ハイ!」
おおう、あの佐山が素直に自分のミスを認めて、しかも、これまた素直に返事しやがった。
今までの塩対応とはえらい違いだな。
で、俺達はそれぞれのクラスに謝りつつ、場所の調整をするんだけど……。
「オイオイ、生徒会でもない後輩がここまで汗かいてんだ。場所の変更くらい、いいに決まってるだろ」
「あ、ありがとうございます!」
「ま、持ちつ持たれつってやつだ。がんばれよ!」
「「はい! 失礼します!」」
俺達は教室の戸を閉めて出ると。
「……先輩、超いい人達だったな」
「はい……」
ヤバイ、うちの学校、いい奴ばっかりなんだけど!?
や、もちろん船田の奴は例外だけど。
で、次の仕事が待ってるから生徒会室に戻ろうとして。
「そ、その、センパイ!」
「あん?」
急に佐山が呼び止めた。
「その……本当にすいませんでした!」
「お、おお!?」
そして深々と頭を下げ、謝罪する。
「や、別に俺はいいから。けど、環奈の奴には謝ってやってくれ。アイツ、ああ見えて傷ついてる部分もあると思うから」
ホント、普段は気が強いくせに、妙に落ち込んだり変に考えたりするトコあるからなあ。
「は、はい、もちろん環奈さんには謝りますけど……でもでも、それ以上に今までセンパイにはひどいこと言って……」
「わはは、そういうの慣れてるっつーか、それ以上にひどい言葉をしょっちゅう浴びせられたことがあるから気にすんな」
……といっても、そんな辛辣な言葉を聞くことは、もうないんだけどな……。
「さて、いつまでも頭下げてないで、さっさと戻らねーと環奈の奴がキレるぞ」
「は、はい……その……センパイって……」
「ん?」
「あ、い、いえ……センパイと環奈さんって、お似合いだなあって……」
「お似合いってなんだよ」
「あ、ほら、その、こ、恋人同士というか何というか……」
「はあ!?」
言うに事欠いて、佐山の奴何言ってんの!?
「オ、オイオイ、俺達は別に付き合ったりしてねーぞ!? ただの幼馴染だ! ただの!」
「そ、そうなんですか?」
「おう」
大体、俺が女の子と付き合うとか、そんなの……。
「そうなんだ……だったら(ボソッ)」
「ん? 何か言ったか?」
「あ、い、いえ! そ、それよりセンパイ! 早く戻りましょ!」
「って、ちょ!?」
いきなり佐山に腕を引っ張られながら、俺達はそのまま生徒会室へと戻って行った。
◇
「って、ハルさん!?」
「あ、ま、正宗くん」
生徒会室に戻り、俺の目に飛び込んできたのはまさかのハルさんだった。
イヤ、なんでここに!?
「ハ、ハルさん、ステラは!?」
「あ、はい、店長に事情を説明したら、差し入れのクッキーと一緒に、正宗くんと環奈さんの手伝いをしておいでって言ってくれたんです……」
「て、店長が……」
チクショウ、オカマさんなのに男前なことを……。
「で、ですから、私も今、環奈さんの指示で会計の整理をしてるんです!」
「そ、そうですか……」
ヤ、ヤバイ、申し訳ないと思いながらも、超嬉しいんだけど!?
「……ねえセンパイ、この人は?」
佐山が俺の背中からヒョコッと覗くようにしながら尋ねる。
「あ、ああ……俺と環奈がお世話になってるバイト先の……」
「初めまして、青山晴です」
「あ、はい、佐山睦月です……」
ん? 何だか既視感が……。
「セ、センパイ! 先程オッケーしてもらった出店場所の変更、早速やっちゃいましょう!」
「んあ!? ちょ、ちょっとま!?」
俺は引きずられるように佐山に引っ張られ、パソコンの席へと連れていかれた。
い、いや、何なんだよ一体……。
「さあさあ! がんばって修正しましょう!」
「お、おう?」
俺は佐山に言われるがままパソコンにデータを……って、ん? この香り……!
「へえ、正宗くんはパソコンが得意なんですか?」
「ハ、ハルさん!」
やっぱりハルさんの香りだった!
はあ……癒される……。
「チョ、チョット! 今センパイは仕事中なんで、邪魔しないでもらえますか?」
「ふふ……ええ、ですからそのお手伝いをしようかと」
「センパイのお手伝いは私がしますから、大丈夫ですー!」
な、何だこの状況は!?
「ホラホラ二人とも、まーくんが困ってるよ? それに睦月ちゃん……あなた、会長はどうするのかな?」
そこへ、顔は笑ってるけど少しこめかみをピクピクさせた環奈がやってきた!?
「へ? 会長って仕事放っぽりだして引きこもった、あのクソ会長のことですかあ? いや、そもそもヘルサーガ内での付き合いでしかないし、会長だからって気を遣って猫なで声で相手したら、向こうが勝手に勘違いしただけですよー!」
う、うわあ……佐山、怖ええええ! アッサリ切り捨てやがった!?
「ま、そんなのは興味ないからどうでもいいけど、とりあえず、まーくんの手が空いてるんだったら、私のお手伝いをして……「「はあ!?」」」
いやもう何なの!?
すると。
——ガララ。
「ふむ……この部屋に入るのも久しぶりだな」
とうとう、最強の助っ人がやってきた!
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次話は明日の朝投稿予定です!
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