第32話
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今日の六時間目は、文化祭に向けたクラスミーティングに充てられて、クラス全員で色々意見を出し合ってるんだけど……。
「ええと……これだと予算がオーバーしちゃうから、もう少し原価を抑えるか……うん、メニューをドリンク二種類とケーキセットに限定しちゃおう!」
「なあなあ、必要な機材とかってどうする?」
「うん、基本的なコンセプトはお客さんにくつろいでもらうことが重要だから、内装には気を使おう! そうね……ちょっと大変かもだけど、中庭のベンチを借りて、クッションと布でソファーチックにしたほうが良さそう! ……ということで、お願いできる?」
「お、おう、任せてよ!」
「うん、よろしくね」
うん、まさに環奈の独壇場だな。
こうやってクラスメイト達の質問や意見に的確に答えて仕事を差配する。
みんな環奈の人柄も実力も理解してるから、誰も環奈に反発しないし、男子にいたってはむしろ喜んで仕事を引き受けてやがるし。
といっても、俺も環奈と幼馴染じゃなかったら、他の男子と同じように浮かれて色々仕事引き受けてそう。
しかし、人望があって才能があって見た目も抜群って……ハッキリ言って、環奈のほうが生徒会長に向いてるんじゃね?
や、絶対に薦めないけど。
それより。
「……本当に俺達がコレ着るのか……?」
「……諦めるしかねーんじゃないの? 何つっても、今回の『執事喫茶』は坂崎さんの肝いりだからな」
「……デュフフフ、二人はまだいいでござるよ……拙者なんか、用意されたズボンの丈を合わせた時、その切りしろの幅に思わず引きこもりそうになったでござる……」
長岡……。
「つかお前、引きこもったら二度と女子と会話するチャンスはないぞ?」
「そ、それは困るなり!」
うん、絶対に引きこもることはないな。
むしろ犯罪に走らないか心配だ。
「ところで堀口、あれから坂崎さんは大丈夫なのか?」
「ん? ああ、おかげさんであれから何のリアクションもないよ」
「デュフフ、ならいいでござるが」
環奈が生徒会を辞めてから一週間経つが、あれから会長の船田や佐山、顧問の松木からは特に何も言ってきたりはしていない。
ただ、俺達の出し物もそうだけど、やっぱり生徒会の仕事が滞っていて、露店を出すクラスの区割りだったり、必要な機材の貸し出しだったりと、多くのクラスや文科系のクラブが不満を溜めているみたいだ。
松木のほうもちゃんと監督しろと教頭からかなり怒られてたって、担任の桐山センセが言ってたな。
それもこれも環奈に頼りっきりでサボってたツケだ。
精々学校中から袋叩きに遭わないようにするんだな、っと。
「ま、また何かありそうだったら、二人ともよろしく頼むな」
「おう。つーか何か奢れ」
「デュフフ、拙者は坂崎氏の使用済みハンカチ……ゲボア!?」
コイツ、まだ諦めてねーのか。
「それより、さっさと俺達の分の仕事を片づけちまおうぜ」
「だな」
「デュフ……少しは拙者の心配も……」
「「自業自得だ」」
◇
「へえ、では文化祭の準備は順調に進んでいるんですね」
「ええ。ま、これはほぼ環奈のおかげっすけど」
そう言ってケーキセットを運んでいる環奈を見やる。
「相変わらず環奈は責任感が強いというか何というか、結局がんばっちゃうんですけどね」
「ふふ、でも環奈さんががんばるのは、なにも責任感だけではないと思いますよ?」
ん? どういうことだろう?
「コラー! そこ! イチャイチャしない!」
「や、してねーだろ」
「してるし!」
なんでそうなるんだよ。
言いがかりだ、横暴だ。
「ふふ、してますよ?」
「ハルさん!?」
ハルさんの言葉に慌てて振り向くと、ハルさんが人差し指を顎に当てて悪戯っぽい笑顔を見せる。
「だって、環奈さんは学校で正宗くんと一緒なんですから、私も正宗くんと……一緒にいたい、ですから……」
え? え? ええええええええええ!?
い、今なんて言った!? い、一緒にいたいだってええええ!?
「ハ、ハルさん!?」
「……………………あ」
「あ?」
「あわわわわわわわわわわ!?」
ハルさんは真っ赤な顔を両手で押さえ、そのまま更衣室へと走り去って行ってしまった……。
「い、一体……」
俺は思わず環奈を見る。
「……まあ、ハルさんがヘタレだってことかな……た、助かったあ……(ゴニョゴニョ)」
「ん?」
「い、いやいや、何もないよ?」
? ま、いいか。
「それより店長に……」
「あ、そうだった。店長―!」
俺は厨房でケーキ作りに勤しんでいる店長を呼ぶ。
「あらあ、どうしたの?」
「ええと、実は……」
俺達は店長に説明する。
今回、文化祭での出し物の執事喫茶では、メニューを絞ってドリンク二種類のどれかにケーキがついたケーキセットだけにすることを決めた。
で、そのケーキについてはせっかくなのでステラのケーキを提供しようということになったのだ。
「基本的に文化祭ですから赤字にならなければ問題ありませんし、ステラのケーキなら美味しくて集客効果も抜群ですから、ぜひ提供したいんです」
「ふーん……」
店長はジョリジョリした顎をさすりながら思案する。
「……いかがでしょうか?」
環奈がおずおずと尋ねる。
すると。
「ま、何とかなるでしょ。で、何人くらいのお客を見込んでるのかしら?」
「! はい! おおよそ百人です!」
「うん、だったら大丈夫よ! ワタシに任せて!」
「「よろしくお願いします!」」
よし! ステラのケーキを確保できたのはデカイ!
これなら少々俺達のデキが悪くても、それなりに客は呼び込めるぞ!
「あ、そうそう、コーヒーと紅茶を出すって言ったけど、淹れるのって結構難しいわよ?」
「あ、はい、そのあたりは私とまーくんで他のクラスメイト達に教えていけばと……」
環奈の説明を聞き、店長はまたも思案顔になる。
そして。
「よし! だったら文化祭の日限定で、ハルちゃんも助っ人として派遣するわ!」
「「ええええええええええ!?」」
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次話は今日の夜投稿予定です!
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