第29話
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「や、だから、ちゃんと生徒会顧問の許可取ったから」
「「「はあああああ!?」」」
三人は再度驚きの声を上げた。
「こ、顧問の許可を取ったとはどういうことだ!?」
「や、だから言ってるじゃないですか。生徒会顧問の松木先生に、環奈が生徒会を辞めることについて了承してもらったって」
「嘘を吐くな! 松木先生が僕に相談もなしに了承したりなんかするはずがないだろう! 大体、坂崎くんのような女性に君のような低俗な男が傍にいること自体問題なんだ!」
俺の言葉が信じられないんだろう。
船田は俺のことを嘘つき呼ばわりした挙句罵倒する。
「ほんそれ~! 環奈さんにつきまとうの、やめたらどうなんです~! ま、環奈さんくらいしか、相手にしてくれる女の子いないんだから、しょうがないっか~! キャハハハ!」
その船田に追随する形で、煽るように俺のことを馬鹿にしてきた。
はあ……しょうがねえクソ女だな。
なんてことを考えていると。
「……げんにして」
「へ? 環奈さん?」
「いい加減にしてよ!」
「「っ!?」」
環奈が突然大声で叫ぶ。
「何なのアンタ達! まーくんはアンタ達なんかと違って、優しくてカッコよくて、すごいんだから! もういい! まーくん行こ!」
おおう、環奈がキレちまった。
あーあ、まあ結果オーライだからいいか。
「ま、待ちたまえ坂崎くん! どこへ行こうというんだ!」
「は? もう生徒会辞めたんで、どこでもいいじゃないですか」
「だ、だから何を勝手なこと……!」
「ほい」
引き留めようと手を伸ばす船田に、俺はポン、と一枚の紙を渡す。
「? 何だこれは……ナ、ナニ!?」
その紙を見た船田の表情がみるみる青ざめていく。
や、そりゃそうだよな。
その紙は環奈の退会届で、承認欄には松木が承認したサインと印鑑が押してあるんだから。
「ま、これで信じてくれました?」
「その、まーくんこれ……?」
「ああ、実はな……」
今日の休み時間、俺は松木を訪ねて職員室に行ったんだよ。
相変わらず松木の奴、やる気ねーのかつまんなそうにしててさ。
で、その退会届をあくびしてた松木の机に突きつけたわけ。
そしたら松木の奴思いのほかキレてさ。
やれ勝手な真似するなだの、オマエにそんな資格はないだの、大声で言いたい放題だったんだけど、そのせいで逆に職員室にいた先生達の注目浴びちゃったんだよね。
こういうトコ、松木ってバカだと思うわ。
それでさ、松木の奴に言ってやったんだよ。
『環奈一人に仕事を押し付けてネトゲの中でちちくり合ってるクソ会長と書記の管理もできねー奴が、何で拒否できんだよ』
って。
俺のほうも職員室に響くぐらい大声で言ってやったから、もちろん他の先生も聞いたわな。
それが事実だったら、生徒会顧問の管理不行き届きってことになるから、当然松木の奴も全力で否定してきたよ。何を証拠にって。
だから、俺は松木と、職員室にいる先生方に見えるようにわざわざ上に掲げて見せてやったわけだ。
「……昨日の環奈の生徒会室の鍵の返却時間と、オマエ等の、ええと……ヘルサーガっつーMMORPGだっけ? それのこの一週間のログイン履歴」
「「はああああああ!?」」
そう言うと、二人は目を白黒させる。
「ま、まーくん、どういうこと!?」
環奈が訳が分からないといった表情で俺を見たので、俺は環奈の頭をポンポンと叩いてやった。
「ま、要は仕事だの家庭の事情だの言ってたコイツ等のアリバイが嘘でしたって証拠と、環奈が夜遅くまで残ってがんばってたってことの証明だよ」
「ま、待て! なんで僕達のログイン履歴なんか持ってるんだ!」
あ、この会長バカだ。
自分からソシャゲやってることバラしやがった。
「いやあ、うちのクラスに一人、変態だけどそういうのにやたらとスゲエ馬鹿がいるんだけどさ。そいつに相談したら、一晩で用意してくれたぞ。オマエ達のゲーム内でのコメント付きで」
「は、はあ!? それこそあり得ないじゃないか! 大体なんで僕達のアカウント情報を!?」
「や、そこはもう一人、うちのクラスにやたらとお調子者なんだけど、妙に浅く広く人脈を持ってる奴がいてさ。オマエ等、昨日知り合いからRINE来なかった?」
「は!? 何を言って……ああっ!」
うん、本当にバカだ。
まあ、俺が二人に頼んでやってもらったのは、佐々木の人脈を使って船田と佐山のソシャゲのアカウントを聞き出してもらい、それを長岡に提供してもらう。
聞き出すこと自体は、同じクランに参加したいだのフレンド登録したいだの適当言えば、簡単に聞き出せるからな。
で、長岡にそのアカウント名からソシャゲの中でのログを追っかけてもらったら……コイツ等ご丁寧に掲示板で会話してやがんの。
スマホでソシャゲしてるから、いちいちRINEに切り替えてメッセージのやり取りが面倒くさいのかも知れないけど、クソみたいなイチャコラの応酬をオープンな掲示板で書き込みするなよ……。
長岡から手渡されて見た時は気持ち悪くて吐きそうになったわ。
「だ、だが、そもそもなんで僕がヘルサーガをやってることを知ってるんだ!?」
「ああ、だってオマエ、休み時間によく佐山とスマホ片手に喋ってたじゃん」
「あ……」
そうなんだよなー。
いつも環奈のところに来て船田の悪口言うくせに休み時間は一緒にいるからおかしいと思ってたんだよなー。
つまり、コイツ等デキてるんだろうなー、って思ってたんだよ。
「そしたら案の定だろ? 無防備にもほどがあるぞ」
そう言うと、俺は思わず肩を竦めた。
「んで、当然そんな証拠を突きつけられたら、先生達の手前、あの松木もダメだなんて言えないよな。だって、自分の管理が行き届いてないせいで、高校生とはいえあんな遅くまで生徒会の仕事をさせてたんだから。しかも、松木本人も環奈を放ったらかしで」
「「…………………………」」
さて、それじゃ最後に捨て台詞だけ。
「つーことで、環奈は生徒会は辞めたから。環奈に押しつけて文化祭の遅れが出ている分は、もちろんお前達がなんとかするんだろ? できなきゃ学校中から突き上げられるだけだもんな」
「まーくん……」
コラコラ環奈、そんな泣きそうな顔で見るなよな。
こういう時はさ。
「はーふん!? は、はひふふほ!?」
俺は環奈の頬をつまむと、無理やり横に引っ張った。
「ホレ、お前はやっぱり笑ってるほうが似合ってるぞ」
そう言って、つまんだ頬を離した。
「まーくん……う、うん!」
全く、やっと笑いやがった。
お前、ずっとシュンとしてたからな。
「よっし、じゃあステラに行こうぜ。今からでも、行けば少しは役に立てるだろ」
「うん!」
そして、憎々し気に俺達を睨む二人に。
「んじゃ」
「お世話になりました」
俺達は皮肉を込めて挨拶し、生徒会室を出て行った。
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次話は今日の夜投稿予定です!
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