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第28話

ご覧いただき、ありがとうございます!

「環奈、三―二の教室で間違いないよな?」


 俺達は、生徒会長である“船田佳彦”の教室の前にやって来た。


 環奈のバイトについての是非について問うために。


「う、うん……ね、ねえ、まーくん、私だったらその……」


 俺の制服の袖を引きながら、環奈は少し困惑したような、不安そうな、そんな表情をしていた。


 や、だからそんな顔すんなよ。

 いつもみたいに自信に満ち溢れてて、胸を張って前を見てるのがお前だろ?


 だから。


 ——ガララ。


 そんなお前に戻ってもらうために、俺は教室の戸を開けた。


「すいませーん、生徒会長っていますかー?」


 俺はわざと少しとぼけたように生徒会長……船田を呼び出す。


 すると、教室にいた先輩方が、一斉に窓際にいる眼鏡をかけた男へと視線を向けた。


 この船田、成績もいいんだけど、何よりそのルックスとクールな態度で生徒会長に選ばれただけあって、船田の周りには数人の女子生徒がいた。


 そして船田は俺達のほうへと見やると、面倒くさそうな表情を浮かべてかぶりを振り、周りの女子達に一言かけてからこちらへと歩いて来た。


「僕に何か用か?」


 船田は少し低めの声で尋ねる。


「や、ちょっと環奈のことで相談がありまして」

「坂崎くんの?」

「はい」


 すると船田は、環奈をまじまじと見つめる。


 環奈はその視線が嫌なのか、さりげなく俺の後ろへと隠れた。


「……ふうん。君が坂崎くんが言ってた幼馴染、かな?」

「そうっす。堀口っす」


 俺は軽く頭を下げると、船田は教室を出て。


「分かった、話を聞こうじゃないか。生徒会室でいいかい?」

「はい」


 スタスタと歩いて行く船田の後を、俺達三人は黙ってついて行った。


 生徒会室に着くと、船田はおもむろに窓際中央にある椅子に腰かけた。


 あそこが生徒会長の席なのかな?


「それで、坂崎くんに関する相談って?」

「はい、環奈は今、俺と一緒にバイトしてるんすけど、そこの佐山が生徒会メンバーはバイト禁止で、会長も認めるはずがないなんて言うもんですから」

「チョ、チョット!?」


 俺が船田に説明すると、佐山は焦ったように俺の言葉を遮ろうとする。


「何だよ、お前がそう言ったんじゃねーか」

「そ、そうとは言ってないですよ!?」

「オイオイ、この期に及んで嘘吐くなよ。なあ、環奈?」

「う、うん……」


 環奈はどうしていいのか分からず、俺と佐山の顔を交互に見ながら困った表情を浮かべる。


 しっかしこの佐山、どうしようもねえな。

 船田に言われて困るんなら、初めっから言うなっつーんだよ。


「……君達の話は分かった」

「それで、どうなんすか?」

「ああ……結論から言わせてもらうと、残念だが佐山くんの言う通り、アルバイトは認められない」

「ハア!? 何でっすか!」


 バイトについて了承しないことに、俺は怒ったような素振りで船田に詰め寄る。


「決まっているだろう。バイトなどよりも生徒会のほうが優先事項だ。坂崎くんも生徒会の一員として選ばれたんだ。その重責をもう少し認識すべきだろう」

「はあ!? だったら佐山はどうするんだよ!」


 船田の言葉を受け、俺は環奈の隣にいる佐山を指差した。


「佐山くんについてはご家庭の事情と伺っている。なら、生徒会の業務ができないこともやむを得ないだろう」


 船田はピシャリ、と言い放つと、ゆっくりと席を立った。


「話は以上だな。なら僕は……」

「……おい環奈。お前、生徒会なんて辞めちまえ」

「ま、まーくん!?」

「「はあ!?」」


 俺の横を通り過ぎざまに放った言葉に、船田と佐山、そして環奈が驚きの声を上げた。


「な、なにを言ってるんだ! なぜ君にそんなことを言う資格があるんだ!」

「資格も何も、そんなの環奈は俺の大切な幼馴染だからだよ!」


 叫ぶ船田に、俺は大声で反論する。


「オマエ等が仕事しないせいで、環奈がその尻拭いでどれだけ大変な目に遭ってるのか分かってんのか! 昨日だって環奈は、押し付けられた文化祭の仕事を片づけるために、夜遅くまでここで一生懸命がんばってたんだぞ!」


 俺が二人を罵倒すると、癇に障ったのか、船田と佐山、それぞれが非難の声を上げる。


「そんなもの、副会長なのだから仕方ないだろう! そもそも生徒会長は副会長以下の仕事について、的確に差配し、重要事項を決定するのが仕事だ! それに、昨日も僕は夜遅くまで自宅で生徒会の作業していたよ!」

「会長も言った通り、私だって家庭の事情でできないだけですよ! それを少なくともアンタなんかにとやかく言われる筋合いはないですよ!」


 ああ……本当にコイツ等、マジでムカつくんだけど!


「だから言ってんだろ? もう環奈は生徒会辞めるから、あとはオマエ等が何とかしろよ」


 俺は話は終わりだとばかりにそう言い放ち、手をヒラヒラさせた。


「はあ!? そんな勝手な真似、生徒会長の僕が許す訳……」

「あ、別にオマエの許可いらねーから」

「「はあ!?」」

「まーくん!?」


 俺の言葉に、三人が一斉にこちらを見る。


「だから、別にオマエの許可なんざいらねーつったの」

「馬鹿な! 生徒会の権限は会長であるこの僕に……!」

「や、だから、ちゃんと生徒会顧問の許可取ったから」

「「「はあああああ!?」」」


 三人は再度驚きの声を上げた。

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は今日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 幼馴染は女と見られてないから、全ての努力が空回りしていて可哀想。 晴はあっさり女として見られて、ギャプ萌えで簡単に意識されてるのに比べると不憫過ぎる。 早く、女として見られないと差が…
[気になる点] 嵐が近づいておるのぉ… [一言] 生徒会は社会のイヤな方の縮図じゃったか。 キチンと対応するマサムネ、頼もしいのお。
[一言] 正宗…か、かっこいい…惚れるわ うほっ♪
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