第27話
ご覧いただき、ありがとうございます!
「ただいまー」
「うむ、おかえり」
家に帰ると、姉ちゃんが今日も俺の帰りを待っていてくれた。
「正宗、ご飯は?」
「うん、もちろん食べるよ」
姉ちゃんにそう言うと、俺は手を洗って食卓についた。
「いただきまーす」
「うむ、いただきます」
今日も姉ちゃんと一緒に晩ご飯を食べる。
うん、美味い。やっぱり秋は秋刀魚だな。
「それで、RINEでは聞いたが、環奈は大丈夫なのか?」
「ああ、うん。とりあえず俺も手伝って、今日しなきゃいけないことは全部できたらしいから」
「そうか。だが」
「ああ、分かってるよ」
そう。環奈のことだから、絶対家にも持ち帰ってるはずだ。
何より、アイツがUSBメモリをパソコンから抜いてカバンに入れてるのを見たからな。
「で、正宗はどうするつもりだ?」
「何だよ、分かってるくせに」
「ふふ、まあな。だが、さすがは私の正宗だ」
「その言い方、誤解を生みそうだからヤメテ」
そんな会話をしながら食事を終えると、俺達は食器類を食洗器に入れた。
「正宗、お風呂も沸いているぞ」
「ちょっと一本RINE打つから、姉ちゃん先入ってて」
「分かった。何なら一緒に入ってもいいんだぞ?」
「だから、誤解されるからヤメテ!?」
俺は姉ちゃんの冗談とも本気ともつかないような発言にこめかみを押さえつつも、とりあえずスマホを取り出してメッセージを打ち込む。
『すいません。明日のステラのバイト、休みます。それと、休むことは環奈に内緒にしておいてください』
よし。送信、と。
——ピコン。
返信早いな!?
『了解しました。店長にも伝えておきます。事情はお聞きしませんが、無理はしないでくださいね?』
ハルさん妙に察しがいい!?
そして……やっぱり優しいな。
『ありがとうございます! はい、無理はしません!』
俺はハルさんにそうメッセージを返すと、ベッドの上でゴロン、となる。
さあて、後は佐々木と長岡の手を借りるか……。
俺は佐々木と長岡にRINEで連絡しつつ、明日に備えて色々とシミュレーションをした。
◇
「ふう……」
次の日、教室に着くと自分の席に座り、軽く溜息を吐く。
ハルさん、昨日RINEでお願いした通り、環奈に俺がバイトを休むことを一切伝えず、また、気づかれるような素振りもなかった。
そういうところ、やっぱり大人の女性ってことなのかな。
環奈だったら、すぐにボロが出そう。
「オッス、堀口」
「よう、佐々木。それで……」
「ああ、聞いておいたぜ。顧問は現国の松木だったわ」
「サンキュー」
そうか、あの無気力教師が顧問か……。
「あ、あと、例のアカウントも聞き出して、長岡の奴に送っといたわ。で、お前の読み通り二人ともだったぞ」
「ホントにお前スゲエな!?」
「いやいや、お前こそ何でそうだって分かったの?」
「秘密」
すると。
「デュフフフ……堀口氏、頼まれてた情報を入手したでござるよ」
「おお! 長岡はさすがに無理だと思ってたんだけど、よく分かったな!」
「デュフフ、佐々木氏からもらったアカウントから、あの二人はヘルサーガで同じクランに所属していることが分かったでござる。まあ、その気になれば素人でも分かるでござるよ」
「や、素人はわざわざそんなことしねーから」
だけど、とりあえずはこれで何とかしてみるか……。
「よし、二人とも助かったぜ! バイト代が入ったら売店の焼きそばパン奢ってやる」
「安上がりだな、オイ」
「デュフフ、拙者は坂崎殿の靴下を一足……ゲボアッ!?」
コノヤロウ、そんな真似したら、俺が環奈に殺されるわ。
「んじゃ、早速行動開始といくか」
◇
——キーンコーン。
放課後になり、クラスのみんなが帰り支度や部活へ行く準備を始めていると。
「環奈さーん!」
佐山が見計らったように教室にやって来やがった。
「……睦月ちゃん、今日はどうしたの?」
さすがの環奈も思わず警戒する。
わざわざうちのクラスまでこうやって来たってことは、つまりは厄介事を持ち込んできた可能性が高いってことだからな。
「それが聞いてくださいよー! あの会長、私にまた仕事を押し付けてきたんですー!」
「仕事って?」
「今度の文化祭の予算を見直せっていうんですよー! ヒドイと思いませんかー!」
「はあ……睦月ちゃん、あなたは会計でしょ? だったら会計処理は睦月ちゃんがするのが当たり前なの!」
「だ、だけどお……私、今日はどうしても外せない用事があってえ……」
環奈は辟易した表情を浮かべながらかぶりを振った。
「……その用事って、生徒会の仕事をすっぽかさないといけない程大切な用事なの?」
「そうそう! そうなんですよ! だからどうしてもムリなんです!」
佐山はここぞとばかりに環奈にムリですアピールをする。
「はあ……仕方「ダメだ」」
俺は二人の会話を遮るように割り込んだ。
「……チョット、先輩には聞いてないんですけど?」
「悪いな。環奈は今日はバイトがあって、どうしても外せないんだわ」
「はあ!? 生徒会の仕事があるのに、環奈さんバイトしてるんですか!?」
佐山は信じられないといった表情で環奈を見るが……オイオイ、どの口が言ってるんだ?
「だ、大丈夫! ちゃんと生徒会には迷惑かけないように仕事はするから!」
「えー、さすがに会長も怒るんじゃないですか?」
ダメだ、聞いてらんねえ。
「おい佐山、だったらその生徒会長様に直接聞きに行こうぜ? 少なくとも、一番下っ端でサボリ魔のお前じゃ説得力ねえしな」
「だ、誰がサボリ魔ですか!」
「環奈に仕事を押し付けてるオマエだろ」
「だったらアンタは部外者じゃねーですか!」
おうおう、図星突かれて言葉が崩れてきてんぞ?
「まあいいや、環奈、生徒会長とこに行って話つけるぞ」
「ま、まーくん……」
環奈が不安そうな表情で俺を見つめる。
……心配するなよ、俺が何とかしてやるから、な?
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は今日の夜投稿予定です!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!