第25話
ご覧いただき、ありがとうございます!
今回から文化祭編スタートです!
「ふああ……」
俺はいつもの通学路を今日も環奈と歩いてるんだけど……。
「ダメだ、眠い……」
「まーくん、ひょっとして夜更かしした?」
「おう……ちょっとな……」
金欠のせいでゲーセンでのプロデューサー活動ができないから、ソシャゲでしてたんだけど……何度リセマラしても桜たんがゲットできないから、結局夜中の三時までかかっちまったんだよなあ……。
ん? 桜たんはうちの不動のセンターですが何か?
「はあ……大丈夫なの?」
環奈が呆れながらも心配そうに俺を見つめる。
「おう……とりあえず、昼間に回復するわ」
「ちゃんと授業受けろ」
ごもっとも。
すると。
「ハア、ハア……正宗くん、環奈さん、おはようございます!」
「おはようございます……って、息切らしてどうしたんですか!?」
「ハア、あ、いえ、お二人の姿が見えましたので、つい駆け足で来ちゃいました」
そう言うと、ハルさんがペロッと舌を出した。
ナニコレ。
走った理由も、その仕草も、全てにおいて可愛いんだけど。
「ハイハイ! もう! デレデレしないの!」
「デ、デレデレしてねーし!」
「え、あ、あわわわわ」
環奈が頬を膨らませて怒りながら腕を引っ張り、ハルさんは環奈の言葉にあわあわしてる。
「あ、そうだハルさん。私、今日はバイト休みます」
「そうなんですか?」
「はい、ちょっと生徒会の仕事が……」
うーん、来月はいよいよ文化祭だし、生徒会は運営委員として色々仕事があるからなあ……。
何より。
「まーた佐山の奴、お前に押し付けたんだろ」
「あ、い、いや、何でも家庭の事情があるからって……」
「嘘つけ」
佐山のことだから、どうせソシャゲのレイドイベントでもあるんだろ。
全く……迷惑ばっかり掛けやがって、いつか痛い目に遭わせてやる。
「大体さあ、生徒会長の……ええと、船田だっけ? アイツ、なんでちゃんと佐山を指導しないの? たまに休み時間の時スマホ片手に佐山と話し込んでるの見たことあるけど」
「え、ええと、会長も睦月ちゃんには言っているみたいなんだけど、やっぱり同じように家庭の事情があるからって言われてるみたいで……」
オイオイ、どんだけ家庭の事情があるんだよ?
だったらいっそ、生徒会辞めたほうがよくね?
「そうですか……」
環奈が来ないのが分かると、ハルさんは少しがっかりした表情を浮かべた。
例の一件以降、二人ともかなり仲良くなって今では俺よりも仲が良さそうなんだけど。
おかげでステラでの疎外感がヤバイ。
「で、でも、明日は行けると思いますから!」
「う、うん。だけど、あまり無理しないでくださいね?」
「ハイ!」
「うーん、だけど……」
「?」
「だけど、なに?」
二人が不思議そうに俺の顔を覗き込む。
「や、ほら、今日は大勢の男性客がガッカリするんだろうなあ、って」
そうなのだ。
環奈がバイトを始めてから、環奈目当てで急激に男性客の来店が増えたのだ。
しかも、そのほとんどがうちの学校の男子生徒という……。
その中には、環奈に告白するも撃沈した連中もちらほら……。
「うふふ、環奈さん可愛いですからね」
「えー……私からしたら、正直迷惑でしかないんだけど……」
ハルさんは環奈を見ながら微笑むが、一方の環奈はうんざりした表情を浮かべる。
「ま、とりあえずは俺の仕事が少なくなるから、それはそれで」
「何よ、私がいなくて寂しいとかないの?」
フン、そんな上目遣いであざとさアピールしても、俺には通用しないぞ?
「それよりも、俺の仕事が減ることのほうが重要だ」
「なによ! まーくんのバカ!」
「全く……ただでさえ最近は休み時間も一緒にいるじゃねーか。たまには……って、ハルさん?」
すると、なぜかハルさんが頬を膨らませながらジト目で俺を睨んでいた。なぜ!?
「へー、正宗くんは環奈さんと仲良しさんですねー」
「え、い、いや……ほら、最近は俺も環奈の手伝いをしたりとかしてるんで、どうしても一緒にいる機会が増えるっていうか……」
「べ、別にいいんですけど?」
ハルさんは面白くなさそうに、プイ、と顔を背けた。
チクショウ、ハルさんがあからさまに拗ねてるじゃねーか。どうすんだよ。
「え、ええと……」
「あ、ホラホラまーくん! 十五分前だよ! そろそろ行かないと!」
「え、もうそんな時間!?」
ちょ、ちょっと長話し過ぎたな。
「す、すいません、それじゃ失礼します!」
「ハルさん失礼しまーす!」
「え、ええ、行ってらっしゃい」
複雑な表情をしながら見送るハルさんに後ろ髪を引かれながら、遅刻しまいと俺と環奈は急いで学校へと向かった。
◇
「はい、みなさん投票用紙を投票箱に入れてくださーい」
クラス委員長が号令をかけると、全員が黒板の前の投票箱へと一斉に向かう。
「なあなあ堀口、お前、出し物は何にしたんだよ?」
「俺? そりゃ当然艦隊少女カフェだよ」
「マニアックだな、おい!」
「そういう佐々木は何なんだよ?」
「決まってる。相席カフェだ」
「しまった! その発想はなかった!」
などとふざけたやり取りをしていると。
「デュフフ……堀口氏、佐々木氏、まだまだでござるよ」
「お、なんだよ長岡。これ以上の案があるってのか?」
「もちろんでござる! 拙者はあえて、王道のメイドカフェを提案するでござるよ!」
何だよ、もったいぶったかと思ったら、ただのメイドカフェか。
「別に珍しくもねーし、むしろ古いんじゃないの?」
「デュフフフ、ここからでござる。メイドカフェになったあかつきには、その名を『隷属メイドカフェ』に変え、女子達にあんなことやこんなことを……」
「……それ、大丈夫なのかよ……」
「デュフフ、女子達が気づいた時には既に遅いでござるよ」
ヤベエ……長岡は前々からヤベエ奴だとは思ってたが、今回のは本気でヤベエ。
と、とりあえず俺は、ススス、と二人から距離を取ると。
「……アンタ達、聞いたわよ?」
「「ヒイイ」」
あーあ、やっぱり環奈がロックオンしてやがったか。
俺だって伊達に幼馴染をやってないから、環奈がどう動くかなんてお見通しだ。
そして、佐々木、長岡よ、ご愁傷様……とは思わないけど。
で、投票用紙を回収し終わった委員長が一つずつ読み上げていくんだけど……。
「ええと……十八票で執事喫茶に決まりました」
「「「「「キャアアアア!」」」」」
……出し物が決まった瞬間、女子どもの甲高い歓声が湧きあがった。
って、十八票だったら女子全員の人数とぴったり一緒じゃねーか。
完全に組織票だぞ、コレ。
「んふふー、まーくんの執事姿、楽しみにしてるね♪」
「コノヤロウ……」
してやったりといった表情で嬉しそうに笑う環奈を見ながら、俺は思わずこめかみを押さえた。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は今日の夜投稿予定です!
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