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第20話

ご覧いただき、ありがとうございます!

「何よ、来ちゃ悪いの?」


 客として現れたのは、まさかの環奈だった。


「い、いや、まさかお前が来るとは思わなかったからさ」

「べ、別にいいでしょ! それより、私はケーキを食べに来たの! 早く案内してよ!」


 うーん……環奈の奴、絶対俺のバイトを監視に来たな?

 何だか知らんが、やたらと俺とハルさんが一緒にバイトするのを嫌がってたからなあ。


「へいへい、それじゃ……「ではご案内しますね、お客様」」


 俺が環奈を席へ案内しようとすると、遮るようにハルさんが俺の前に立った。


「わ、私はまーくんにお願いしたの!」

「正宗くんはまだアルバイト初日ですから、この私がご対応いたします」

「イヤ! まーくんでお願いします!」

「いえいえ、ここは私が」


 うわあ、なんだか一触即発の状態なんだけど……


「そ、そうだ、まーくん! まーくんも私の接客したいよね?」

「正宗くん、もちろんここは先輩である私にお任せいただけますよね?」


 うおお……コレ、どっちを選んでも俺に待ってるのは地獄っぽいぞ!?


 ど、どうすんだコレ……!?


「お、俺は……」


 イカン……胃が痛くなってきた。


 その時。


「あらあ! 正宗クンのガールフレンド?」


 後ろからヒョコッと現れた店長が、環奈を見てニヤニヤしていた。


「や、店長、ガールフレンドじゃ……いや、女友達ではあるな。とにかく幼馴染っす」

「えと、坂崎環奈です」

「うん、礼儀正しいじゃない。じゃあ正宗クン、シッカリ相手してあげなさい!」


 そう言うと、店長はバシッと俺の背中を叩いた。


 店長……ナイスアシスト!

 これで俺は二人の究極の選択を逃れることができたっす!


 そして二人を見ると……環奈、すごく良い笑顔をしてるな。少しは気を遣え。

 見ろ、ハルさんは店長がそう宣言したからこれ以上何も言えなくなって、複雑な表情を浮かべてるじゃないか。


 ……後でハルさんのフォローしとかないと。


「ま、まあ、そういうことだから……席へご案内します、お客様」

「うん!」


 そう言って、トレイにお水とおしぼりを乗せると、環奈を誘導する。


「こちらの窓際の席でいかがでしょうか?」

「あ、うん……外の景色も見えて綺麗! ここでいいよ」

「かしこまりました」


 俺は軽く会釈すると、軽く椅子を引いた。


「あ、ありがと」

「いえいえ」


 環奈が席に座り、メニューを開く。


「えーと……じゃあケーキセット、ドリンクはレモンティーで」

「かしこまりました。ケーキはあちらのショーケースからお選びください」

「うん」


 俺はメニューを下げ、戻ろうとすると。


「ね、ねえ、まーくん」

「ん? どうした?」


 な、何だ!? ひょっとして接客態度が悪いとか言っていちゃもんつける気か!?


「あ、あのね……制服……」

「これ? まさか裾がはみ出てたりとかしてた!?」

「う、ううん、違うの。その……に、似合ってるよ!」


 お、なんだ、制服姿を褒めてくれたのか。

 また何か言われるのかと思ってドキドキしたぞ。


「おう、サンキュー!」


 そう言って、今度こそ俺はショーケースの裏へと戻った。


 ◇


「うーん……」


 かれこれ十五分は経過しただろうか……。


 環奈は、ショーケースの前でどのケーキを選ぶか、ずっと悩んでいた。


「モンブランも美味しそうだけど、アッチのティラミスも捨てがたいし……いやいや、シャインマスカットのタルトもなかなか……」


 オイ環奈、その選択は既に十三回目だぞ。

 ダメだ、埒があかないぞコレ。


「オーイ、環奈さんや」

「ん、なに?」

「そろそろ決めてくれんかね」

「えームリ。だって、どれも美味しそうなんだもん」


 だもん、って言われてもなあ。

 さっきから俺、環奈を待っているせいでショーケースの傍から動けないんだよ。


「うーん……よし! 今日はシャインマスカットのタルトにする!」

「やっと決まったか……」


 俺はホッとして肩を少し落とすと、ショーケースからタルトを取り出した。


「では、ドリンクと一緒にお持ちします」

「うん」


 俺はティープレスとカップに一旦お湯を注ぎ、温まったらお湯を捨てる。

 次に紅茶の葉をティープレスに入れ、またお湯を注いて蓋をした。


 そして俺は、トレイにティープレスとレモンスライスを入れたカップ、タルトを乗せ、環奈の席まで運んだ。


「お待たせしました。ケーキセットです」

「うわあああ……」


俺はテーブルの上に次々と乗せる。


「ええと、ティープレスは今蒸らしてますので、しばらくしてから蓋を開けてお飲みください」

「はーい。でもまーくん、紅茶の淹れ方なんてよく知ってるね」

「おう。と言っても」


 そう言うと、俺は環奈に近づき、耳元でそっとささやく。


「(実は、俺が紅茶を淹れるの、環奈が初めての客なんだよ)」

「あ、あう……そ、そうなんだ……」


 アレ? 環奈の奴、なんで真っ赤な顔で耳を押さえるんだ?


「ということで、味に関しては文句言うなよ」

「う、うん……その、ありがと」

「ではごゆっくり」

「うん」


 で、俺はショーケースのところまで戻ってきたんだけど……。


「えーと……ハル、さん?」

「…………………………」


 なぜかハルさんは、頬を膨らませて不機嫌そうな顔をしていた。

お読みいただき、ありがとうございました!


とりあえずストックが続く限り、2話投稿を続行します!

次話は明日の朝投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・正宗の「環奈が初めて」攻撃!環奈はめろめろのダメージをうけた! [一言] 正宗めえ…。 ハルさんというものがありながら(笑)
[一言] 天然の女たらしか…
[良い点] こんにちは、こよみさん共々いつも楽しく拝見しております。 耳元で囁かれて耳が幸せ^~な環奈ちゃんかわゆすなぁ。 YSS(私が先に好きだったのに)とか言うつもりは無いですけど、 一度素直に…
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