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第19話

ご覧いただき、ありがとうございます!

 急いで店の制服に着替えたのはいいけど……さて、どうするか。


 とりあえず、ハルさんの顔の赤みは引いたようで、ホールで無難に接客を行っている。


 だが。


「い、行きづらい……」


 あああああ! 俺はどんな顔してハルさんに話しかけりゃいいんだよ!


 気まずいよ! 超気まずいよ!


 だ、だけど、物陰から様子を窺ってるだけじゃ、ただの怪しいヤツになっちまうぞ……!


 ええい! ままよ!


 俺は意を決し、ホールへと飛び出した!


 すると。


「チョット」

「グエッ!?」


 後ろから店長に襟首をつかまれたせいで首が絞まる。


「ネエネエ、ハルちゃんが更衣室から戻ってきてから少しぎこちないんだけど、正宗クン何かした?」

「ドキ」


 くそう、この店長意外と鋭いぞ!?


「……で、一体何をしたの?」


 て、店長、顔が近いっす……。


「え、ええと……実は更衣室で制服に着替えようと……」

「ああ……ラッキースケベ、ね?」


 とんでもなく察しがいいな!?


「それじゃあしょうがないわね。ハルちゃんもチョットおっちょこちょいなところがあったりするから、多分だけどハルちゃん、更衣室の鍵を掛け忘れてたんじゃない?」


 や、だからなんでそんなに鋭いの!?


「そ、そうです……」

「ウーン、ハルちゃんには私からも言っておくけど、正宗クンもこれからはノックするようにね?」

「は、はい」


 その前に、できれば更衣室を男女別に……はしなくていいな。うん。

 あの更衣室には俺を最高の気分にさせる、特別なアロマ(?)の香りがあるからな。


「じゃあハルちゃんのところに行って、今日の指示を仰いできなさい」

「はい」


 俺は店長に返事をすると、接客を終えショーケースへと戻ってきたハルさんに声をかける。


「ハルさん、それじゃ俺は何をしましょうか」

「え? え? ええと?」

「その、今日の俺の仕事っす」

「あ、ああああ、そそ、そうですね。で、では、イートインのテーブルの上を片づけてきてくれますか?」

「はい」


 俺はハルさんの指示を受けると、ペーパーとアルコール消毒液を手に持ち、イートインスペースへと向かう。


 しかしハルさん……さっきのことでめちゃくちゃ意識してる……。


 や、そりゃ俺も意識してないかといえば、強制的に賢者モードになってるだけではあるんだけども。

 そりゃもう何かの拍子で、突然あの時の光景を思い出し……ハルさん、綺麗だったなあ……って、言ったそばからダメだろ!?


 俺はとにかく仕事に集中するため、頭を左右に大きく振った。


「よし! 早くテーブルを片づけないと!」


 意識を切り替えた俺は、テキパキとテーブルを片づけ、作業をこなす。


 だけど、ハルさん目当ての女性客が次から次へと来店しては、すぐにテーブルが埋まる。

 そしてまたお客が帰った後のテーブルを片づけ、来店して、片づけ……。


 そんな状況が、夕方六時前くらいまで続いた。


「ハアハア……す、すさまじい……」

「ま、正宗くん、大丈夫ですか?」


 ハルさんが心配そうに俺を見つめる。


 うん、どうやらハルさんも仕事をこなしているうちに更衣室のことが頭から離れたようだ……って、俺が思い出してどうするよ。


「あ、そ、その、大丈夫っす」

「正宗くんは今日が初日なんですから、あまり無理をしなくても……」

「や、本当に大丈夫です! ほ、ほら、このとおり!」


 俺はわざとおどけてハルさんにアピールする。


 というか、思い出しちゃった煩悩を振り払うためにも、仕事に没頭させてください……。


 すると。


「正宗くん」


 ハルさんは突然、俺の顔を両手で挟むと、真剣な表情で俺を見つめた。


「正宗くん、あなたはまだ初めてこのお店で仕事してるから、気づいてないかもしれないけど絶対無理してるはずなの。だから、せめてこの私を頼ってください。少なくとも、私はあなたより長く働いていますし、年上なんです。だから……」


 ハルさんは一拍置き、そして。


「……だから、どうかこの私を頼ってください。幼馴染さんと違ってまだ付き合いも浅く、不安かもしれませんが、私は全力であなたを支えますから」


 そう話すハルさんの瞳は、すごく力強くて、そして、綺麗だった。


 いつの間にか俺はその瞳に吸い込まれ、目が離せなくなっていた。


「はい……ありがとうございます」


 そんな俺の口からは、自然と滑るように感謝の言葉が出てきた。


「はい。よろしい」


 そして、ハルさんはにこり、と微笑んだ。


 ハルさん……その笑顔、反則ですよ。


「さて、それじゃ引き続き仕事、頑張りましょうか」

「はい! 任せて……」

「正宗くん?」

「ほ、程々にがんばります」

「はい、お願いします」


 はあ、どうやら俺はこれからも、ハルさんに勝てそうにないみたいだ。


 そして仕事に戻った俺は、客が落ち着いている隙にホールの清掃をしようとすると。


 ——カラン。


「いらっしゃ……って、ええ!?」


 ん? ハルさんが何だか驚いてるぞ?


「ええと……ハルさん、どうした……って、環奈!?」

「何よ、来ちゃ悪いの?」


 客として現れたのは、まさかの環奈だった。

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は今日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] はるさんてぇてぇがめがみだぁー、環ちゃんが少しかわいそうかなあ?サンボンさん、いつも楽しみにしています、無理しないで頑張ってくださいね(^o^)b
[良い点] ・幼馴染み生命体、環奈、襲来!(笑) ・ハルさん、やさしいなあ。ええなあ。ステラでバイトしたいなあ。 [一言] 環奈、どう反撃するのか?
[一言] 素晴らしいモノを見せられて、そんなコトされちゃホレちゃいますがな… おっ、環奈ちゃん、やっぱ来たね!
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