第13話 坂崎環奈①
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■坂崎環奈視点
私は堀口正宗くん……まーくんが好き。
私とまーくんは幼稚園の頃からの幼馴染。
彼は、年長組の時に幼稚園にやってきた。
それから幼馴染としてずっと仲良しだけど、まーくんを一人の素敵な男の子として意識し始めたのは小学五年の時。
それまでの私は男勝りな性格をしていて、髪の毛も短かったし服装も半袖半ズボンと、男の子みたいな恰好をしていた。
だから一緒に遊ぶ友達も、女の子よりも男の子と遊ぶことのほうが多かった。
そんなある日、学校が終わったらお出かけするからと、その日に限って私はいつもの半袖半ズボンじゃなく、フリルのついた水色のワンピースを着て学校に行った。
遊ぶ時に汚れたりしちゃうから、普段はあまり着ないようにしてたんだけど、やっぱり私も女の子だから、こんな可愛らしい服を着るのが本当は大好き。
いつもと違う私を見たら、みんな驚くかな? 『可愛い服だね』って言ってくれるかな?
そんなことを考えながら、登校したのを覚えてる。
教室に入ると、みんなは一斉に私を見て、その姿に驚いた。
だけど、返ってきた反応は私が予想していたのとは全然違った。
「何だよオマエ! 女みたいな格好してるな!」
いつも遊んでいた男の子のクラスメイト達が、私を指差して笑ったのだ。
女の子達も、怪訝そうな顔をしてヒソヒソと話をしている。
私は恥ずかしくなって、惨めで、つらくて、思わず泣き出しそうになった。
その時。
「オマエ等何言ってんの? 環奈は女の子なんだから、女の子の恰好して当然じゃん」
その声に振り返ると、まーくんが私と指差した男の子達を見ながら心底不思議そうに首を捻っていた。
「はあ!? だけど、あの坂崎がだぜ?」
「どの坂崎だよ。俺の知ってる坂崎環奈は、ずっと女の子だよ」
嬉しかった。
私を女の子だって言ってくれた、まーくんのその言葉が嬉しかった。
「それより環奈! その服、超似合ってるぞ!」
そう言って、満面の笑みで親指を突き立てたまーくんの顔を今でも忘れない。
それからの私は、半袖半ズボンをやめ、いつもスカートをはくようになった。
オシャレにも気を遣い、できる限り可愛く見えるようにした。
その甲斐もあって、中学の時は色々な男の子から告白されたりなんかもした。
その中には、私のことを指差して笑った男の子もいた。
だけど、私はそれを全て断った。
だって、私が女の子らしくオシャレして可愛くなったのは、私のことを認めてくれた、まーくんのためだから。
あの時から一人の男の子として大好きになった、まーくんに振り向いてもらいたいから。
高校に入ってから今も、この想いはずっと変わらない。
だから、これからも私は自分を磨き続ける。
まーくんに振り向いてもらうために。
まーくんに『好き』って言ってもらえるように。
◇
「えへへ……」
私はイチゴショート二つをテーブルに並べ、さっきからずっとニヤニヤしていた。
だって、まーくんが私のことを気遣って、わざわざステラで買ってきてくれたんだもん。
「ほらほら環奈、いつまでも眺めてないで、早く食べたら?」
「えー、だってもったいないし」
「そんなこと言ってたら、いつまで経っても片づかないし、それに正宗くんにもケーキの感想言えないわよ?」
うっ……痛いところを突かれちゃった……。
「し、仕方ない……一個だけ食べるかあ……」
私はもっと眺めていたい気持ちを押さえ、フォークでイチゴショートを切り分け、口へと運ぶ。
「はむ……ん……うん! やっぱりステラは……ううん、まーくんが買ってきてくれたイチゴショートは美味しい!」
あ、そうだ! ケーキの感想、まーくんに送らないと!
私はスマホを取り出し、メッセージを打ち込む。
『イチゴショートすっごく美味しかった! まーくんありがとう! 大好き!』
あ……『大好き』はやり過ぎかなあ……。
で、でもでも! これくらいアピールしとかないとまーくん鈍感だし……。
私は送信ボタンの数ミリ上で、押そうかどうしようかと、親指をくるくるさせる。
「え、ええい!」
私は意を決し、送信ボタンをタップした。
……ただし、『大好き』の部分は削除して。
「…………………………私のヘタレ」
そう呟き、私はテーブルに突っ伏した。
「はあ……」
積極的にならないといけないのは分かってるし、今日だって自分でお弁当作って、まーくんに食べてもらったりもしたんだけど……。
それに。
「あのイケメン大学生が、実は綺麗なお姉さんでしただなんて、反則だよお……」
鈍感なまーくんの嫉妬心をくすぐるために、毎朝わざとイケメン大学生(だと思ってた人)に興味があるフリをして煽ってたのにい……。
まさかそんな二人が親密になっちゃうだなんて……。
しかも、昨日今日の朝の大学生の顔と態度……アレ、絶対まーくんのこと意識してるじゃない!
その時。
——ピリリ。
「あ……まーくんから……」
私はスマホを取り、メッセージを確認する。
『ならよかった。ケーキ、また届けてやるよ』
「やったー!」
私は思わずガッツポーズした。
「えへへ、嬉しいなあ……」
ダメだ、嬉しくてどうしても頬が緩んじゃう。
「よっし! 明日もまーくんに積極的にアタックするぞ! ……その前に、あの人を何とかしなきゃ」
うん、まーくんだけは絶対に譲れない。
止まったままのまーくんの時間を、動かすのは私なんだから。
だから。
「私、絶対負けないんだから!」
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明日はハルさん視点の話を投稿します!
ちょっと長くなってしまったので、3分割にして、朝、昼、夜にそれぞれ投稿します!
ということで、次話は明日の朝投稿予定です!
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