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第105話

ご覧いただき、ありがとうございます!

「まーくん! 一緒に帰ろ!」


 生徒会長選挙を明日に控えた放課後、カバンを持った環奈が笑顔で駆け寄ってきた。


 まあ、選挙活動自体は昨日で終わりの決まりだし、後は明日の投票の直前にある立候補者の最後の演説だけなので、今日はなにもすることができない。

 それにステラのバイトも、昨日店長とハルさんから『明日は二人ともお休みよ!』と、釘を刺されてしまった。


 ということで、今日の放課後は珍しく暇なのだ。


「はは……んじゃ、せっかくだし今日は寄り道でもしてから帰るか? 明日に向けて英気を養う意味で」

「うん!」


 俺はカバンを持つと、笑顔で頷く環奈と一緒に教室を出る。


「えへへー、何の予定もなくこんなに早く帰ったりするのって、本当に久しぶり!」

「あー、そういやそうだなあ……」


 俺もステラでバイトするようになってから、放課後にこうやって寄り道しようとしたりすることなんてほぼなかったし、環奈に至っては生徒会もあるから余計だもんなあ。


 ……よくよく考えたら、環奈って休みなしじゃん……。


「よし! じゃあ今日は、環奈の行きたいところどこでも付き合うぞ! もちろん、俺の(おご)りで!」


 そう言うと、俺はドン、と胸を叩く。

 俺もバイトばっかりであんまり金を使う機会もなかったし、バイト代が結構貯まってるのだ。


「えー、そんなこと言っていいの? もうすぐクリスマスだってあるのに?」

「うぐう!?」


 ニヤニヤしながら、環奈が俺の顔を(のぞ)き見るけど……そ、そうだった! すっかり忘れてたぞ……。

 特に今年に限っては、ハルさん、環奈、姉ちゃんと、三人分も用意しないといけないのに……。


 それに……もう一つ(・・・・)、用意しないと。


「もー、まーくんはしょうがないなあ……」

「…………………………」


 腰に手を当てながら呆れた表情を見せる環奈に対し、俺は押し黙るしかない。

 い、いや、もちろん奢るくらいの金はあるよ? だけど、プレゼント四つともなると、あっという間にこれまでの貯金が吹っ飛ぶことは必至なわけで……。


「うん! だったら、今日はあそこ(・・・)に付き合ってもらおう!」

「? あそこ(・・・)って?」


 俺は環奈におずおずと尋ねる。


「えへへ、行けば分かるよ」

「そ、そう……」


 俺は首を傾げつつも、はにかむ環奈とあそこ(・・・)へと向かった。


 ◇


「あー、ここかー……」


 環奈に連れられ、やって来た場所は近所の公園だった。

 だけどこの公園は、俺と環奈、それと姉ちゃんにとっては思い出の場所だ。


「はは……小学生の頃は学校が終わると、いつもここに集まって遊んでたなあ……」

「えへへ……あの頃の私はは恰好も遊びの内容も、ほとんど男の子みたいだったからねー……」

「そうだったそうだった! んで、五年生の時に環奈がスカート履いてきてさあ! あん時はメッチャ驚いたっつーの!」


 あの時のことは今でも鮮明に覚えてる。

 いや、まさかあの環奈が女の子の恰好をしてきたんだよなあ……しかも、何より驚いたのは、その姿が似合い過ぎててさあ……。


「うん……あの時、まーくんだけが褒めてくれたんだよね……」

「いや、褒めたっていうより、勝手に口から出てきた。だって、マジで可愛かったからなあ」

「ふああああ!?」


 そう言うと、環奈は顔を真っ赤にして変な声を出した。

 あ、あははー……まあ、事実だからしょうがないよな。


「も、もう! まーくんのバカ!」

「うおっ!?」


 そして、俺は環奈にポカポカと叩かれてしまった。理不尽だ。


「そ、それよりも! あのブランコに乗ろうよ!」

「あ、お、おい!?」


 照れ隠しなのか分からないけど、環奈がブランコのところに駆けて行った。

 はあ……全く……。


 俺は頭を掻いて苦笑すると、後を追い掛けてブランコに座った。


「あはははは! 気持ちいい!」


 環奈は思い切りブランコを漕ぎ、高く上がる。

 というか、気をつけないとパンツ見えるぞ。


 すると。


「ねえ! まーくん!」

「私……嬉しかったんだ!」

「へ?」


 環奈の言葉の意味が分からず、俺は思わずキョトン、としてしまう。


「さっきの話! 私は嬉しかった! まーくんが私のスカートを褒めてくれて! 女の子だって言ってくれて! 私のこと、ちゃんと見てくれていて!」


 そんな俺の様子を見た環奈が、さっき以上にブランコを漕ぎながら叫んだ。

 満面の笑みを浮かべながら。


「だから……明日、見ていてほしいの! 私、頑張るから! 生徒会長になるから! だから!」


 はは……何言ってんだよ環奈の奴。

 そんなの、決まってるのに。


 だから。


「ああ! 見てるとも! 環奈が生徒会長になる瞬間を! 今までずっと頑張ってきて、ひたむきで、努力家で、なのにみんなに優しくて、放っとけなくて……そして、最高の幼馴染の姿を!」


 俺も負けじと、恥ずかしげもなく叫ぶ。

 環奈への、想いを。


「えへへー! これで私、絶対に負けないね! 私は生徒会長になる! だって……まーくんが見守ってくれるから!」


 そう言うと、環奈は咲き誇るひまわりのような、最高の笑顔を見せた。

お読みいただき、ありがとうございました!


これで環奈と正宗は英気を養い、次回、いよいよ生徒会長選挙当日!

環奈と杉山の演説による直接対決です!お楽しみに!


次回の更新は、10/17の日曜日です!

でも多分、それより早く一話挟むかもです!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] まずは演説合戦ですか。 敵役が強くないと、主人公もはえないからなあ。 その意味で、とても日本の政治は残念です/w
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