表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/108

第10話

ご覧いただき、ありがとうございます!

「き、着替えてきました」


 俺は制服に着替えると、すぐに店内に戻ってハルさんに声をかけた。


 すると。


「あ……」


 ハルさんが口元を押さえ、息を飲んだ。


 アレ? 俺、何か変だったりするのかな……。


 俺は思わず自分の身だしなみをチェックする。


 た、多分大丈夫……だよ、な?


「え、ええと、ハルさん……」

「え、あ、す、すいません……そ、それでは簡単にお教えしますね」


 そう言うと、ハルさんはあたふたしながら、俺をショーケースの奥へと誘導した。


 ハルさん、少し顔が赤いみたいだけど、大丈夫かな……。


「そ、それで正宗くんの仕事ですが……」


 そして俺は、ハルさんから仕事内容をレクチャーしてもらう。


 具体的には、お客対応が主で、注文を受けたケーキの包装とレジ、イートインスペースの清掃などなど、といったところだった……って、結構あるぞ!?


 といっても、頑張るしかないか……。


「……ということです。その、大丈夫ですか?」


 ハルさんが少し心配そうに尋ねる。


 ここは、ハルさんに安心してもらわないと。

 それに少しくらい、いい恰好したいし。


「大丈夫です! 任せてください!」

「そ、そうですか……で、ではお願いします。分からないことがあったら、いつでも聞いてくださいね?」

「はいっす!」


 で、俺はウェイターに勤しんでるんだけど……ハルさん、スゴくない?


 や、だって。


「お待たせしました。ミルクティーとリンゴのタルトです」

「はい、ミルフィーユと和栗のモンブラン、サバランですね」

「お客様、お誕生日でしたらロウソクをお付けしますね」


 ものすごくテキパキと仕事をこなし、みるみるお客を捌いていく。


「正宗くん、向こうのテーブルを拭いて、その後、あちらのお客様のお水を追加してください」

「ハイッ!」


 お、俺も頑張らないと……。


 ◇


「はあ……や、やっとお客が少なくなった……」

「ふふ、お疲れ様です」


 夜になってお客もイートインにいる一組だけになり、一息ついたところでハルさんがそっとお水を差し出してくれた。


「あ、ありがとうございます! ゴク、ゴク……んまっ!」


 俺はお礼を言って水を受け取ると、一気に飲み干した。


 すると、そんな俺の反応が面白かったのか、クスクスと笑う。


「ふふ、もう一杯飲みますか?」

「あ、もう大丈夫です。ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそありがとうございます」

「?」


 アレ? なんでお礼を言われたの?


「いえ、いつもはお客様対応は私一人でしていますから。今日みたいにお客様が多い時に正宗くんがいてくれて助かりました」

「あ、い、いえ……」


 そう言って微笑みながら軽くお辞儀をするハルさんが可愛くて、俺は照れてしまい、つい下を向いてしまった。


「あらあ、二人ともお疲れ様。今日はもう上がってもいいわよ」


 厨房から現れた店長が、俺とハルさんの肩をポン、と叩いた。


「ところで正宗クン。アナタ、うちでバイトする気ない?」

「バイト、ですか?」

「そ。元々いたコが辞めちゃって、代わりにハルちゃん雇ったんだけど、そしたらお客さんがすごく増えたじゃない? だから、ハルちゃんの負担が大きいのよねえ……」


 ああ、そういうことか。


 確かに夕方のあの状況、一人で対応するのはいくらハルさんでもキツイよなあ……。


「それで、アナタの働きぶりも眺めてたけど、ちゃんとそつなくこなしてくれてたし、ハルちゃんとの相性もいいみたいだし?」

「て、店長!」


 店長の思いがけない言葉に、ハルさんがわたわたする。


「もちろん無理にとは言わないけ……「やります」……そうね、ゆっくり考えて……って、やってくれるの!?」

「はい」


 や、だってお小遣いもピンチでちょうどバイトしようかなんて考えてたトコだし、ハルさんの手助けにもなるし。


 ……というより、ハルさんと一緒にバイト、したいし。


「ま、正宗くん……」

「ということで、これからよろしくお願いします、ハルさん」


 すると、ハルさんはパアア、と満面の笑みを浮かべ、俺の手を握った。


「は、はい! どうぞよろしくお願いします!」

「あらあら、それじゃ話もまとまったところで、正宗クンのシフトだけど、基本的にハルちゃんと同じでいいかしら?」

「はい、大丈夫です」


 むしろ、ぜひそうしてください!


「アト、時給は……」


 その後、バイトについて詳細に取り決めをして、早速明日からバイトに入ることになった。


 店長は、来週からで構わないと言ってくれたんだけど、俺としてはハルさんと一緒にいたいこともあり、明日からを希望したのだ。


「じゃ、そういうことで……」

「あ、店長」

「アラ? 何かしら?」

「その……イチゴショートを二つ買いたいんですけど……」


 そう言って、俺はショーケースの中にあるイチゴショートを指差した。


「あらあ! そういえば正宗クンは元々お客さんだったわね! もちろんいいわよ! それに二つくらい、採用祝いにアゲルわ!」


 そう言うと、店長はテキパキとイチゴショート二つと保冷剤を箱に入れてくれた


「ハイ!」

「あ、ありがとうございます!」


 よし、とりあえず帰りに環奈の家に届けるか。


「じゃあアナタ達は着替えて帰りなさい」

「はい、お疲れさまでした」

「お、お疲れさまでした」


 店長に挨拶すると、俺達は更衣室に入……っちゃダメだろ!


「あ、お、俺、外でハルさんが着替え終わるの待ってます!」

「え、あ、そ、そうですね……!」


 うん、ハルさんも同じ更衣室を利用してたのを忘れていたみたいだ。


 ハルさんは慌てて更衣室に入ると、中からカチリ、と鍵を掛けた。


 や、覗いたりしませんから……………………ホントダヨ?

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は今日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 制服姿に惚れ直す、王道ですがそれが良い。 どちらにとってもバイトは楽しい時間だろうなあ。ウラヤマ… [気になる点] 積極的なハルさん、いつかシチュエーショは違えどカギを、わざと掛けな…
[一言] 一緒にバイトしちゃいますか~ 仲良くなっちゃいますねw 環奈ちゃんはどうでるのかな?楽しみだな~ あっ、ケーキ残ってて良かった。昨日から気になって気になって…w
[良い点] 癖で鍵をかけたりする事はありますからね。 ドンマイ(笑) 高校生をただ働きさせる個人事業主も大概ですが、その辺は置いときますか。 状況は刻一刻と環奈ちゃんが不利になってますからね。 子供み…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ