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物語の作りかた

作者: Takahiro

ど素人に最低限の要求をするというスタンスなので、大して高いレベルのものはありません。あとキレ気味な理由はお察し下さい。

[運営について]

 まず始めに、本文は主に文化祭等でオリジナル作品を手がけたい人向けに書くので、その場合のクラス(他の集団も考えられるがここでがクラスとする)の御し方について語ろう。


 なお、そういう目的でない人は、この章段を全て飛ばして欲しい。


 まず前提がある。


 ストーリーを勉強していない人間が書いたプロット(ストーリーの展開を書いたもの)はゴミに等しい、ということだ。いや、まだリサイクルが可能なゴミの方がマシだ。有害物質、とでも呼ぼうか。救済の余地もない。


 例えばあなたが四分音符すら理解出来ない程に音楽に無知であるとする。そして、その状態で作曲を依頼されたとする。果たしてあなたはそれを承諾するだろうか。


 まあ間違いなく断るだろう。自分には無理であると。作曲に関する場合は、誰もがこのような妥当な判断をする。


 しかしストーリーについてとなると、何故か誰もこのような判断を下さなくなるのである。自分には無理であると認識できないのだ。


 そういう思い上がった人間が作るのは、無知な人間が譜面に丸を描いただけのような、救いようのない醜悪なプロットなのである。


 とまあ長々と語ったが、つまるところ私が言いたいのは、ストーリーを勉強していない奴はストーリー制作に関わらせるなということである。


 これは普遍的な話であるが、「みんなで協力すれば良い作品が出来る」というのは馬鹿げた愚かな空想、幻想、まやかしである。そんなことは断じてない。一切の妥協は許さず、知識と技能を持った人間のみによって独裁的に、或いは集団指導的に制作を進めるべきである。


 これは決して誇張などではない。紛れもない真実である。


 いくらやる気のある人間でも、それが無能である限り、ストーリー制作に参加させてはならない。


 最大の敵は無能な味方。それは病苦を招くだけである。


 またせっかくの作品を見に来た大勢の観客を落胆させるよりは、その人間一人を悲しませた方が遥かにマシであり、また、そうすべきである。


 あくまで目標は観客を楽しませることである。クラス内の事情など、どうでもいい。無能は切り捨て、ストーリーを解する優秀な人間のみによって全てを運営すべきなのである。


 そしてあなたが「優秀な人間」となる為に、以下の事項を学んで欲しいのだ。


[物語の書き方]

 《基本方針》

 物語を書くといっても、どこから進めればいいのか、ビジョンが明確でない人も多かろう。そこで、第二段となる本段では、後に記述する幾らかの手順の「目次」を提示しようと思う。


 まず、簡単に言い表すと、物語を作る手順は以下のようになる。


「着想」→「大枠の完成」→「細かな肉付け」→「制作」→「校正」


 以上のようになる。私が得意とするのは「細かな肉付け」までで、それ以降は他を当たって欲しい。以下、これらについて詳説していこうと思う。


 もっとも、作品の面白さというのは、この段階でほぼ確定されるも同然ではあるが。



《着想》

 まずは着想。この時点で客の関心が惹けるかどうかは決まると思っていい。あなたが作る物語を一言で表すのだ。


 例えば「超能力を手に入れた少年が超大国に復讐を仕掛ける話」とか「魔法少女とか言っておきながらめちゃくちゃ暗い話」などは、その一言だけで観てみたい、読んでみたいと思えるものである。(筆者さんの趣味もろバレ)


 一方「高校生の友情の話」とか「勇者が魔王討伐に行く話」などは、見るからにありきたりで、とても見る気など起こらない。


 まずは、あなたの想像力を駆使し、魅力的な物語を考えるのだ。正直言って、ここに関しては、あまり何かが必要となる訳ではない。


 強いて言えば、某高校が掲げる「問題提起」は、まず面白そうな着想を得た後に考えるべきであろうということくらいだ。



《大枠の完成~序破急~》

 しかし、それだけでは面白い話など出来ない。何も知らずに物語を作ってしまっては、せっかくの名案も水泡となって消えてしまう。それは余りにも悲しいことだ。


 以下、物語の骨格の作りかたについて記述する。


 まず、物語を書く上で基本も基本となる三幕構成、若しくは日本語で言うところの序破急構成について語ろう。


 これは物語の世界における大前提である。これが作れないならば、それは世俗社会における文盲にも等しい。


 序破急とは一文字一文字が場面を表しており、物語は「序」「破」「急」の3つに分けられる。


「序」の役割は、設定や登場人物、その目的や思想を説明することである。また、ここで主人公の目的が明示される。(もっとも、あえて主人公の目的を隠す作品もある)


「破」の役割は、主人公が目的を達する過程、その障害との闘いを描くことである。この「破」こそが、物語全体で最も大きな比重を占める。またその最後に主人公は最大の危機に陥り、「急」に突入する。


「急」の役割は、「破」で主人公がぶつかった問題に対し、解決を提示することにある。最終決戦という奴はここに位置し、また大団円という奴、主人公の死というやつもここに位置する。


 物語はこれら三段階に分けられ書かれなければならない。そしてそれら一つ一つに明確で簡潔な役割を付与するのだ。あなたは、自らの物語を三行の簡単な文で説明出来なければならない。


 また、これらの幕の間には、物語を大きく曲げる出来事を配置せねばならない。ここでは一言で片付けてしまうが、常に意識されたし。


 しかし、それだけではまだ不十分だ。そこで、以下に挙げる幾つかの原則を守ることを強く推奨する。

挿絵(By みてみん)

(↑16分クオリティ)

・一:主人公

 主人公とは何であるのか。明確に定義付けられる人は少ないのではなかろうか。


 私の定義では、主人公とは、ストーリーにおける唯一無二(まあ二人以上の場合もあるが)の主体である。


 即ち、ストーリーで展開され、かつ物語の展開に大幅に関わるイベントは全て、主人公とその周辺とのやりとりによって展開されなければならないということだ。


 そう考え、そのようにプロットを書けば、「誰が主人公なのかわからない」ということはまず起こらないだろう。


・二:起伏

 古今東西、名作というものは、常に物語に激しい起伏をつけるものだ。


 物語の途上、特に困難を解決する「破」の過程において、主人公は著しい危機に晒される。それは、「序」の平穏、「急」の最後(結末)の落ち着きと対比されるものである。(もっとも、最後の最後に衝撃を持ち込むのも悪くない)


「序」と「破」の間で物語は一気に進行し、「破」の間で物語はどんどん悪化していく。そして「急」で物語はハッピーエンドかバッドエンドかに急転する。


・三:敵対者

 ではどうやって物語に起伏をつけるか。そもそも何を以てかストーリーの山と谷を定義するのか。答えは単純、「敵」を作れば良い。この「敵」は、如何なる形態を取っても良い、かなり漠然とした概念だ。


「敵」は主人公を妨害し、それとの戦いこそが、物語の骨子となる。その「敵」に対する「戦況」によって、物語の起伏は定義される。


 それは個人でもいいし、組織でもいいし、何なら特定の価値観(人種差別など)や世界の仕組み(資本主義など)などでも構わない。また、ミステリーにおける犯人のように、その正体が判明しないくても良い。


 また、例えば二人の友人の関係のような、それ自身が主体的に行動するものでなくとも、広義には「敵」と見なせる。


 肝要なのは、物語を貫く一本の軸を作ることなのである。


 それらとの戦いにおいて、やっと、危機や相対的な平穏といった概念が現れ得る。


・四:キャラ設定

 当然ながら、いかなるストーリーにおいても、複数人のキャラクターが存在する。ではキャラクターはどう設定すれば良いのか。初心者はよく、性格と役割だけを設定して満足しがちである(まあ役割を設定するだけまだマシだが)。


 結論から言うと、それでは不十分である。


 最も大切なことは、キャラクターに「過去」を持たせることである。


 そもそも人間の性格の大半は過去によって形成される訳であって、過去がないキャラクターというのは、即ち「無」である。RPGなどで何の役割も与えられていない村人のようなものだ。


 逆に、少し過去を設定するだけでも、そのキャラクターは一気に深みを持つ。特に主人公クラスの主要人物には、それに見合うだけの過去を授けるべきである。


 そしてその過去を基準として主人公の行動原理を確定していくべきである。

挿絵(By みてみん)

 ↑(主人公を中心とする展開のイメージ図)


・五:場面展開

 物語は大幅にその舞台を変えていかなければならない。例えば、もし二人の人間がただ座して語らう話を作ったとして、それに序破急を設けることは可能ではあるが、それはどう考えても娯楽作品としては論外の作品に違いない。


 もちろん、哲学書などなら全然許容される、というか望ましい形態ではあるが、そんなものを作りたくはあるまい。



 これらの原則を守り、起伏に富んだ、読み手に飽きられない作品を作って欲しい。漠然とした構想ではなく、明確に分節化された幕の連続体を頭の中に思い浮かべられたし。



《細かな肉付け》

 大まかな流れを考えついたら、後はそれを具体的に構築していく。主人公が何をして、何を考えるのか。完全な流れを考えるのだ。ここまで来れば後はあなたの物語を作品に仕立てるだけとなる。


 まあお察しの通り、ここにも守るべき原則がある。ただしこちらの三原則は「強く推奨」ではなく「義務」である。


・第一原則:無矛盾の原則

 ある物語中に出てくる設定は、一切互いにに矛盾してはならない。ある物語中では、その根本的な設定に対して超常的な現象を起こしてはならない。その物語中で可能なこと、不可能なことは厳守されねばならない。


 要は子細に至るまでちゃんと考えろということだ。


・第二原則:不可分の原則

 ある物語中な全ての構成要素(設定、出来事、登場人物など)は原則として、ストーリーの進行に必要不可欠かつ不可分であるもののみでなければならない。全ての構成要素は、ただ一点の結論に対し収束せねばならない。


 但し例外として、ストーリー展開に僅かしか関わらないものであらば、それが不必要であっても、世界観を深める為に投入するのはありである。


 要は要らないものは入れるなということだ。


・第三原則:理路の原則

 全ての出来事は、主人公を中心に、有機的かつ論理的に結ばれ進まなければならない。つまり、例えるならば「天啓によって全てが解決した」とかいうものは、よほど映像美を追求する作品でない限り、悪手である。


 要は話の飛躍はするなということだ。


 これを見て、恐らく多くの人が当然のことだろうと思っただろう。その通り。すこし考えれば判る真理だ。だが、初心者はこういう基本的なことも出来ていない場合が多い。慣れていないのだから仕方はないのだが、だからこそ、冷静に、徹底的に、あなたの作品を見直すべきである。


 そして、上の三原則を忠実に守れば、あなたの物語に違和感を持たれることはない。面白いか否かは「大枠」の時点で決定されているようなものであるから、この段階での仕事は、違和感をなくすという一点に尽きる。


《その他》

・世界観について

 世界観というのは、物語の展開とならんで、作品の魅力である。一般に、良い世界観というのは、「一回見るだけで話の内容は理解出来るが、見れば見るほど新たな発見があるもの」であろう。


 どうすれば良いかと言うと、それは案外簡単で、主人公を枢軸とする展開に複雑な世界観を絡ませなければ良いのである。主人公やそれに降りかかる試練については、単純な設定の下に展開されるのが望ましい。


 そして、直接に主人公には関わらない部分において、限界まで複雑な世界観を構築すれば良いのである。そうすれば、見るのは一回限りの人も、考察が好きな人も、同時に楽しめる作品が出来上がるだろう。


・速度について

 何が言いたいかと言うと、大事な部分は長く描き、そうでない部分は簡潔に描けということである。


 例えば主人公が重大な転機を迎える場面では、作中で実際に経過しているのと同じくらいの時間をかけて描く、もしくは事細かな描写で描くべきである。


 他方、殆ど事務作業のような、わざわざ描く必要のない場面ならば、例え作中の経過時間が10年であっても1分で描くべきであるし、無機質なアナウンスのような文章で説明してしまってすらよい。


 このように、一つの場面を描く丁寧さを変えることで、伝えたい、重点を置いているシーンが明瞭になり、テンポの良い作品が出来上がるだろう。



《制作》

 ここまでの時点で、あなたの物語で何が起こるかは確定された。あとはそれを形にするのみ。


 映画や演劇なら脚本、小説や漫画なら原稿に当たる部分だ。


 まずこれらに関し、「会話文」と「それ以外」に分けて考える。


「それ以外」というのは、映画や演劇ならば視覚的な情報、小説ならば地の文、漫画ならば絵のような、セリフ以外の情報伝達手段を指す。


・「それ以外」について、殆どの種類の作品に共通することは、その種類を活かすべしということだ。簡単に言うと、セリフのみで全てが把握出来るような作品は、ラジオを除き、全てゴミである。


 例えば映画ならば、映像と共に見ることによって初めて理解できるよう、セリフの情報を制御せねばならない。他も概ね同様だ。


 頭の中には常に「画」を思い描きつつ、視覚的なイメージを駆使して(これは小説でも同様である)、あなたの世界を描写すべきである。


 脚本にせよ何にせよ、基本的には、頭の中に思い浮かべた情景を記述する作業なのである。


・次に「会話文」について。


 会話文は、やはり慣れが必要である。恥ずかしながら、私の中でもあまり理論化されていない。


 ただ、それでも辛うじて紡ぎ出せるものはある。


 第一に、一般人同士の普通の会話(つまり殆どの会話)については、ひとつの発言に二つ以上の主題を持たせてはならない。どんなに長いセリフでも、根本的に伝えたいことは一つであるべきだ。


 第二に、相づちはあまり打たない方がいい。初心者は安易に相づちを入れがちであるが、実際の人間は、相づちなどそう打つものではない。


 もちろん全くないというのも違和感があるが、恐らくは少なすぎるくらいがちょうど良い。


 第三に、口調は、その人物に劇的な変化が起こらない限り、変えない方が良い。単語の選び方なども、十分にその人物の性格に配慮して選択すべきである。無論、一度決めた単語の選び方は、基本的には変えるべきではない。


 まあ私が理解しているのはこの程度だ。



《校正》

 最後に校正をする。当たり前のことだ。


 この段階は、唯一、素人の干渉を許しても良い局面である。


 もちろんストーリーの展開については、一切の干渉を許してはならない。かくなる意見は超然として唾棄すべきである。


 ただ、セリフの流れの中の違和感などは、彼らが検出してくれるだろう。やはり初めて見る人間の視点は重要である。全ての観客があなたの作品を初めて見るからだ。


 それで校正を済ませれば、ストーリーは完成である。


 映画なら撮影に入り、演劇ならば演技の練習に入る。小説や漫画の場合は、この時点で世に出せる。


 以上だ。


[後書き]

 と、唐突な終わりを迎えた訳だが、如何だっただろうか。もちろん、完璧にこれに従う必要はないし、これが全てではない。映画をこのような視点で分析したり、プロに向けたより詳説な構成を勉強するのもいい。


 ただ、少なくとも基礎となるのはこれらであると、私は確信している。


 物語の世界で言うところの「自由」とは、あくまで大枠の内側での自由である。この大枠は非常に巨大だが、しかし、容易にその外に逸脱し得る類いのものでもある。


 ここに書いた基礎の上に、あなた独自の物語を建てて欲しい。


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