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プロローグ2

 


「ごめんごめん。少し、待たせちゃったかな」

 小走りで駆け寄ってくる小柄の少女の声を聞き、グレー色の髪色をした少年は体を起こした。

 髪を腰まで伸ばし右手にワンドを指揮者のように振りながら近づいてくる小柄の女性の名はレイナ=スローク。少年の先生だ。


「いいえ。かなり遅かったですよ。ちょうど約束したじかんから一時間経ってます」

 少年が来るまでつい居眠りしてしまうくらいには遅かったがレイナ先生は基本的に多忙だから仕方ないとそこは割り切っている。だが、ちょっとした嫌味くらい言う権利もまたあるのだ。


「じゃあ、このお詫びにいつかなんか埋め合わせるからそれで勘弁してくれ」

 両手を合わせて軽く頭を下げてくるレイナ先生。


「いいですよ。それじゃあ……さっそく相手してください!」

 言い終えると同時に両脇のホルスターからそれぞれ拳銃を抜き出しそれぞれ一発ずつ撃ち放った。

 少年の魔力を使い放たれた魔力弾は先生目掛け真っ直ぐ飛んでいく。


『シールドエフェクト』

 レイナ先生がそう唱えると目の前に半透明の光る薄い壁が出現し魔力弾を防いだ。


『燃え盛れ炎の弾ブレイズショット』

 立て続けに炎状の弾を俺目掛けて乱発するレイナ先生。


『止弾』

 炎弾を回避しながら魔力弾を放つ。しかし、打ち出された弾は飛来せず空中を静止していた。


「君もやるようになったじゃないか。レイヴくん」

 そう言いながらさらに五つ同時に炎弾を放ってくる。


 ――こっちは話す余裕すら無いっつ―の。

『シールドエフェクト』

 光の壁を直前に出し炎弾に備える。

 一つ、二つ目までは盾としての機能を発揮して少年は己の身を守った。だが、三つ目の炎弾を防ぐと光の壁にヒビが入り四つめで決壊した。

 五つ目の炎弾が飛来する。体を捻らせなんとか直撃だけは免れた。

 だが、体をかすらせると同時に爆発が起こった。少年は吹き飛ばされるとすぐさま受け身を取り体制を直した。


 ――遠距離戦では分が悪い。

 否、絶対に勝てない。そう判断し、右手に握る銃をホルスターにしまった。そして、背中に下げられた直剣を抜刀し先生に突っ込んでいく。


「うん。懸命な判断だ」

 踊り舞うように体を動かしながら連続して炎弾を放ちながら言ってくるレイナ先生。綺麗に舞うその姿はさながら妖精のよう。これが戦闘中じゃなかったら少年は思わず見とれていたところだろう。


 回り込むように炎弾を避けながら少年は近づいていく。魔力弾での牽制も忘れない。


「はあああああっ!」

 ついに剣の間合いに入り剣を切りおろした。


「おっと」

 ステップで後ろに躱されしまうがここで畳み掛ける。


発射ファイヤ!』

『止弾』で空中に留めさせていた魔力弾を全て解放させ、多方向から無数の魔力弾が少年とレイナ先生の方向目掛けて飛来させる。


『『シールドエフェクト』』

 少年は背中、レイナ先生は体全体を覆うようにシールドを展開させ魔力弾を防いだ。


「はあああああっ!」

 そして、少年は魔力弾を防いで硬直しているレイナ先生目掛け剣を切り上げる。この渾身の一撃なら魔術師のシールドでも防げないだろう。


「そう、普通の魔術師ならね」


 ――カキン

 レイナ先生を捉えたと確信した刹那、剣がシールドに触れこのまま押し切れると確証を持った。だが……、今現在少年の剣はシールドにより阻まれていた。


「うんうん。動きも判断もなかなか悪くない。……合格!」

 そう言ってレイナ先生はバックステップで一歩後ろに下がるとシールドを解除した。


「うぉっ!」

 シールドに体重を傾けていたため前の方に倒れてしまう。


「おっと」

 目の前にいたレイナ先生が受け止めるとそのまま両腕で少年の頭を包み込んだ。そして、そのままレイナ先生は語りだした。


「三年間よく頑張ったね。見違えるように成長して先生は嬉しいぞ」

 三年間育ててくれたのはレイナ先生だ。無力だった少年をここまで上げてくれたのも。だが……、

「だけど俺は……」

「うん。まだ弱い」

 少年の力は決して強いとは言える実力ではかった。


「でもねレイヴ。君の物語はこれから始まるんだよ。私のもとで成長した期間よりこれからダンジョンで成長していくほうが長いんだ。物語で言うとここまではプロローグでしかない。だから、君だけの物語を築き上げてほしい。まあ、要するにこれから強くなっていこうぜってことさ」


「兄さーん!」

 遠くから少年を呼ぶ声が。少年をこの呼び方で呼ぶのは一人だけだ。


「ほら、ちょうど君の物語に欠かせない相棒が迎えに来たよ」


「イリス……」

 先生から顔と体を離し振り返ると少年の一つ下の妹イリスがこっちにやって来ていた。


「準備終わったよ」


「そっか。それならもう二人とも出発しないとね」

 名残惜しそうな様子を見せる先生だが少年とイリスが行くのは案外すぐ近くのところだからそこまで心配する必要はない。


「レイナ先生、今までお世話になりました」

 少年は深く頭を下げて礼をした。


「うん。二人ともくれぐれも無茶と無謀な真似はしないようにね」


「「はい!」」

 こうして少年、レイヴ=ソレッドとイリスの物語の第一章が始まった。





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