プロローグ1
周囲を染める赤。
絶えない悲鳴と咆哮。
背中に感じるのは決して失ってはいけない温もり。それを背負って僕は走る。
真っ直ぐ、真っ直ぐと。
方向が定まっているわけじゃない。だが、懸命にどこかへ向かって進む。
とにかくこの場所から離れたかった。とこでもいい。ただ、どこかずっと……遠くへ。
――生きて
そう言われたから。
――絶対に二人で生きて
約束したから。
走る。
呼吸が乱れる。肺が痛い。
走れ。
足を懸命に動かす。
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ!
心に体が追いつかず速力はどんどん落ちていく。それでも足は止まらない。
――進め!
だが、目の前に障壁が立ちふさがる。目の前の厚い障壁は俺達を取り囲むようにして広がっていく。
歩みが止まる。
――ああ、これはだめだ。
周囲が絶望に染まる。
――せめてこいつだけでも。
背中に残った灯火。こいつさえ生きていれば……、そう考えたとき突如、周囲に閃光が迸った。
気づくと壁はすでに消え去り一人の大きな杖を持った女の人がこっちに歩み寄ってくる。
「無事かい?二人とも」
その優しそうに語りかけてくる声を聞いた途端体から力が抜け、意識が暗転した。