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8 『熊狩りスタート』

「さて、じゃあ準備できたか?」


「「「大丈夫!」」」


 ウェアスの言葉に三人は元気よく返事をした。

 三人が感動の再会を果たして、ウェアスが来るまでには少しだけ間があった。

 といっても、ほんの数分程度ではあったのだが、熊狩りのために色々な話し合いをするには十分すぎる時間である。


「よし、じゃあ久々の熊狩りだな。三人とも怪我をしないように安全に注意して行動するように」


「「「はーい!」」」


 返事を聞き終わると、ウェアスは行くぞと一言告げて、荷物を持って歩き出した。

 三人もウェアスの歩幅に合わせるようにして後を歩く。

 前から、ウェアス、クレア、アクア、ティーナの順でずんずんと森に侵入していく。

 

 木々が風に揺れてざわざわと揺れる音、小鳥のさえずり、小川から聞こえてくる滑らかな水の音が森には響いていた。

 天を覆うようにして生い茂った草木が直射日光を防ぎ、それなりに涼しい環境。

 四人の足取りは軽々しく、まるで遠足に行くかのような感じにも見える。


「ねぇねぇ、ティーナちゃん。目的地に着いたら最初に何の魔法使う?」


 魔法と言われて、クレアはティーナが水魔法を使うとか言うのか? と、予想していたが、その予想は大きく外れた。


「えっと、熊狩りの基本は餌で熊をおびき寄せてから討伐する感じだから、魔法の前に罠をしかけるんじゃない? でも罠を仕掛けた後に使う魔法としたら土魔法かな。保険はあった方がいいもの」


 ティーナはそう答えて、軽く微笑んで今度はアクアの方に向いた。


 ティーナちゃん真面目だなぁ……私とアクアちゃんとは考えてることのベクトルが別次元かも。


「アクアちゃんはどうやって熊を倒す?」


「わ、私? うーん……私は手当たり次第に探して、見つけたらそのまま仕留めるよ」


「おっ、私もアクアちゃんと同じ考えだよ!」


 ここぞとばかりに同意したクレアにアクアは少し嫌そうな顔を見せた。


「……まあ、クレアちゃんと私は基本的に脳筋キャラっぽい感じだし、ティーナちゃんみたいに作戦とかを立てたりするのは苦手かな」


 そして、二度クレアの方をちらりちらりと横目で眺めて、諦めたようにため息をついた。


「なんかアクアちゃんが諦めたような目で私を見たんだけど……」


 しかも、態度で示してるし……。


「あー、気のせい気のせい。ただ、クレアちゃんと私はすぐに熊を殺ろうとするから、思考回路が悲しいなって思っただけ」


「いや、思いっきり諦めてるし! さりげなく貶してきてるし!」


 楽しげな二人の会話を嬉しそうに眺めるティーナ。

 先頭を歩くウェアスも三人が楽しそうにしていることが何より嬉しいのか、自然と鼻歌を歌いだす。


 主にクレアとアクアのツッコミとボケのような会話が続き、それに対してティーナが微笑を投げかける。

 そんな会話のローテーションを続け、気が付けば30分が経過し、目的地付近まで到達していた。


「おーい、楽しそうなところで悪いんだが、そろそろだぞ」


「はい、わかりました」


 ウェアスの苦笑いに対し、ティーナが三人を代表して返答を返した。


「よし、じゃあ三人とも歩きながらでいいからそれぞれで準備をしなさい。熊の狩り方はそれぞれ自由。ただし、本当に怪我にだけは注意するんだぞ」


「「「はーい」」」


 怪我に注意。

 熊を、しかもかなり危ない熊を相手取るのは怪我以前に普通の人間であれば死に至るまである。

 しかし、死ぬなよというより怪我と言ったウェアスの心中は三人の力を信頼してのことでもあった。


 その後、ウェアスは目的地に仮拠点として大きなテントを一つ設置、クレア、アクア、ティーナはそれぞれ熊を探しに森に散った。


 本来であれば、子供三人を森の中で自由にさせて、加えて熊を狩らせるなんてことは絶対にあり得ない。

 しかし、この三人は例外である。

 ウェアスからしたら、アクアは魔法の天才。ティーナは竜人であり、こちらも魔法に優れていて心配は要らない。クレアはプラリネの娘であり、自身の娘、熊相手に遅れらをとったりなどは考えられてないからだ。


「さて、三人はどうやって熊を仕留めるのか……クレアとアクア嬢ちゃんはともかくとして、ティーナ嬢ちゃんがどんな仕掛けをするのか楽しみだな」


 一人、三人が散らばった後のテントの前で興味深そうに微笑むウェアス。

 うずうずする感情を抑え、ウェアスはテント作成を完了した後の焚き火の準備を黙々と進めるのであった。


 そして、その嬉しそうなウェアスを見つめる一つの影、紫色の綺麗な髪の持ち主は、その様子をじっと観察していた。

ブクマおねがいします!

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