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7 『完全なるドッキリ』

「クレアちゃん来たよー!」


「アクアちゃん待ってたよ!」


 現在丁度お昼時を少し過ぎた頃。

 クレアはニコニコ顔のアクアを笑いを堪えながら出迎えた。

 もちろん、ドッキリ企画(勝手に決めた)は続行である。



 ティーナちゃんを誘ってここまで連れてきた道中、かなり真面目な話もしてきた。だか、しかし! 私はちゃんとあのことを忘れていないのが偉い!!



『屋根の上に乗っておいてくれない?』


 そう、私は何事も有言実行しちゃいたいタイプの人間。

 そこのところを舐めてもらっては困るのだよ!

 だから、ちゃーんとティーナちゃんには私の家の屋根上にスタンバイして頂いた!

 アクアちゃんの驚く顔が楽し……。


「ん? それにしても随分なにやけ面だね。クレアちゃん、何か企んでるでしょ?」


「ふぇぇ!? そ、そ、そんなこと……ないでしゅ……」


 しかしながら、クレアは隠し事がどうにも苦手であるらしい。

 動揺した拍子に口籠もり、さらにアクアから疑いの視線を痛烈に受ける。


「ふーん、本当にそうなんだ」


「いや、えっとぉ……」


「教えてくれないと、アレしちゃうから」


「ごめんなさい! それだけは勘弁してください!」


 どうにもアクアちゃんを驚かすのは難しい。

 おそらく私が企みを顔に出すのが悪いのだが、それでもどうなのだろうか。


 慌てふためくクレアをティーナはじっと見つめる。

 もう、クレアが哀れでしかたがない。


 あーあ、クレアちゃん、失敗してるし……。もう降りてもいいかな?

 完全に企んでいることが見え見えだし……クレアちゃんは隠すのがへたっぴだなぁ。


 屋根の上ではそのやりとりを終始見つめていたティーナが苦笑いを浮かべて静観していた。

 結果的に、屋根から降りてきたティーナにアクアが終始戸惑い気味だったので、クレアの『アクアちゃんを驚かす』という作戦は実質成功した。もっとも、クレアが望んだ形ではなかったが……。



===


「まったく……クレアちゃんは……」


「ぶ〜、ちょっと驚かそうとしただけじゃん」


 軽くぷんぷんと怒りを表しているアクアに対し、クレアは悪びれもせずに踏ん反り返る。


「まあまあ、二人共その辺で」


「まあまあって……ティーナちゃんもクレアちゃんの口車に乗ったから共犯だよ、共犯」


「そうだそうだ〜、ティーナちゃんは私の共犯者です!」


 アクアの怒りの矛先がティーナに向いたのをいいことに、その言葉に便乗するクレア。しかし、直後にクレアの頭頂部にはチョップが振り下ろされた。


「いだっ!」


「クレアちゃんが主犯なんだぞ? 反省しなさい」


「アクアちゃん酷いよ〜」


 クレアの小芝居じみたジト目と腰に手を当てるアクアの光景にティーナは思わず吹き出した。


「なんか、久しぶりだなぁ」


 ティーナの呟いたその一言に二人は同時に首を振った。

 

「そうだね。三人でこうしているのは久しぶり。クレアちゃんがふざけて、私が叱って、ティーナちゃんが苦笑いしてる……本当に久しぶり」


 本当に久しぶり……。お母さんの一言が無かったら、ティーナちゃんを誘おうとは思わなかったなぁ。

 でも、誘えたのはいいこと!


「まあ、この機会を設けたのは私で、アクアちゃんは私のことを叱る前にもっと感謝して欲しかったんだけどなぁ……」


「それとこれとは別よ」


 アクアちゃんのその決め台詞の後に三人はお互いの顔を見合って大いに笑いあった。


「本当にティーナちゃんがいないと寂しかったんだよ」


 心の底からそう思う。

 クレアの眼差しは真っ直ぐティーナに注がれる。

 視線に気付くのは早く、ティーナは寂しい思いをさせてしまった罪悪感で少し目元を潤ませた。


「そっか……うん、ごめん。もう大丈夫だと思う」


「うん、これからも三人で一緒に居ようね!」


「クレアちゃんもたまにはちゃんとした事を言うんだ……」


 ……アクアちゃん、その一言余計だよ。

 


 それまでのしんみり感はアクアのクレアに対する見解の曝露によってガシャリと崩れた。

 しかしながら、しんみりした空気より、三人にとって欲しいものは楽しいあの頃の感じ。なので、この空気感の変更は返って良いものであった。


「それにしても、ティーナちゃんがいないと私もクレアちゃんに強く当たったりとかできてなかった」

「そうそう、最近はこんな言い合いはしてなかったよね」


 アクアの言葉は確かなことであり、クレアもそれに納得していた。


「そうなんだ。クレアちゃんが問題を起こさなくなった……のかな?」


「そう、クレアちゃんが比較的大人しめになったんだよ」


「ねえ、その比較的って言葉に若干問題児としての名残があるのは私の気のせいなの!?」


 ティーナの反応に対し、アクアは暫し無言になった後にゆっくり頷いた。


「以前みたいな大々的なことはしなかったけど、ちょくちょくイタズラくらいのことをしていたのよ」


「それはそんなに変わらないんじゃ……」


 どんどんと進んでいく自身への風評被害(嘘)にクレアは口を尖らせた。


「あのさぁ、結局アクアちゃんが落ち込んじゃって私を叱る気力が無くなったってことでよくない? なんでわざわざ私のことをを棚に上げたの!?」


「「仕返し?」」


 

 


 でも確かに、ティーナちゃんがいなくなってからは私がアクアちゃんにこうして叱られたりとか無かったな。そう考えると……。


「……やっぱりティーナちゃんをこの場に連れてきた私が怒られるのって、間違ってない?」


 クレアはそう結論を導き出したが、結局アクアには聞き入れてもらうことはなかった。





 

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