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49 『最強少女との遭遇』

 私は狙撃部隊のチェラン。特務組織、狙撃部隊が結成された当初から隊員として、働いているいわゆる古参隊員だ。

 ヴェロニカ隊長とも、私が一番最初に会話して、かなり信頼されている。嬉しい、嬉しい……。

 そんな私は、ヴェロニカ隊長に代わって、今現在、狙撃部隊の半数を指揮して、森にいるという魔人を捜索している。勿論、対峙したら然るべき対処をするつもり。


 そして、話題のヴェロニカ隊長はというと……恩人に会いに言ってくるといい、瞬く間に消えていた。村に着いたばかりなのに……というか、いつも思うけど……どうやって移動したの!? 瞬きしてたら、消えてたんですが!

 まあ、ヴェロニカ隊長は優れた身体能力と魔力を有しているので、これ以上何を考えようと無駄。そう、無駄だから話を進めます。

 作戦通り、私たちはアルマ村のすぐ近くにある森へと足を踏み入れた。ここに魔人がいるという。


 森に入ってかなり経った頃、ふと異変を感じた。魔力の淀み……いや、誰かが魔法を使う前兆。後ろをついてくる隊員達に目配せし、急いで気配のする方へと音を立てずに忍び寄る。


 魔人がなんらかの魔法を使おうとしている。そう思っていたのだが、よくよく見てみれば、魔法を使おうとしていた人物は魔人ではなかった。


 禍々しいツノも生えていなければ、魔人特有の嫌なオーラがない。というかむしろ、可愛い!

 銀髪はサラサラしており、身長も年頃の女の子って感じである。後ろ姿でも、その子の美しさというものは滲み出るように周囲に溢れ出ていた。


「えっ……」


 こちらに気付き、惚けるような声を出す少女。

 いきなり気配を感じたのだから当然だろう。私たちも、まさか魔人以外に人がいるなんて思いもしなかったから相当驚いた。

 しかも、驚いたのはそれだけでない。

 聴いたことのない詠唱、見たことのない属性……むしろオリジナルの魔法か……。経験のないものを目にしている。そして、彼女が何をしようとしているのかを周囲を観察すれば安易に予想できる。


「やっぱり、魔人か」


 女の子を挟んで、私たち狙撃部隊の対面には、同じく魔法の発動を察知して寄ってきた魔人が5、6人姿を現していた。それぞれ独特な形をした刃物を所持している。

 私の呟きなど気にもしないような魔人達の視線は一手に彼女に寄せられていた。


「あの……えっと」


 銀色の髪は魔法の風圧でばさりと広がる。

 動揺した彼女は口をもごもごさせてこちらの様子をチラリと窺う。魔人の方は警戒していないけど、大丈夫なの?


 そんなことを思いつつ、先ほどまで計り知れない程の魔力を放出していた魔法発動の跡を見る。彼女の発動した魔法はゆっくりとその鳴りを潜めている。

 彼女の発動した魔法。これは攻撃魔法ではない。その証拠に魔法を発動した所定の場所にはまた新しい人影が出現していた。

 

 これはおそらく召喚魔法というものだ。

 英雄プラリネが使っていた幻獣を召喚する魔法と似てる。……が、違うところといえばそれは。


「よう、あんたが俺の主人か。まっ、せいぜい仲良くしてくれや」


 召喚したのが人間ということだろう。

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