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38 『心配な二人組』

 魔法学園の入試というのは生徒の才能を推し量るための『魔法実技』とその者が有している知識を確認するための『魔法学、総合筆記』の二つが存在する。

 どちらも入試での採点項目であり、入学を目指す者たちは必死になって、努力をする。


 『魔法実技』は、基本どの属性の魔法でもいいということで、それぞれ得意な分野を伸ばし、『魔法学、総合筆記』はとにかく理論などを覚えて、入試に備えることとなる。


 配点としては、実技が8。筆記が2といったところ。

 実技が優先されるため、知識だけがあっても入学はできない。つまり、名目上は両項目の能力を上げるが、実際は魔法を上手く使えるように、そちらに重しを置くことがほとんどだ。


 そんなことを知らないクレアとアクアに、今必死にその内容を指導しているのは、疲れた顔で立ち尽くすティーナだった。


「まさか……知らなかったなんて」


 その顔は絶望感というよりも、驚きが優っているようである。


「いや、私もアクアも聞かされてなかったし……」


「うん、初めて知った。つまり、魔法が使えればいいってこと?」


「ああ……クレアはともかくとして、アクアまでこんな有様とは……。ちょっと心配になってきた」


 失念していた。そんなことは知っているだろうとたかを括っていたことが裏目に出てしまった。

 ということで、


「大丈夫! 魔法なら私にどーんと任して!」

「そうそう、クレアほどじゃないけど、魔法なら問題ないよ!」


「二人とも、すごい心配!!」


 ティーナはとっても大きな憂慮を抱えることとなった。


「でもさ、筆記に重しを置かないってことはチャンスだよ!」


「クレアの言う通り。ティーナは大丈夫だけど、私たち二人はちょっと心配だったから、配点の具合が実技に傾いていて助かったって思う」


 一方で二人は微塵も心配していない様子である。


「まあ、前向きに考えることは、いいこと……かな」


 能天気なトラブルメーカーであるクレア。

 クレアのストッパー役であるが、たまに天然なアクア。

 二人のその賑やかなやりとりと奇想天外な行動は、色々と苦労もあったものの、救われたことも多い。

 後ろ向きな感情よりも前向きに考えている二人のことは、いいことだと、そう捉えた。


 ……でも、安閑過ぎるのは危ういんだけどな。



 そんなやりとりをしている三人。豪華な校門の前で話し合う光景は多くの生徒がしている。

 そんな中、依然として困り顔のティーナの横を二人の人影が通り過ぎる。……と、校門を抜けて入っていったところで、一人が足を止めた。


「ねえ……少しいい?」


 一番近くにいたクレアたちに対してだろう。そう問いかけてきたのは、少し背の高いケモ耳の女性であった。

 横には無口そうなクールな感じの男性がその様子を興味深そうに静観していた。


「えっと……なんでしょう」


 ティーナがその女性に反応するが、何か気に障ったのかと少し不安げな顔。

 ケモ耳女性はよくよく見てみると、魔法学園の制服を着ていた。さらに辺りを見回して戸惑っている。その様子から、在校生であることは明確だった。


「何故、こんなに人が学園の前に集まっているの?」


「えっと、今日が入試だから……じゃないですか?」


「入試? 今日がそうなの?」


「はい、私たちも受験者ですし」


 ティーナの言ったことを今日初めて知ったかのようにもう一度ぐるりを視線を巡らしていた。やがてティーナの言ったことに得心したように頭を下げた。


「なるほどね。教えてくれてありがとう」


「あ、いえ。全然」


「それじゃあ、貴女達も頑張ってね」


 優しい気配。少し掠れたハスキーボイスはとても印象に残るような声だった。


 ティーナに教えてもらったことを再度確認した女性は、何事もなかったかのように制服の襟を直して、歩いて立ち去った。その後ろをピッタリと無言で歩く男性も同様に三人に会釈だけをし、その場を後にしていた。


 一見すれば、上級生との会話のようであるが、ティーナはその二人の違和感に気付いていた。

 上級生なら、他にもちらほらと見ている。

 なので、学園に在校生が入って行こうともなんの気にもならない。

 精々制服が格好いいくらいの認識だろう。

 しかし、その二人からは確かに感じられた。


 

 猛者の風格とオーラを。



「ん、ティーナどうしたの?」


「ごめん、少しぼーっとしてた」


 アクアの言葉に意識はそちらに戻ったが、未だにティーナの頭には二人の姿が焼き付いて離れなかった。


 あの二人は……一体何者なの?


「ねえ、二人とも……」


 ティーナの言葉に二人は瞬時に聞く体制に入る。


「「何?」」


「絶対に入学しようね」


 何度も言い続けたその言葉。

 二人の耳にはティーナの決意のようなものが表現されているようであったが、ティーナの視線は真っ直ぐと校門のあの二人が去った方向に注がれ続けるのだった。

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