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22 『羞恥心だってある』

 クレアの起こした小さな騒動から、数時間が経過した。

 三人が特訓を開始してから1時間後にウェアスが遅い登場を果たした。

 召喚を成功させたクレアにとって、基本的な属性魔法はごく簡単なもの。

 召喚を終えて気分が乗っていたのもあって、クレアの調子は過去最高に絶好調だった。その点をウェアスは見逃すことはなく、少し引いたように笑っていた。


「クレア、今日はいつにも増して……その、凄まじいな」

「父さん、なんか他に言い方あるでしょう。調子がいいな……とか」


 しかし、クレアの訴えは三人には届かず。


「「「いや、クレアは調子とかその前に凄まじいって言葉が似合ってるよ(ぞ)」」」

「いや、三人揃ってものすごく酷い!?」


 三人の総意として、クレアの持つ力というものは凄まじいという結論だった。


「えっと、何を勘違いしてるか知らないけど、クレアは相当だよ」

「うんうん、まさにその通りだね」


 二人はクレアのこれまでの行いを思い出し、そう教えた。

 その気安い感じの態度にもクレアが飛び抜けていると、そう自然に示している雰囲気が充満している。


 今までの特訓の中で幾度となくクレアはその際限のない魔力量を披露していた。

 思いっきり魔法を使った時はこの世の終わりかと思うくらいの大爆発を空中に起こし、爆風は辺りの木々をなぎ倒すくらいの威力。

 クレアの魔法とアクア、ティーナ二人の魔法を全力でぶつけ合った時は二人分の魔法に対して互角の規模を誇り相殺してみせた。

 アクアやティーナの能力は決して低くなく、むしろ常人と比べたら卓越しているレベル。

 その二人分と同等以上の魔法を放つことができるクレアというのは異次元の存在といっても不思議なことはなかった。


「まあ、二人が言いたいことに俺も同意だ。クレアはプラリネの血を受けついでいるからな。強いのも不思議じゃない」

「父さんまで、そう言うことを……」


 強いと言われて嬉しい反面、ちょっと度が過ぎている感が否めない。そのため、素直に喜べないのがクレアの本心だ。


「クレアの魔法と思考がものすごい方向に飛んでいるのは、仕方のないことだね」

「やっぱりアクアが一番私のこと偏見で評価してるよ!?」


 クレアはあまりに酷な言い分に愚痴をこぼすが、アクアはそれでは収まらない。

 誤魔化すようにアクアは赤面して、クレアから顔を背けた。


「私は常軌を逸した行動をするクレア……結構気に入ってるんだよ」

「頬染めて言っても、全然嬉しくないから!」


 クレアのツッコミ虚しく、ウェアスとティーナは確かにと苦笑いをする。

 

「クレア、諦めて。アクアなりの褒め言葉だからさ」

「言い方が褒め言葉じゃないんだよねー」

「大丈夫、大丈夫。ちゃんと褒めとるよ」

「そのニヤニヤ顔で言われたら余計に信憑性が薄れるわ!」


 こうして行われるごちゃごちゃした戯れはもはや恒例行事となりつつある。

 賑やかなこの話し声は地域の人々からも「またやってるよ」というような認識をされている。現に通りかかった人は微笑みながら、通り過ぎていくのだ。


「なんか、笑われた……」

「クレア、きっと私たちの絆を素晴らしいと思ってくれたんだよ!」

「絶対にアクアのせいだよ、これ……」


 いっそのこと大声で叫び、クレアは弁明したかった。

 私はぶっ飛んでいない、と。

 しかし、そのように考えているクレアに最大限にフォローしようとしたティーナが戸惑いながら、二人の間に入り、


「まあ、二人とも……楽しそうなのもいいけど、そこら辺にして、ちょっと休憩にしよ? 立ち話っていうのも疲れるでしょ?」


 そう言いつつも、顔が少しにやけているティーナにクレアは訴えるように頬を膨らませて、


「もう、帰るもん!」


 そう一言残し、身体強化の魔法を自身に付与して、目にも留まらぬ速さのままに家路までを風のように走り去った。

 瞠目していたウェアスも驚きつつ、そんなクレアを静かに見送った。


「あれ……私、何かした?」

「ティーナは何もしてないと思うけど……なんだったんだろう?」

「それならアクアが原因じゃない?」

「なんで!?」


 結論から言うと、ティーナ、アクア共にクレアの心境を乱していたのだが、二人にその自覚はまるでないのだった。

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