19 『試験に向けて』
あの夜から……クレアが魔人を目撃してから3年が経とうとしていた。
ウェアスとクレアの約束。三年で強くなる。
明確な目標ではないものの、クレアは3年間の特訓を経て魔力、戦闘技術、知力などを計り知れないほどまで上昇させていた。
ウェアスの見立てでは魔力面、つまり魔法のことに関して言えば、まったく心配ではなかったが、まさか座学の方まで優秀になるとは思っても見なかった。
座学に関してはウェアスが教えた訳ではない。
勉強を教えるには頭脳明晰なものが教えるのが一番である。
ということで、いつもニコニコしているが、実は天才であるプラリネと博学なティーナにクレアは勉強を教えてもらっていた。もちろん、アクアも一緒にだが、その成長量は眼を見張るものであり、ぐんぐんと才覚を発揮していた。
結果、魔法学園でもトップを狙えるくらいの学力をつけたクレア。アクアも上位陣に食い込めるだけの学力を身につけることに成功した。
ティーナに関しては言うことなし。
このように、魔法だけでなく、三人は学力の向上にも力を入れていた。
ということで……。
「まあ、そろそろ魔法学園に入学する時期なんだが……」
本日分の特訓を終えた三人を前にウェアスはゆっくりと話し始めた。
魔法学園への入学、それはクレアの悲願となっていたこと。
当然ながら、アクア、ティーナもそれに向けて必死に特訓していた。
魔法学園は人間の国にある国家機関だが、そこには国内外から多くの魔法師が集まってくる。
そのため、倍率もかなり高い。そういう中で生き残るためには入試で好成績を残すことにある。実技が八割、筆記が二割。これが意味することは、知識も大切だが、何よりも魔法に優れた才能が重視されるという点である。
ウェアスの考えとして、三年前のままであっても十分に入学はできる。そう、思っていたが、それでは魔人が戦争を起こした時に対処できるだけの能力には到底足りない。
そのことを考慮した上での特訓であった。
そして、彼女たちは学園でもトップクラスになれるだけの力を秘めている。
その力を伸ばさない理由はなかった。
「取り敢えず、三人は普段通りに試験をすれば確実に入学できるだろう。これは保証する」
「え、そうなんですか?」
アクアだけがそうウェアスに訪ねたが、その疑問にも自信を持ってウェアスはイエスと答えた。
「いいか、入学はできる。だが、入学するからには高みを目指してみたいと思わないか?」
「うん! そりゃ高みを目指すよ。ね、アクア、ティーナ」
クレアは一番に手を挙げ、ハイテンションで二人に肯定してよ感を見せつけた。
「まあ、そうだね」
「クレアの言うことは間違ってない」
アクアに続いてティーナも同意した。
「よし、なら三人は特待生を狙ってみろ」
「「「特待生!?」」」
特待生というのは文字通り、成績優秀者に与えられる称号のようなものである。
毎年、魔法学園に入学できる人数は限られている。
240人の定員にその半数である120人が特待生としての待遇を得ることができる。
魔法学園に入学し、その上半分より上を目指す。
これは並大抵の努力だけで成せることではない。
「そうだ。特待生……二級 特待生以上を取れ!」
その発言には、やはりクレアたちに対しての信頼と安心が感じられた。
ウェアスは三人のことを贔屓目なしにちゃんと評価している。その点から言えば、彼の中で彼女たちは十分に二級 特待生以上を狙えるだろうと踏んだのだ。
「ウェアスさん、ですが……クレアはかなり才覚を発揮していますが、私とアクアはそこまでいけるかどうか……そもそも私たちは他の学園入学希望者がどれくらいの技能を有しているか知りません」
「そうです。まだ、自信がないというか……」
冷静であり、物事を落ち着いて捉えるティーナはウェアスの言葉に返事を返すのを一旦保留にし、アクアも自信なさげに下を向いた。
「いや、そんなに心配しなくても俺の経験上お前たちなら特待生も余裕というか……」
「父さん、昔と今は違うかもしれないよ。入試形式も変わっているかもしれないし」
「それは、一理あるな」
ウェアスの頃はそれで十分であったことも今ではそれで足りるのか否か判断がつかない。
そのことをクレアに指摘され、ウェアスは自身の無知さ加減を少し恨んだ。
「まあでも、3年間努力はしました。やるだけやってみますよ」
「うん、やろう」
「二人ともその意気だよ!」
アクア、ティーナ、クレアの順にそれぞれの意気込みを述べ、その話は一旦落ち着いた。
二級 特待生。
ほとんどの年度で主席はこの二級に分類されている。
例外として、それ以上優秀な生徒が出た場合、一級 特待生、特級 特待生などの特別措置が存在する。
そこら辺の説明が抜けていたことをウェアスは気付かないが、そのことにこの後触れることはなかった。
「まあ、取り敢えず試験までは残り1週間。それまでに魔法の基礎部分を集中して復習する。最後だ、頑張れ」
「「「はい!!」」」
そうして、三人は二級 特待生を目標として、試験に向けて、最後の調整をする決意をした。
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