14 『とある日の特訓』
お父さんから魔法学園への入学を言い渡され、既に三ヶ月が経過。
現在、魔法の特訓中です。
「サイレントショット!」
無音の中、木でできたハリボテの標的には無数の弾痕が刻まれていた。
魔法力としては十分な素質を持っているクレア。
彼女に足りないものといえば、力加減というものであろう。
この特訓をする以前は、同じ技を使ったとしてもすぐに標的を消滅させてしまっていた。
クレアに関して言えば、魔法力の制御という感じでの鍛錬を行なっているのである。
「よし、いい感じだ。精度も高いし、これなら魔法学園で主席取れるんじゃないか?」
「主席とかはよく知らないけど、ちゃんと魔法が使えると嬉しい感じだね」
クレアは自身の手のひらをまじまじと見つめながら呟いた。
「そうだな。俺もプラリネと出会う前は限りなく脳筋系の魔法師だったから、その気持ちは物凄く分かる。なんか技能を習得したって感じになるよな」
二人が話しているとそこにもう二人が合流した。
「お疲れ様です。アクアちゃん連れてきました」
「も、もう……無理。魔力がカラッカラだよぉ……」
現れたのはげっそりとした顔のアクアとそれを軽く背負っているティーナであった。
「お帰り二人とも……アクアちゃん、生きてるの?」
「まあ、辛うじでね。そんなことよりもクレアちゃんも今日の分は終わった?」
「うん、バッチリだよ」
「そっかそっか、私の方はアクアちゃんを見守ってただけだから全然疲れてないかな」
まだ元気なクレアとケロッとしているティーナがそう会話する中、既に虫の息であるアクアはティーナの背中で怠そうに口を開けた。
「……二人とも、私だけ疲れるなんて……おかしいよ」
「仕方ないだろ。アクア嬢ちゃんは魔力量が二人に比べて少ないんだから、それを増やしたいってのは当然のことだろう」
「ウェアスさんの鬼〜……毎日魔力を限界まで使うなんて今までやったことないですよ……」
アクアは魔力量がクレア、ティーナに比べて控えめである。
といっても普通の魔法師と比べれば圧倒的に多い部類なのだが、アクアに他の欠点が見当たらなかったため、せっかくならと魔力の上限を上げようということになったのだ。
ティーナに関しては、どれもそつなくこなしていった感じで、最初こそ特訓に参加していたものの、現在は特に何もしておらず、クレアやアクアの手伝いをするくらいである。
三人の中で一番欠点のないのがティーナなのであった。
「まあ、今日はこの辺で終わりだな。解散」
ウェアスが満足そうに微笑みながらそう言うと、三人は嬉しそうに返事をした。
===
ティーナの家。
三人は特訓終了後にティーナの家に集まっていた。
いつもの三人で遊ぼうということで、今日はティーナの家で何かしようということとなり、このように集まったのだ。
しかし、アクアの疲労は想像以上に大きいらしく、家に着いた後も死んだ魚のような目で寝転がり、足をバタバタさせているだけであった。
流石に死にそうであったアクアの復活を暫く待つため、クレアとティーナは軽く二人で話し始めた。
「ふぅ、それにしても今日のは特に強烈だったみたいだね」
「そうだね。近くで見てたけどアクアちゃんがどんどん顔色悪くしてて物凄く心配だったよ」
平然と語るティーナは遠い目でその惨状を思い出すようであった。
「……心配したんなら止めなよ」
「まあ、魔力を使い切って死んだ例は無いからいいかなって」
「いや、そういう問題じゃないでしょ! アクアちゃん既に死にそうなんですけど!?」
てへっと珍しく舌を出しておどけた表情のティーナにクレアは困惑したようにため息をついた。
「あはは、クレアちゃんが私に対してため息を吐くなんてかなり珍しいシチュエーションだよね」
「今の話を聞けばそりゃそうなるよ。
というかまだ覚醒しないんですが……このまま特訓が続いて、ついにはアクアちゃんが寝たきりとかになったらどうしよう?」
クレアとティーナは仰向けでひたすら足をバタつかせているアクアに同情の視線を向けた。
「まあ、アクアちゃんだけ可愛そうではあるよね」
「ティーナちゃんに至っては特訓は要らないってお父さんに言われてるしね」
「私は魔法の威力もそれなりに抑えれるし、座学も齧ってる。魔力量もクレアちゃんに次いでいて、申し分ないと思っていうのがあるのかもね。でも、普段からちゃんと魔法の特訓をしてるっていうのが大きいんじゃないかな」
確かに、と納得したようにクレアは頷いた。
「さて、そろそろ遊ぶ時間も無くなっちゃいそうだけど、クレアちゃんどうする?」
「うん、これは無理やり起こすしかないようだね! ふっふっふっ……えいっ!!」
「ぎゃっ!! ……な、何!?」
その後、クレアのくすぐりアタックによってアクアは完全に目覚めた。
そして、強引に起こされたアクアがクレアにお仕置きを加えたというのはいうまでもないことだ。
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