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 気が付くと、俺は床に片頬をつけて倒れていた。

 寝不足で体がだるくて起きたくないときのような、やる事があるのに現実逃避して別の事をやりたくなるようなそんな気分だった。

 寝てるときにベッドから落ちたのか。

 俺は普段から寝相が悪くて、朝起きたら床で寝ていた、なんてことがたまにある。

 ずっとうつ伏せでいたせいか、首が少しだけ痛む。

 寝返りを打とうとすると、ヨダレのせいなのか、頬の辺りががヌルヌルする気がした。

 もしくは、酒を飲んで吐いたせいなのか。

 辺りがかなり臭う。

 確か昨日は友達と飲みに行って、明日面接があるからと早めに家に帰って、面接のシミュレーションして、その後すぐに寝て、それから――。

 それからどうした?


 俺は渋々(しぶしぶ)重い(まぶた)を開けると、そこは明らかに自分の部屋ではないことがすぐに分かった。

 天井の光以外には何もなさそうな部屋。

 そして目の前には人影が2つ。


「……死体処理場行きか」

不本意(ふほんい)ですが致し方(いた かた)ないでしょう」


 寝起きで目が(かす)んでいるせいか、2つの影がぼやけて見える。

 でも、声は知っている。

 キビキビとした若い女の声と、穏やかな老いた男の声。

 そしてここの生臭さと床の(ぬめ)りも知っている。


 夢じゃなかった。

 俺は一度死んで、ここに来た。

 そして、質問をされているときに足を滑らせて首から血が出て……。


 俺は生きているのか。

 若い女の声が「死体処理場」と言っているが、そこに俺を持って行くというつもりなら、やはり死んでいるということなのか。

 でも手の指は動く。

 頭も、肩も、足も動く。


「今日はつかえない転生者ばかりだったな」

「そうですね。いきなり能力を使って抵抗してくる者や、非協力的な者は有益とは言えませんからね。……しかし、事故死とは言え先程の彼は少しもったいなかったですね」

「ああ、だがもう手遅れだ。処理が終わったらこの件は私が報告しておこう」

「ええ、お願いします。いやあしかし、血捌(ちは)け用の掃除用具くらい事務室で管理せずとも常にここに置いて頂き――」


 2人の会話が聞こえてくるが、こちらには目もくれていないようだ。

 俺はその間も体を動かせる部位を少しずつ探して、五体満足で動かせることを確認した。

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