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オニシュート日記    作者: てん
2/7

夫が退職?ってありえないでしょ!どうするわたし!

「ねえ・・・おれ、仕事辞めて実家へ帰ってもいいかな?」

 

 久々に早く仕事から帰ってきた夫がビールも飲まずに黙って食事をしているから、なんとなくそういう空気を察知していたわたし。夫はお伺いをたてるようにわたしに相談してきた。


・・・ああ、やっぱそうですか・・・


うすうす言い出すんじゃないかな、とは思っていた。いたけれど「ああ、ついにきたか」という感じだった。

 

六月に入っても彼は福岡から宮崎まで通う生活を続けていた。


片道五時間以上の運転。梅雨に入ってひどい雨の中、真夜中に帰ってきたこともあった。翌日はぐったり疲れて起きられず、ごはんを食べる時間もないまま仕事に行く。そのうち事故でも起こすのではないかとヒヤヒヤだった。


義母とは電話でしょっちゅうやりとりはしていた。お義父さんの退院にはもう少し時間がかかること。退院しても自宅療養が必要なこと。そして・・・たぶん寝たきりの生活になるだろうと言われたこと。

宮崎の実家は一階が剣道場で、二階が自宅の構造。二階といっても剣道場の天井がかなり高いので実質三階になる。もちろん階段だ。義父がもし寝たきりの生活となったら、とても義母ひとりでは介護しきれないだろう。いや、義母が倒れてしまうかもしれない。家だって引越しを考えなければいけない。

「親の介護問題」が、がぜん現実味を帯びて、わたしの目前に迫ってきていた。


テーブルに向かい合って座り、彼はぽつぽつと話し出す。

「おれさあ、独身のときも奈緒ちゃんと結婚してからも、あんまり実家、帰ってなかったんだよね。一年に一回、ニ、三日帰ればいい方で」

わたしは冷蔵庫から麦茶のサーバーを取り出してテーブルの上のコップに注いだ。コポコポという音が大きく聞こえる。


・・・そう、うちはレジャー大好き家族で、実家より旅行、だった


子どもも親も若いうちに一緒にいろんな体験をするんだと、長い休みには必ずといっていいほどどこかへ出掛けていた。

「こんななってみて初めて身に沁みて分かったというか、うちの親もう、ほんとにトシなんだなって。もうすぐ、いなくなるかも知れないんだって」

わたしはうなずく。

「うちの親、元気でさ、おれなんかてんであてにしてないよーってかんじだったからさ。今までそれをいいことにほっぽっておいたっていうか、自分のことだけしか考えてなかったっていうか・・・。」


わたしはあいづちを打つでもなく黙って聞いていた。

「今まで・・・おれ、親孝行みたいなこと何にもしてこなかったし、いや、何してやればいいのかわからなかったけど、今ははっきり分かってて・・・。同じ九州にいるのに、やっぱ宮崎は遠いわ。うん、遠すぎる」

目線は手の中のコップに置いたままきいてみた。

「仕事辞めるって、辞めてどうするつもりなの?」

やはり二人の子どもがいる主婦としては、これをきかずにはいられない。

「今の会社に宮崎近郊に支社とかはないから、宮崎に行くなら退職していくことになる」

「・・・はあ・・・」とわたし。

彼は麦茶をぐっと飲んでから、急に元気な声になって、

「で、ここからが聞いて欲しいところ。いくらおれだって何の考えもなしに会社辞めるとかは言わないよ」

とってつけたような笑顔で話を続ける。口元は笑っているのに目が笑ってない。緊張しているのだ。

「おれの会社、ネット販売業務の部門だけ外部に委託する、って案がこの前から浮上してるんだ。これってまさに渡りに船!でしょ。この道をおゆきなさいって誰かが後押ししてくれてる、みたいな。で現システム部のリーダーのおれが独立してその委託契約を結んで、会社もおれも双方ともに利があるっていうこの企画案を部長に提出しておいたのよ」


・・・妙に都合のいい案に聞こえますけど


「それって、通りそうなの?」

「部長に今日、言われた。今月末の取締役会で決まるだろうって。新天地でがんばれよ、とまで言ってもらったよ」

「・・・それって、わたしに聞くまでもなくもう決定済みってことなの?んな大事なことを?」

わたしのドス暗い声ににこにこ顔をきゅっと真顔に戻して、

「いや、もちろんそうじゃない。選択肢は四つある」

彼は姿勢を正すと人差し指を立てて、

「一、おれだけが宮崎に行って・・・この場合はさっき言ったおれが独立して仕事を請け負うってことになるけど、君と京香と奈々香はこのまま福岡に残る。問題なのは・・・当面は請け負う仕事がうちの会社からだけだから収入は今より減ることが予想される」

「減るって、どのくらい?」

「今のこのマンションの家賃くらいかな」


・・・えー、十万も?十万も!


「二、君たち三人が宮崎に行って、おれは福岡に残り今まで通り仕事をする」


・・・え?いやいやいや、それはない、ない。っていうか、もうあなたも今まで通りに会社にいられないんじゃないの?


「三、これまで通りに生活する。で、おれは毎週宮崎へ行く。・・・どうしても、おやじが死ぬ前に親孝行ってものをしてみたい。今しか出来ない、今すべきことだと分かっているのにしなかったらきっと一生後悔するから」


・・・毎週って。わたしがどれだけ心配してるか、知らないんでしょうね


「そして、四。みんなで宮崎に引っ越す」


・・・みんなで引っ越す!引っ越すって今言った?・・・って同居?同居!!


わたしの心の声が聞こえたかどうかは知らないけれど、

「あ、ちなみに、あっちで住む家はもうあるから。うちの実家の隣の貸家、駐車場の横の。今まで入ってた人うまい具合に、来月には出る予定なんだって。ちょっと古いけどまだまだ住めるし、一戸建てだし、なんてったってタダだから」


・・・同居じゃなかったか、フーウ・・・一瞬あせった。俗に言う「スープの冷めない距離」ですね、まさしく。


視線を白い天井に向けて考える。


・・・京香は4年生、奈々香はまだ幼稚園。引越しして転校してもまだ大丈夫だろうか?貸家?ああ、なんかあったような。気にして見たことがなかったなあ。ま、住むとこはあると。家賃が要らなくなる分収入が減っても、生活には支障は出ないってことよね・・・。ふう・・・。もう結論出てるじゃん・・・


「・・・わたしも働いてるんですけどね」


わたしは福岡市内のスポーツクラブでパート勤務をしている。出産を機に前の会社を退職して、奈々香が幼稚園に入園するのを待って、今のスポーツクラブに再就職したのだ。

芸は身を助けるとはよく言ったもので、五歳から習い始めたバレエと、学生時代からずっと続けているダンスのおかげですんなりと採用してもらった。週一回のスタジオレッスンと合間の受付業務で少しばかりの収入を得て、地元の中学校のダンスチームの指導もさせてもらって、京香と奈々香のPTA活動もこなし・・・。生活スタイルがやっといい感じに安定してきたところだったのに・・・。


「それがさ、この間帰ったときに見つけたんだよね、うちから十分くらいのところにあったよ、大きなスポーツクラブが。奈緒ちゃんだったらまたすぐ採用してもらえるって、うん。宮崎はいいよー。のんびりしてて、人も親切でおだやかで。子どもを育てる環境としては最高なんじゃないかな?一軒家でほら、今みたいにドタドタ騒いでも『静かにしなさい!下に響くでしょ!』とか言わなくていいし、気兼ねが要らないしさ、楽だよきっと」


・・・楽かどうかはあなたが今言えることじゃないでしょうが?


この三ヶ月、わたしだってこれからどうしようか、考えなかったわけじゃない。病院での義父と義母の顔がしょっちゅう頭に浮かんだ。電話で話すと義母はいつも「・・・どうなるんやろねえ、わからんわ」と言って電話を切った。わたしに、こうして欲しい、とは言わないのが余計に気にかかって。わたしと夫と子どもたちと、それからお義父さん、お義母さん。できればみんなが笑って暮らしたい。それにはどうしたら一番いいのか。

子どもはどんどん大きくなるし、親もどんどん年を取っていく。いつまでも変わらない生活なんてあるわけない。子どもを見ていて分かるのは、成長していくという事は変化の連続だということ。変わることを恐れていては成長はできない。


・・・これって、わたしも、このへんでぐーんと成長してみなさい・・・ってことなのかなあ?


ぬるくなった麦茶をごくごくっと飲み干して、ふーっと一息ついて言った。


「・・・それじゃ、ですよ。月末の、会社の決定を待ってから・・・しょうがないでしょ!四番でいきましょうかね」

彼は満面の笑みを浮かべて、

「さすが奈緒ちゃん、決断が早い!さっすがおれの奥さん!かっこいい!おっとこまえ!」

と、飛び上がりそうな喜びようで、わたしも

「あー、持ち上げないで。落とされるのが怖いから」と、笑ってみた。


・・・だってアナタ、もう会社には戻れないでしょうが?確信犯でしょうが


不思議なことに、こうやって引越しを決断してみると、とてもさっぱりした気分になっているのに気がついた。あれこれ考えて、ついつい「はあぁー」とため息をついてばかりいたのに。

これからの新しい生活が楽しみにすら思えてきて、

「じゃあ、ちょっとカンパイでもしますか?」

「おー、いいねえ。なんかツマミある?」

「ありますよー。あ、この前お義母さんからもらった日向地鶏の炭火焼パック!」

「いいねえ、いいねえ。じゃあ、かんぱーーい!」


彼も彼なりに緊張していたのだろう。顔だけでなくからだ全体をゆるゆるにして、夫はビール会社がCMに使ってもおかしくないような最高の飲みっぷりで一気にグラスを空けた。


この時、わたしはいい気になっていた。


ずっと引っかかっていたもやもやを立派な決断で一掃した。人の道に沿った清く正しい親孝行という善行を選んだ、ほんとわたしってできたお嫁さんだ。夫の無茶ぶりをYESと言って受け入れられる、こんな自分が上等に思えた。物分りのいい、けなげなお嫁さん。そんなのを演じるつもりはさらさらなかった。なかったけれど、やっぱりどこかにいい子ちゃんでいたいわたしがいた。「そうしなくてはいけない」「そうしなかったらあたしはひどい嫁だ、鬼嫁だ」そんな風に思う世間の常識にとらわれている自分がいたと思う。


まったく、ほんと笑っちゃう。


みんなの笑顔を求めて移り住んだ場所だったのに、そこには『鬼』が待ってたんだから。






 転校するなら二学期から新しい学校に行けるようにと、引越しは八月中と決めた。

退職も八月末と決まり、夫は平日は社内での残務調整、土日は自分の事務所開設の準備とこれまでよりもさらに忙しくなった。小学校が夏休みに入った七月の終わりに、わたしは子どもを連れて引越しの下準備のために宮崎に行くことにした。

長距離運転に自信がないので今回は列車での旅。JRを乗り継いで宮崎駅へ。宮崎の表玄関であろう駅前には南国らしいフェニックスの街路樹が堂々と立っている。

「うわあー、空が、まっ青!」

何回も来ているはずなのに、今回はなんだか特別、スカイブルーの空に感動した。


・・・青い空に白い雲、連なる緑のヤシの木。なんかリゾートに遊びに来たみたい。・・・にしても強烈に暑い!


手持ちの荷物が多いので駅からタクシーで実家に向かった。タクシーの窓から見える風景に

「ななたち、ここに引越しするの?」と奈々香。

「ああ~、超いなか!何にもないじゃん」と京香。

「えー、そんなことないって。観光地だよ、みどころ多いんだよ。そうだ、ママのお仕事終わったら、いろいろまわってみようか?ママもあんまり行ったことないんだよね、観光スポット」

タクシーの運転手さんが話しかけてきた。

「お客さん、どちらからね?」

「あ、はい。福岡です」

「あー、福岡ね?こちらへは夏休みのご旅行か何かね?」

「あ、夫の実家があるもので」

「あー、じゃあよく分かってらっしゃるね。今日はまた猛暑日げな。こげん日はとてもとても歩けんとよ。タクシーが一番げな」

「そうですねえ・・・ははは」

タクシーで涼むこと十五分、実家のある桜ヶ丘町に到着した。

この辺りは住宅街でほとんどが一戸建て、アパートなどがあまりない。のどかで落ち着いた雰囲気だ。

到着時間を知らせていたので、義母が家の前で出迎えてくれた。

「よう来たねー。暑かったやろ、ささ、入って入って」

剣道場の入り口の前を通って外付けの階段の鉄製の手すりを持って

「うんしょ、うんしょ・・・」

と奈々香が上っていく。なかなか上りがいのある階段だ。

「さあーついた。お疲れ様~」

夫の実家は広い。下の道場の建面積が百二十平米あるらしいから、その真上のこの家もそのくらいあるわけで。

京香と奈々香がベランダに走り出て行く。

「うわー気持ちいい~、あっ!プールがある~、おばあちゃんプール入っていい?」

「よかよー、今日は暑いから、プール出しておいたよ」

ベランダも広々としていて、大きめのビニールプールにはもう水が入っていた。

「すみません、お義母さん。ありがとうございます。ほんと、ここは風が通りますね、気持ちいい」

「そうなんよ。夏も風があったらまあまあ涼しいし・・・」

元は夫の部屋だったという和室に荷物を置いて、さっそくわたしは用件に入る。

「あの、お義母さん。わたしたちが住ませていただく家を見せていただきたいんですけど、見られますかね?」

「ああ、いつでも見られるよ。借りてた浜田さん先週もう出られたとよ。なんか新しい仕事が日南のほうで見つかって、早く来て欲しいって言われたって。今月は半月分の家賃にしてくれ、半月で出るからって言ってきてねえ。まいっかと思って」

「じゃあ、さっそくですが、わたし見てきていいですか?」

「いいよー、カギは開いてるから」


下におりて駐車場にまわる。砂利と小石がゴロゴロの空き地のような駐車場。車が五、六台は停められそうな広さがある。ブロック塀沿いにはバナナの樹が植わっていて青々とした大きな葉を茂らせている。


・・・さすが南国!バナナが生えてる。これって宮崎じゃ普通なの?


わたしはしげしげとこの貸家を眺めてみた。築四十五年の年季が入った建物だ。義父が結婚を機に一念発起して建てたというコンクリートの小さな二階建て。外壁は薄汚れてところどころ割れたり欠けたりしている。


「おじゃましまーす・・・」

一応声をかけて玄関の引き戸を引いた。

「え、あれ?なんか開かない、お、重い・・・」

ガタピシ音をさせながらやっと通れる幅に戸を開けた。


・・・これ、これダメだ!京香や奈々香じゃ開けられない


開けっ放しだった理由も分かった。カギは壊れていてそもそもかからないのだ。


・・・平和なのかね。カギなしでも大丈夫なんだ・・・って?ほんとに大丈夫なの、宮崎?


半畳位のタタキがありそこを上がると左手にすぐドアがあり、そこがキッチンとダイニング、奥は六畳ほどの狭いリビングになっているようだ。壁や天井はおびただしいシミと汚れで部屋が暗く見える。


・・・これは、壁紙貼り替えだけじゃ済まなそうだよ・・・


廊下に戻って少し行くと突き当りがトイレ。わたしは恐る恐るドアを開けてみる。

キイイイーッ・・・。


・・・ほっ、ああよかった!フツーの水洗トイレ、フツーの洋式、フツーの汚れ具合。ここはなんとか大丈夫。


トイレのすぐ脇にもう一つドアがある。そこをバタンと開けて、わたしは固まった。

ゴミが山のように積み上げられたそこはお風呂場。ヒビ割れた浴槽には発泡スチロールの魚箱やビールの空き缶、壁時計や毛布に雑誌、わたが飛び出た折りたたみベッドまで、ありとあらゆる物が乱雑に放り込まれていた。洗い場もゴミの袋で床が見えない。

・・・もしかして、ここに住んでた人、要らないもの全部、ここに放り込んで出ていった?

呆然とそれを眺めるわたしの足元で、何かがさっと動いた。

「・・・??!!」

シャッ、としっぽの長い灰色のかたまりがわたしの足をかすめて風呂場の隅へと走りこんだ。

「~~~!!」

ついつい目で追ってしまったその隅っこのタイルの壁を、うにょうにょと這い上がる特大の赤黒い脚が百あるという生物!

「×○♂△※凸~~~!!」

これがマンガだったら、わたしは白目を剝いて倒れるところだ。だがさすがにそうはいかない。

そろーっと後ずさりしてドアを閉めた。


・・・見てない・・・わたしはなんにも見てない・・・


ダダアッと、大急ぎで玄関に戻り、深呼吸する。スーハー、スーハー。

少し落ち着いた所で、


・・・さあ、あとは二階だぞ!レッツゴー!

・・・いや~、行きたくない、行きたくないよ~(泣)

・・・はあ?行かなきゃ!はるばるこのために来たんでしょ!

・・・いや~、無理、無理だよう~(泣)

・・・頑張れ、頑張るんだわたし!やればできる! やればできるK(子)! Y・D・K!


必死で自分を鼓舞しつつ、覚悟を決めて一歩一歩慎重に階段を上がっていく。まさに「出る」と分かっている幽霊屋敷を探検する気分で。

途中で九十度曲がって上がりきったその先には・・・六畳ほどの洋室と和室があった。


「あ・・・」


窓とベランダへ出るサッシからの光が明るく届き、何もないがらんとしたこぎれいな部屋。一階とうってかわっての白さと明るさに驚いた。


・・・前の住人さんは二階は使ってなかったんだわ、これは


少し硬くなっているサッシを開けると熱をはらんだ風が勢いよく流れ込んできた。ベランダは洗濯物を干すのには十分な広さで、隣の実家から京香と奈々香のはしゃぎ声が聞こえる。気をつけてベランダに出ると鉄製の柵が錆びてボロボロで危険なのが分かった。


・・・この柵、付け直す、と


わたしは手帳を出して書き留める。

一階、壁と天井、床のリフォーム、お風呂場は・・・業者に頼んでゴミ持って行ってもらうか?リフォーム必要。エアコン工事全部屋に必要・・・、玄関!ドア交換、ベランダ柵修理・・・おーマイガッ!


・・・はあ、これって全部でいくらかかるのよ。うちが全部直さなきゃいけないのかな?家賃がタダでもこれじゃあ・・・


「ママー!ママー!」

わたしに気づいた奈々香が手を振っている。京香も一緒になってジャンプしながら両手を振っている。


・・・あらー、めずらしい。最近はお姉ちゃん風吹かせてクールにきめてる京香が・・・


「ママー、ママもおいでよー、気持ちいいよーー!」

確かに、このベランダは気持ちいい。風がわたしの顔を撫でて通り抜けて行く。


・・・風通し良し、日当たり良し!おまけに子どもの機嫌良し!少々の出費は・・・って、少々じゃないけど、もう仕方ないか!


わたしもブンブン手を振って返した。

「いーまー行くよー!」

 上がってきた時よりははるかに足取り軽く、わたしは階段を駆け下りていった。



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