表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7話 俺、パーティ作る

ハルに聞いたら俺が死んでから、同期はあまり連絡を取り合わなかったようだ。

一人は結婚してアメリカに行ったし、そもそも同期で集まろう!なんて提案していたのが俺だったりしたから余計にだ。


ちなみに、ハルは会社を辞めて以降は誰にも会わなかったようだ。

一度だけ、ハルが会社を辞めた後みんなで遊びに行こう!って計画を立てたのだが、一人だけハルはそこの場所まで行く立地の関係と、家の関係もあっていけなかったようだ。

すごく後からの電話で、悔しがっていた声を聞いた。


『ホントはあんたのお葬式も行きたかったんだよ。でも、立地の関係や子供もいたから』

俺の葬式の話のことを話していたときに、彼女は言っていた。


そして、その時ようやく彼女の性格に気付いたんだ。


『アメリカに行ったみーちゃんも無理だったけど、みんな言ったよ。ホント、あんたはみんなから好かれてたしさ、みんな泣いていた』


『会社の上司とか全員行ってたみたいだよ?大学の友達とかも来てたって言ってた』


『遺骨は、一応実家の方と、奥さんになる人が持って行ったみたい。携帯も奥さんが持って行ったみたいだよ』


『でも、あたしはお葬式にもいけなかったし。お墓に手を合わすことも出来なかった。

こんちゃんのお父さんと電話して、いつかは行きたいです、なんて言ったくせにね。

なんか、こんちゃんがさ。ぽんって現れてさ、やっほーなんて言ってくれるのかなとかさ。

あたしやこんちゃんがいなくなっても、あの同期たちは前に進んでいくんだなって思ったら、悲しかったの』

ハルは、思った以上に寂しがり屋だったということだ。


人懐っこく、一番先に年上だった俺に話しかけてきて、仲良くなるきっかけをくれた彼女はすごく人見知りだったのだ。

深くまで入り込めない、切り込めない、迷惑だったらどうしよう、事実を少しだけ大げさに言ってしまった癖など、いっぱい自分で自分を作っていたんだ。


だから、俺は。

『ごめんな、ハル。早く死んじゃって』

そう呟いていた。そしたら、ハルは涙目で言った。

『当たり前だよ、早く死にすぎなんだよ!』



『こんちゃん、どうした?』

少し意識が別の方向へ飛んでいたらしい。慌てて、ハルに伝える。


『いや、なんでもない』


『ふーん、ま。とりあえず、そのメンバーとなるべく関わり合いは持たないようにしておいたほうがいいかもね。下手すれば、巻き込まれるわよ』

なんとも的確なアドバイスだ。


『そうしたいのは山々だ』


『分かればよろしい』


「以上で終わろう。」

ちょうどよく、学園長の話が終わったようだ。


『じゃ、こんちゃん。またあとで』

ハルはそう言うと、通話を切った。


「では、新入生はオリエンテーションに入るので教室へ移動を。

在学生も新学期にあたり、ホームルームを行う」


「新入生は俺についてこい」

ぼさーっとした服を着た先生らしき男性のあとを、ぞろぞろ着いていく。


校舎は外見はとても古そうで、築100年くらいは経っていそうだ。


だが、内装は埃一つ落ちていない綺麗なものであった。これも、魔法なのだろうか?


校舎は一階部分が、初等部に当たる4学年分の4クラス。


二階部分に、中等部になる3学年分の3クラス。三階部分に高等部となる3学年分の3クラス。合計初等部からで、十年間の寮生活となる。


十七の年に、成人として認められ卒業となる。

そして、そこで周りの大人たちに、貴族としてのお披露目という形になるそうだ。

まぁ、有力な子息子女が政略結婚ということで狙われる場でもあるそうだけど。


その間に一階のとある教室へと皆は入っていく。

ぞろぞろと入ってきていると、教壇の椅子に座った先生と思われる男性が声をかける。


「席は、入学式の番号順に座れー。今日だけだから、嫌とは言わずにさっさと座れよー」

席順は、日本ではあいうえお順だが、ここは規則性のなさそうな番号であった。

しかも、9番とかなんか嫌なこと起きそうな番号だな。


「ま、この番号は適当に選んだ番号だ。生まれとか、出生の家とか、名前とか関係ないからな。」


たしかに、俺の左隣に王子だからな。それもそうか。

ん、後ろ宰相の子供なの?

え、右隣って王子の親友じゃなかったっけ?

うわ、前とか一般人の子だよね!?なに、この席順!


「んじゃ、オリエンテーションを始める。あー、えっと。

まずは俺の紹介か。あー、俺は今年一年お前らの担任になるハーヴェイだ。

えっと、得意なのは防御魔法とか槍だな。うん、お前らの武術授業の担当になる。

あとは……、あぁ。スキルは矛盾だ」

矛盾、それは確かに防御と槍になるだろうな。

きっと、攻撃魔法も強いのであろうが何も言わないあたりは分からない。

というか、本当にこの人、いや担任。やる気が見当たらないような気がする。


「まず一言言っておく。よーく聞いておけ。

この国にいる貴族のご子息さまやご子女さまがいるっていうことで、なにかとあるかもしれない。が、ここは遊び場じゃねぇ。学園だ。

嫌なら、退学して家で家庭教師でも読んで、この学園卒業できなかったというレッテルを貼って、生きて行けよ。ここは、一度退学したら二度と帰ってこれねぇ場所だ。

あと、貴族と言っても人数はすくねぇ。今年の入学生もたった35人だ」

でも、それでも人数はいるもんだな。

さすが、全貴族が集まる貴族専用の学園だ。


「まぁ、それぞれパーティなんかで見たこともあるかもしれねぇが、仲良くするように。

面倒なことは起こすなよー。それに、今回は例外で一般人もいるが、彼女もこのクラスの一員だから危害を加えないように。」

その声によって目線はみなが後ろをちらっと振り向いたり、横に向いたりして前にいる桃色髪の少女に向く。


「自己紹介はそれぞれでしな。

それと、一般人のほかにも今年は王族である第一王子がこのクラスにはいるが、王子だからといってこの学園の授業はえこひいきなんぞしねぇ。覚悟しとけよ」

多分、嗜みとかを先ず学ぶべき人は、この担任ではないか?と思ってしまう。


「じゃ、解散だ。今日はもう寮に戻って、各自明日の準備をしろ。

明日から、課外授業だからな。明日までに5人のチームを組んでおけ。」

そういうと、担任は出ていった。


え、ちょっと置いてけぼり?


ぇ、なにそれ

俺は呆然としつつも、周りを見る。


案の定、周りはハルが危険と言っていた人たちばかり。

なに、この四面楚歌状態。


「レッスロードくん、君。まだパーティは作ってないだろう?

僕らと同じパーティにならないか?」


早速プラチナヘアーの王子からアタックがきた。さらさらヘアーで、若干羨ましい。

前世、あんな髪を持っていたら良かったのに。


「あ、あの」


「レッスロードくん、君は殿下の誘いを無下にするのか?」

おっと、断ろうとすると後ろで青髪のメガネの宰相の子どもが言う。


「い、いやその」


「平民の君もどうだ?

ぜひ、庶民の暮らしのことについても教えてもらいたいものだ。」

王子は次に前にいる一般人の彼女を誘う。


「へ、へ!?わ、私ですか!?」

桃色髪の少女は名を呼ばれるとは思っていなかったのか、驚いている。


「君だよ。貴族の子女よりも、君の方がやりやすそうだ。」

後ろで宰相の子どもが、メガネをくいっとあげつついう。


「は、はぁ。」

一般人の彼女は、なんだか不思議そうにしながらも、頷いた。


「で、では。よろしくお願いします」


「君、名前は?」

王子が、一般人の彼女の名前を訪ねてきた。


「はい、レティシアと言います」

ペコっと可愛らしく礼をする。


「僕は、アヴァンス。この国の第一王子としている。」

うん、王子っぽいし分かるよ。


「わたしは、クレイグ」

また眼鏡をくいっと引き上げている。コンタクトにしたらいいのに。


「俺は、ラッテスト。よろしくな、レティシア」

横で、茶髪の男の子がにかっと笑う。彼が王子の親友になる。


たしか、今の騎士団の団長の息子だったはずだ。

自己紹介をしている傍、俺はこっそり出て行きたかった。


ここで、テレポートが使えたら。

使えたら……、ぁ、使えるんだった。


「レッスロード、お前も自己紹介をするんだ。」

王子が早く自己紹介するように、急かす。


「まだ俺はグループに入るとは言っていません。では、殿下、並びに皆さん。

頑張って、グループ作りしてくださいね」


「お前は決定だぞ」

なぜ、了承もしてないのに決定なのか。謎すぎる。

王子とは、横暴なのだろうか。ジャイアン思考なのか、この王子は。


「いえ、俺はあのグループに入ります!」

だが、そんなジャイアン王子から逃げるためそう言い切り、目星をさっとつけた4人組へ瞬間移動した。


「転移魔法だと!?」


「しかも、無演唱だ!」

王子たちが後ろでわいわい騒いでいる。


「え。えっと、どうしたの?」

小さな小柄な少年が、突然転移してきた俺に聞いてくる。


「まだ、4人であれば俺をグループに入れて欲しいんだ」

これで5人になっていたら、俺は王子グループ決定だろうな。


「いいけど、王子さまのグループじゃなくていいの?」

ちょっと強気そうな女の子が聞いてくる。

よっし、これでグループは大丈夫だ!


「あぁ、構わない。むしろ、ご遠慮したいんだよなー」


「わかるー、堅苦しそうだもんなー!」

元気そうな少年がうんうん、と頷く。


「あ、空いたから貴族の子女らが押しかけている」

小さくポツリ、とおかっぱ頭の女の子が喋る。

後ろを見ると、子女たちが我先にとグループへ入ろうとしている。

よし、これで大丈夫だ。


「俺、コルベットン レッスロード。よろしくな」


「私は、カティア ライアンよ。」

勝気な少女が、にかっと笑う。


「ぼ、僕はユースロ ナカマラン」

ちょっとおどおどした少年が言う。


「俺は、サハク マレード」

にこにこと気の良い笑顔で接してくれる。


「……私、チィナ ケレー」

小さくぼそっとおかっぱの少女が呟いた。


「私たち、2年前くらいの同い年のパーティで会ってから、友達なの。

でも、1人足らなかったら、コルベットンが来てくれて助かるわー。」

カティアがにやっと笑いつつ、俺と握手してくれる。


「コルベットンって長いから、えっと。あだ名はコンでいいよ。」


「ぇ、そうなの?」

サハクが首を傾げつつ、言う。


「うん、俺の幼馴染はコンちゃんって呼んでくるからな。」


「幼馴染?」


「もしかして、この学園とかにいるの?」

幼馴染は、たしかに貴族なら貴族同士だもんな。


「うん。ポルン メイドビー」


「うそ!ポルンさまなの!?」

カティアが驚いた声を上げる。


び、びっくり。


「ぇ、有名?」

ポルンって聞いてすぐに、分かるとか。


「有名よ、とっても有名!

ポルンさまは、ティアレーナさまのご友人で、賢くって、魔法技術も凄くて、聖女とも呼ばれる方なのよ!あの方こそ、聖女のスキルを持ってても過言ではないの!」

ティアレーナとは、この国の第一姫となる。


うん。たしかに一応、聖女は持ってるんだよなー。


「しかも、ダンジョンを単独で攻略していて、魔物から魔王なんて恐れられてるの!」

畏れられている、の間違いじゃないかな。魔王のスキル、持っているしな。


「流石、ポルンさま!私、ポルンさまを目指しているのよ」

カティアはとても目を輝かせながら、そして鼻息が荒い。


「へ、へぇー。そうなんだ」

その様子に、ちょっと俺は一歩下がった。


相反するはずの、聖女と魔王って、両立するんだな。

始めて知ったよ。

すると……。


「こんちゃーん?」

ガラガラ、と扉を開けて、ひょっこり頭を出して来たのは、噂の的。そうポルン。いや、俺から言えばハルだった。


「ハル」


「ぁ、こんちゃん。ちゃんと、パーティ編成出来てる!さすがだねー」

パタパタと、ドレスなのに器用に走ってくる。


「こら、ハル!ドレスだから、走っちゃダメ!」

やっぱり、この学園でもハルはハルなのか。


「えー、下にズボン穿いてるのに」

楽そうなズボンがドレスの下からちらっと、ってこらー!


「また穿いてるの!?」

メイドがたしか、すべてのズボンを取り除いていたというのに。


「ふふん、レディのたしなみよ」

機嫌よく言うが、それ絶対にレディのたしなみじゃない。

あ、そういえば彼女はマジックボックスを持っていたな。


「それ、レディのたしなみとは言えないぞ」

貴族としてもなっていないと思う。


「あら、そうかしら?」

うーんって唸りつつ、首をこてっと傾げる。


「ぽ」

カティアが呟いた。


「ぽ?」

近くにいたチィナがカティアの言葉をオウム返しに言う。だが、カティアは黙った。


「あら、どうかしましたか?皆さん?」

ハルは貴族らしく、子女の挨拶を優雅にする。


「初めまして、私ポルン・メイドビーと言います。

この度はご入学おめでとうございます。この学園で不慣れなことがありましたら、なんなりと言ってくださいね。

ダンジョン攻略、パーティなどなど、様々なことのお手伝いをさせていただきますわ」


「……本物のポルンさま」

カティアは興奮のあまりに倒れた。


「ポルンさま!?」


「本物!?」


「素晴らしいですわ!」


「まさに、貴族のご子女!」

その様子に周りのクラスメイトは、色めき立つ。


「あ、あのポルンさま」

ユースロがおどおどしつつ、ハルへ言う。


「失礼、あなたは?」

ハルは、にこやかに笑ってユースロに向かって笑う。


「私はユースロ ナカマランと申します。」


「あら、もしかしてナカマラン辺境伯のご子息?いつもオリーブの実をありがとう」

手をぱちっと叩いて、うふっと笑った。


「い、い、い、いえッ!ゆ、ゆ、有名なポルンさまのおや、や、役に立てられて!こ、こ、こ、光栄と父が言っておりました」

ユースロは首をぶんぶんっと振りつつ言う。


首、折れないだろうか。大丈夫か?


「また、お願いと伝えてくれるかしら?」

ハルが、ユースロに向かって握手として、手を出す。


「は、は、はい、是非今後ともご贔屓でお願いいたします」

ユースロは、ハルのその手をぶんぶんっと手を握って、握手する。


「ハル、なにやってんだ?」

こそっと、俺はハルの耳元で囁く。


「ん?焼き鳥もいいんだけどねー。どーしてもー、アヒージョが食べたくて、オリーブの実を買って、オリーブオイルを作ってるのー」


アヒージョ、美味しいよな。

アツアツで食べると、じゅわーっと出てくるうまみがおいしい。

あぁ、食べたい。


「な、なるほどな」

ちょっと、想像してしまった。くいてぇ……。


「食べるでしょ?」


「めっちゃ食いたい!」

これで、ビールとかあればなぁ。


「まだ未成年でしょー?この世界では、卒業と同時に成人なんだから。

あと10年我慢だよー」

もしかして、お前心読んでたのか。


「声、出てるけど」

あー、それはうん。申し訳ない。


「んで、お前。俺より先にビール飲むんだろ。羨ましい」

そうだ、ハルが俺の目の前でこれ見よがしに飲むんだ。


「大丈夫、試飲だけだから」

まぁ、ハルが作ったら美味しいビールになることは決定しているが。


「大丈夫じゃねぇ!」


「あ、あの」

ユースロが首を傾げている。そうだ、まだ目の前にはユースロがいた。

ハルは、そんなユースロに優しくにこっと笑った。


「ごめんなさい、少し料理の話をしていたの。ぁ、そうだわ!」

パチン、と手を叩いていいこと考えた!という風ににこやかに笑う。


「皆さん、私の主催するパーティに是非ご参加くださいませ!」


「ポルンさまのパーティ?」


「はい、ここはお休みの日はお借りしても構わないんです。

なので、どこか一室借りて、交流しませんか?」

うふふ、とハルは笑う。


「ぉ、おい!ハル!」

俺は止めるが、それよりも先に扉が開く。


「もう、やっと、やっと。ポルン、見つけましたわよ!」

そこには、美しい少女が立っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ