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2話 俺、赤ちゃんになる

「ばぶ」

起きたら、目の前には金髪の子供がじっと眺めていた。


金髪碧眼、きっと将来はモテることが出来るだろう。

まぁ、容姿も整っていたら、の話だがな。


「ぶぅ、あぶ」

《こいつ、可愛いな》

じっと金髪の子供は、俺の目をじっと眺めてくる。


「ぶぶ、ぶふ?」

《ここ、どこだ》

動かしにくい首を精一杯動かす。


「あぁ、ばぁ」

《日本、じゃないな》


見回すと、木造の部屋。だが、日本ではおなじみの畳がない。

自分は寝ているのか、家は広く感じる。

そして、起き上がれない。


「ぶ、うー」

《俺、どうしたっけ》

横になろうとしても、身体が重くて動けない。

上だけの姿勢もツライものがある。


「あー。あぶぶ」

《確か、ハルに別れをつげて》

見えた手は小さい、どうしてだろう。


「ぶー、ぶぶふ?」

《転生することになったっけ?》

そうだ、ハルの姿を見た後意識が飛んでしまったのだ。


「ん、ぶ?」

《ん、転生?》

転生した、ということは俺はもしかして赤ちゃん?


「ばぶ!?あばあああああ」

《いつの間に、転生したのかぁあああああああ!?》

思えば、神様はぱぱっとしか説明してくれていない。

くそ、何をどうすればいいか分からないぞ!?


「あう、うぅ」

《どうすれば、いいんだ》

金髪碧眼の子供は相変わらずこちらをじっと見つめてくる。


「あぶぅ」

《お前、俺見てて楽しいか?》

きっとわからないだろうが、聞いてしまった。


「んー、楽しいかと言われれば楽しくないかな」

子どもは流ちょうな言葉で話してきた。


「あぶ!?」

《お前、俺の言葉分かるのか!?》

まさか話せるとは思わなかった。

っていうか、分かったということはさっきまでの言葉も丸聞こえっていうことだ。


「うん。全く69年間も魂が寝てたとか、どんだけ魂を消費してたの」

横にしてくれて、少しだけ景色が変わった。

上から見下ろされていた金髪子どもと同じ視線になれた。

まぁ、横からなんだけれどね。


「あぶぶ」

《69年間、だと?》

なんだ、その長すぎる時間は。俺の寿命の何回分あるんだ。


「あー、もう喃語で話さなくていいよ。話せるようにしてあげるから」

はぁ、っとため息をつくと金髪碧眼の子供は、俺の頭をなでなでする。

かちっと、何かが接続された音が聞こえた。


『こーれでよし、っと』

頭に急に言葉が聞こえてきた。


「あぶ!?」

《きゅ、急に声が聞こえる!?び、びっくりした》

驚いてしまって、また上向きになってしまった。


それを子供はまた横向きにしてくれた。

なんか、介護されているみたいだ。赤ちゃんなのに……。


『あー、そうか。テレパシーフォンはこんちゃんがいなくなった後に出来たもんね。

びっくりしたり、理屈が分からなくて当然か』


『て、テレパシーフォン?』

おずおずと、頭で考えていたことを伝える。


『スマホ以上の電子機器のことだよ。というか、スマホはもう時代遅れ的な?』

まさかの衝撃な事実だった。


『スマホは時代の先鋭だぞ?』

俺が生きているときはスマホは、進化し続けていたのだ。


『だから、69年間寝てたって言っているでしょう?こんちゃんは』

69年間の長さは、到底では追いつかないようだ。

くそ、時代の最先端をこの目で見てみたかった。


『うぐぐ』

悔しさがテレパシーにまで届いてしまった。


『とりあえず、こんちゃん。あなた、あたしのこと分かる?』

そうだ、この子供なれなれしく俺のことをこんちゃんと呼んで来ていた。

ということは、知り合いなはずだが面影がないせいか分からない。


『……誰だ?』

小さくだったが、尋ねるしかなかった。


『やっぱりね、じゃぁ当ててよ』

その問いに、まぁいつものことかーという顔をする子供。


『え、えぇ……』

子どもの表情に、なんかこんな感じどっかであったなーと思ったが、どこで感じたか分からなかった。


『質問は何個でも受け付けてあげるわ。ただし、黙秘も行使するよ』

黙秘権を使うとか、やはり自分といた世界とは一緒なのだろう。


『えー、じゃ何歳で出会ったんだ』


『二十歳ね。ちなみに、4月くらいかしら』

ふむ、なら大学の後輩ということだろうか。


『得意なことは』


『寝ることかしら。睡眠は大事よ』

大学とかで寝てたやつとかいたか?んー、いっぱいいたな。


『好きな食べ物は』


『食べ物は焼き鳥かな、あぁ一緒に飲むお酒も好きだったわ』

なるほど、親父が好みそうな組み合わせだ。もしかして、こいつ男か?


『焼き鳥屋といえば』


『鳥大名かしら?』

大学の近くにあったチェーン店の焼き鳥屋の名前だ。


『お、俺も行ってた。あそこ、うまいよなー』


『みんなで行ってたもんね』

お、じゃぁやっぱり大学の方か?


『じゃ、俺とお前の関係は?』


『それは黙秘』

なるほど、ここはすぐに答えが分かってしまうのか。


『後輩とか?』


『後輩だったら、タメ口じゃないよ』

それもそうか、なら大学の後輩という可能性は無くなるな。


『俺と遊んだことある?』

だが、それだともう高校の後輩とかもなくなるわけであって。

そして、年下で後輩じゃないとなると、どこで出会ったんだよ。


『そうだね、あるね。いっぱい、あったね』

なるほど、遊ぶような関係だったようだ。しかも、いっぱい遊んでいた、と。


『お前、いくつに死んだ?』


『94歳だね』

結構長寿でした。めっちゃ、人生の先輩みたいじゃん。


『仕事は?』


『うーん、最初はパン屋して、次は受付して、次は老人ホームに、市役所でも働いたなー。

子どもが生まれてからは、小説とか書いてたなー』

なんじゃ、その経歴は。


『……分からん』

訳が分からない。本当に俺と知り合いだったのかよ、こんな奴。


『あー、じゃぁ最大のヒントね。こんちゃんとは約束したよ』


『約束?』

約束、か。なんだか、懐かしいな。


『那須高原、連れてってくれるっていう約束』

その言葉で、分かってしまった。


『……は、ハル?』


『やっぱ、これじゃわかっちゃうか。こんちゃん、正解』

彼女は、にこっと笑った。


なんで、お前がここにいるんだよッ!?


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