表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

プロローグ

 ここは名もない世界だ。

 辺り一面が真っ白で、なに一つ存在しない空間だ。

 でもそれはすべて、偽りかもしれない。

 色という概念も空間という概念もそれはすべて嘘で、存在しないかもしれない。

 もしかしたら真っ白に見えるこの空間も、誰かにとっては真っ黒に見えたり、あるいは真っ赤に見えるかもしれない。

 この世界において、概念すべてが信じられる存在ではない。

 ある意味、無に一番近い存在だろう。

 

 そこにたったひとり、人の形を偽った何者かが姿を現す。

 その人物は生きているのか、死んでいるのかさえ分からない。

 だけど、声を出そうと思えば声を出せた。その声は、どんな音にでもなれる。不可能は存在しない。

 

「ボクは、キミの願いを叶えてあげるよ」

 

 それは人間でいえば、女性の発する声だった。だがその声は、この人物にとっては所詮、仮の声の一つにすぎない。

 その人物は、手から何かを生み出す。

 それは小さな玉のようで、神々しく光輝いていた。

 

「キミはとても綺麗で美しい。例えるならそう、白雪姫のようにね」

 

 うっとりするように、その人物は光輝く玉を見つめた。

 そして玉を顔に近づけ、口づけをする。

 その後に、ぼそりと呟く。

 

「眠りについた白雪姫は、王子様のキスで目を覚ます。キミはまた、目覚めるんだ」

 

 言い終えた後に、小さな玉は次第に輝きを失っていき消滅した。

 だがこれでいい。

 この玉には新しい世界で、新しい運命が待っている。

 本来であれば終わってしまった運命を、ただの気まぐれで再び再開させる。


 一人になった人物は目を閉じ、これからの玉の運命を見る。それはずっと見るのを楽しみに待っていたことだ。いったいなにが待っているのかを、楽しむために。

 

「これは……」

 

 予想外の事態が起こった。

 それはあまりにも予期せぬ事態だった。なんど考え直しても複雑に、たった一つの運命にたどり着いてしまう。

 意外ではあった。けど同時に、この人物はニヤリと笑ってしまった。

 

「キミは凄いね。本当に、白雪姫のようだ。だからボクは、キミを気に入ったんだろうね」

 

 その人物は次に、一人の少年を想像した。高校生で先程の光輝く玉と、とても縁のある人物だ。

 正直この少年には、興味がなかった。

 惜しい存在ではあったが、結局はつまらない存在だった。

 だがこうなると、考える必要があった。

 そしてしばらく考えた後、その人物は溜め息をつく。

 

「はぁ……まあ仕方ないね。いいさ、キミにチャンスをあげるよ。次は彼女を救える可能性がある、そのチャンスをね」

 

 不満はあった。けれど、また新しい楽しみができたと考える。この運命だけは、しばらく見ないでいい。楽しみは、後でとっておく。

 

「さぁ、次の物語をはじめよう。きっと次の物語は、もっと面白いはずさ」

 

 またニヤリと笑った後、その人物は姿を消した。

 次にここに来るのは、地球で言う数年後であろう。

 それまできっと、またどこかで姿を変え傍観している事だろう。

 

 この物語は、ここで終わればバッドエンドで悲しい物語でしかない。

 だが、本当の物語はまだ、はじまってはいない。

To be continued……?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ