要人は信用がなかった
週一回のペースは守りたい。
魔王城に戻ると、シュラン達も戻っておりちょうどお昼時だったので全員で食堂でお昼を食べることにした。
ちなみに今日はカレーだった。
昼ご飯を食べ終わり食後のお茶を飲みながらくつろいでいると、シュランが口を開く。
「そういえば要人、入学に必要なもの本当に足りないものないか?」
「大丈夫だよ、二人で確認したじゃん……。」
「いや、いくら確認したといっても不安なんだよ。初めて親元離れて寮で暮らすんだから親は心配なんだよ。」
要人が四月から通う国立魔法剣士学院は全寮制で学生は寮に入ることが義務付けられている。
当然要人は今まで一人暮らししたことは一度もないのでシュランは心配しているのだが、
「大丈夫だよ、料理も洗濯も一人でできるし。お金の管理も親父に代わってやってたんだから。」
「う、それを言われると反論できんが……。」
シュランは要人の父親として暮らしてきたが、魔王軍の仕事が忙しいときは要人が自分で買い物行ったり、料理したり洗濯することが多かった。
あとシュランがいるときでもシュランは家事があまり得意ではなかったため、中学に上がってから家事は主に要人がやっていたのだった。
「いや、でも要人に関して心配することはほかにあるぞい?」
要人は隣に目をやる。
隣に座っているのは魔王軍屈指の魔法の使い手カシュアであった。
年寄りで魔王軍最高齢らしいのだが、本人も長く生きすぎて年齢を数えるのをやめてしまったらしい。
少なくとも三千年は生きてるらしいが、見た目は60くらいの健康的なじいちゃんにしか見えない。
こんな見た目でも要人に魔法を教えてくれた人物で、幼少期からロギアスの剣術を習うのと一緒にカシュアから魔法を習っていた。
ようは要人の魔法の師匠である。
「俺の他の問題って?」
要人は自分に問題があるといわれたので聞き返す。
「いや、要人が入学早々他の学生のプライドを打ち砕いちゃうとか、完膚なきまでに叩きのめして再起不能にしちゃうとか……あげたらきりがないのう。」
カシュアがいうと他の面々もうんうんと頷いた。
「いや、そんなことしないから。同じ学生だぜ?そんなに差はないと思うけど?」
「「「ないない!」」」
みんなから全否定された。
「そうか……よく考えたら要人は同年代の奴と勝負したこととかはないのか……。」
シュランは思い出したように呟く。
「いいか要人?お前は同年代どころか世界でも五本の指に入る実力者と過言ではないんじゃ。お前さんは
それくらい強くなっとるんだ。だからよほどの相手じゃない限り2割以上の力は出しちゃイカンぞ。」
「心配しすぎでしょ……俺は破壊神じゃないんだから。」
そういうと3人は、
「破壊神と遜色ないがの。」
「そうですね。」
「むしろ破壊神が可愛く見えるんじゃないかのう?」
湯のみでお茶を飲みながら全員に言われた。
「否定しろよ。」
俺が突っ込むと三人は顔を見合わせて、
「いや、たぶん要人の方が強いぞ?」
「今の邪神は昔に比べると弱いからのぅ。」
「俺たちでも善戦できるレベルですしね。」
「え、戦ったことあるの?」
「直接戦ったことはないが、邪神の戦いを見たことがあってな。」
だが、とシュランは言葉を続ける。
「これは俺やロギアス、カシュアがた高い実力をもっていてお前が俺たちをはるかに超える実力を持っ
ているからできる話であって、普通の人間は邪神に挑もうものならその姿を見る前に消されるレベルなんだから勘違いするなよ。」
「自分の息子をそんなレベルの化け物に育てんなよアンタ……」
今から高校生活が不安になる要人だった。
そんなこんなで入学までの約一か月を魔王軍の領地でのんびり過ごした要人は入学式当日を迎えたのである。