1・父さんは魔王ですけど何にも問題ありません
「ふあ~あ。」
わずかながら咲き始めた桜がちらほらある道を歩きながら俺、神菜木要人は大きなあくびをした。
ついさっき、通っていた中学校の卒業式が終わり、その帰り道だ。
卒業式といっても、要人はあまり友達がいなかったため式が終わった後の交流もほどほどにして帰路についたのである。
この春からは高校生、しかも国立の魔法剣士学院に進学が決まっている。
というのも要人の父親の勧めで、
「お前の役に立つ経験になるだろう。」
こう言われたので要人自身も行きたい高校も特になかったので進学を決めたのである。
そうこうしているうちに家につき要人は自宅の扉を開けた。
「ただいま~。」
「おかえり。」
要人を迎えたのは父親であるシュランだった。
だが親子と呼ぶにはこの二人は全く似てなかった。
要人は普通の人間の容姿だが、シュランは魔族の特徴である角が頭部に二本生えていたのだ。
シュランは異世界で魔王と呼ばれ、今も魔王軍を治める王なのだが、わけあって要人父親を引き受けているのである。
「どうだった、卒業式は?」
「んー……特にどうってこともなかったな、てか見に来ればよかったじゃん。」
「魔族のワシがいったら目立つだろう、息子に変に苦労させたくないからな。」
シュランは少し遠慮がちに笑う。
だが要人はそれを否定した。
「別に苦労なんてしてないよ、むしろ感謝してる。あの日俺を拾って育ててくれたのは親父だろ、そのおかげで俺は今ここにいる。親父が魔王であろうと俺の自慢の父親だよ。」
そういって要人はシュランに笑顔を返す。
するとシュランは目にほんの少し涙を滲ませ、
「そうか、それならワシも本望じゃい。」
そういってすぐに涙をふくと、完全な魔王の姿に戻り
「ワシは一旦仕事あるから魔界戻るがどうする?」
「うーん……じゃあついていくかな、高校へ行く準備とかもほとんど終わってすることないし。」
「そうか、じゃあ行くとするか。」
シュランは手をかざし魔法陣を展開し、シュランと要人はその魔法陣の中に入っていった。
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