第九話 ステータス
2017/06/15 サブタイトル追加&本文を細かく訂正
2017/07/14 本文を細かく訂正
ここは薄暗い森の中。
俺達はレベルアップの為に森に入り、モンスター狩りを行っている。
レベル0の初心者をそんな場所に連れて来て大丈夫なのかと思うが、何も問題はない。
何しろ護衛が国内最強の男なのだ。
父さんは当たり前のようにモンスターの気配を感じ取り、先回りしてその動きを封じている。
俺達は父さんが動きを止めたモンスターを仕留めているだけだ。
俗に言う『接待プレイ』である。
危険なんて存在のしようがない。
そして、また1体のモンスターが俺のナイフにより魔石を抉り出されて消滅した。
それから経験値が俺達の体に入り込み、俺のレベルがまた1つ上がった。
《経験値が一定値に達しました。レベルが6に上がります。全ステータス値が1上昇しました》
《レベルを上げるスキルを選択して下さい。エラー、スキルが1つしか存在しない為、スキル『一般人』のレベルが1上がります》
《スキル『一般人』がレベル6になりました。スキルの効果により全ステータス値が1上昇しました》
レベルアップを果たしたことにより俺のステータスが上昇し、同時にスキルのレベルも上がった。
全ての人間のレベルは、スキル授与の儀式を終えた段階ではレベル0。
そしてレベル0のステータスの平均値は基本的に10である。
レベルが1つ上がると、基本ステータスは全て1上昇する。
そしてレベルが1つ上がる毎に持っているスキルのレベルを1つ上げることが出来る。
これがこの世界のルールだ。
俺以外の3人も俺と同じレベルまで上がっている。
ロゼ姉はスキルの影響でステータスの上昇は見込めないが、他の2人は基本ステータスの上昇値は俺と同じだ。
しかし彼女達は複数のスキルを持っている。
だから俺とは違い、レベルが上がる度にどのスキルのレベルを上げるのかを考え、選択している。
スキルの効果は千差万別だ。
俺の持つ『一般人』の様に、スキルのレベルを上げる度に効果が出るものもあれば、ロゼ姉の『成長停止』の様に持っているだけで効果を発揮するスキルも有る。
また、一定のレベルまで上げないと効果が発動しないスキルも存在するため、どのスキルから上げるべきか悩む所だ。
ロゼ姉は『植物使い』のスキルを上げている。
これはステータスの上昇以外にも植物を思い通りに動かせるという特殊能力のあるスキルであり、レベルを上げる毎に扱える植物の種類が増えていく。
ここは森。
植物は山のように存在している。
流石は異世界というか、地球には存在しないであろう植物がてんこ盛りだ。
中には戦闘に役立つ植物や、日常生活で役立つ植物もある。
『植物使い』は『当たりスキル』なのである。
『成長停止』には体の成長とステータスの成長を止める効果、そしてステータス上昇系スキルの効果を打ち消す能力がある。
しかし逆に言えばそれだけであり、スキルに付随する特殊能力までは妨げる事はないのだ。
よってロゼ姉は『成長停止』の効果が及ばない『植物使い』のレベルを優先して上げることにしたのである。
ちなみに彼女が持つもう1つのスキル『王族』はレベルを最高値の10まで上げて初めて発動するタイプのスキルだ。
その能力は何と『ステータスを全て2倍にする』という脅威のスキルである。
だが、ロゼ姉の場合『成長停止』が存在する為、『王族』の発動条件を満たしてもステータスを上げることは出来ない。
これがもし普通のスキル構成だった場合恐ろしい効果を発揮したのだが残念である。
よって『王族』を上げるのは『植物使い』の次としているそうである。
大嫌いな『成長停止』は最後にするのだそうだ。
ちなみにステータスは日々の訓練や筋トレでも上げることは可能である。
可能では有るがそれは本当に微々たるものだ。
力や体力がいきなり2倍、3倍になったりすることは無い。
だから地道にコツコツ訓練を続けていても数年で2~3位上がれば良い方なのである。
そしてその数値は少しの時間レベル上げをすれば辿り着けるし、ステータス上昇系のスキルを持っていれば一瞬で到達可能だ。
だからこの世界の人間でコツコツ訓練をしている者は殆ど見かけない。
そんな事をするよりもレベルを上げたほうが効果的だからだ。
だが俺達は昔から訓練を受けて来た。
その為に基本的なステータスは普通の人達よりも高い。
これはステータスを上げることよりも、戦闘の技術を会得するためと言った側面が強い。
ステータスで上回っていても、技術が劣っていれば遅れを取ることも有るからだ。
ステータスの数値が上回っているに越したことは無いが、それだけで勝負は決まらない。
この世界の常識として、レベルが2倍差位までなら工夫すれば勝てると言われているのはここに由来している。
「ステータスオープン」
目の前に半透明のホログラムのような画面が浮き出てくる。
これがステータス画面。
まさにゲームのようだが、この世界の住民ならば誰でも使える代物だ。
ここには俺のステータスが記されている。
ちなみにこれは他人にも見せることが可能だ。
町の出入り等はこれを見せて、スキルの数を調べたりするのである。
ちなみに見せたくない箇所は隠すことも出来る。
予想以上に便利な代物なのだ。
ちなみに俺のステータスは今こんな感じだ。
『名前:ナイト=ロックウェル
LV0⇒LV6
HP:16⇒28 28/28
MP:10⇒22 22/22
力:14⇒26
頑強:15⇒27
素早さ:14⇒26
心力:13⇒25
運:10⇒22
所有スキル:一般人LV6』
以上だ。
シンプルなステータスである。
元々の数値からレベルアップとスキル『一般人』の恩恵で全て12ずつ上がっている。
HP、力、頑強、素早さ、心力の値が高いのは訓練の賜物である。
物心付いてから訓練してきたにしては頼りない上昇率だが、誰がやってもこんなものだそうだ。
HPとMPはゲームでおなじみの体力と魔力の値だ。
怪我をしたり、病気になったりすろと、HPの値は下がり、0になった時は死亡する。
HPは量も問題だが、重要なのは割合だと言われている。
HPが8割まで下がると軽症、5割を下回ると重症、2割を下回ると行動不能になると言われている。
よってこの世界では基本的に満タン~9割位で活動していることが多い。
HP1で活動している人物など何処にも居ないのだ。
MPは魔法や特殊能力を使う際に使用する力である。
MPは魔法や特殊能力が使えない限りレベルアップとステータス系のスキルでしか伸ばすことが出来ない。
そしてどちらも10歳のスキル授与の儀式を終えない限り使うことは出来ないので、スタートは皆同じ数値だ。
最も俺は魔法系スキルも、特殊能力が発動するスキルも、取れなかったので魔力に関しては余り関係がない。
力はそのまま力の強さを、頑強は体の頑丈さを、素早さは動きの速さを表し、心力は心の強さを、そして運は運の良さを表している。
この中で異世界らしい物と言えばまずは『心力』か。
心の力と書いて心力であり、魔法の威力や魔法攻撃からの抵抗力に直結する数値だ。
高ければ高いほど、強力な魔法攻撃を使え、相手からの魔法攻撃に対して抵抗力を発揮する。
俺は魔法は使えないので、要するに防御用だ。
そして『運』、これはMPや心力と並んで異世界らしさが出ているステータスである。
生前は自分の運の良さなんて分かる訳が無かったのだが、この世界では運の良さを数字として見ることが出来る。
とは言え飛び抜けて高くなければ余り関係のないスキルでも有る。
何しろ周囲の人達も同じ様に『運』のステータスを持っているのだ。
同じくらいの運の良さの人が周囲にいれば、結局幸運が訪れる度合いは変わったりしないのである。
ちなみにゲームでよく見た『器用さ』は存在しない。
父さんに聞いてみたら、「技術を習得しやすくなるスキルは存在するが、スキルの上に胡座をかいていては駄目だ」と説明された。
それらのスキルはあくまで『習得しやすくなる』だけであり、習得するには訓練が必要なのだ。
『器用さ』が高くて、技術チートとかは出来ないらしい。
他のチートがある訳ではないのだが。
俺は転生者であるが、ステータスを見てもその事はバレない。
これは正直助かった。
もしステータスに『精神年齢』とか『記憶力』とか『知識量』とかが記載されていたらヤバイ事になっていた筈だ。
ちなみにロゼ姉のステータスはこんな感じだ。
『名前:ロゼッタ=A=タートル
LV0⇒LV6
(スキル成長停止によりステータス上昇効果が阻害されています)
HP:12/12
MP:10/10
力:12
頑強:13
素早さ:13
心力:18
運:10
所有スキル:王族、植物使いLV6、成長停止
特殊能力:植物操作、成長停止』
レベルアップにより基礎ステータスの上昇も、スキル『植物使い』のステータス上昇効果も存在しない、ただただ基礎ステータスだけの数値。
スキル『成長停止』の恐ろしさが実感できるステータス内容である。
一部ステータスが増えているのは、スキル獲得までに鍛えていた分に『成長停止』が作用しなかった為である。
流石は王族の女性と言うべきか、心力がかなり高い。
幼い頃から訓練をして来たことが伺えるステータスだ。
王女ともなれば敵はモンスターよりも人間である事の方が多い。
残念ながらこの世界には精神系の魔法や特殊能力も存在している。
少しでも抵抗力を上げるために集中して心力の訓練をして来たのであろう。
そして残りの2人の内、エルのステータスはこうなっている。
『名前:エリザベータ=エニシュ
LV0⇒LV6
HP:10⇒36 36/36
MP:10⇒216 152/216
力:10⇒36
頑強:10⇒36
素早さ:12⇒38
心力:15⇒221
運:10⇒36
所有スキル:魔法使いLV2、魔法の心得、地魔法LV1、闇魔法LV1、高速詠唱LV1、魔力増幅、心力増強、魔道具作成LV1
特殊能力:基礎魔法』
8つのスキルを持っているという事が、どういう事なのか一発で分かる内容である。
全てのステータスが既に俺を超えており、MPと心力に関しては桁が違う。
これはエルが持っているステータス上昇系スキル『魔法使い』が俺の『一般人』とは別格の性能を持っていることの動かぬ証拠である。
以下がエルの持つスキルの効果である。
・魔法使い(レベルを上げる毎にHP、力、頑強、素早さ、運が10増加。MP、心力は100増加する)
・魔法の心得(魔法を習得することが可能となる。レベル0で発動)
・地魔法(レベルを上げる毎に地属性魔法の威力が1%増加する)
・闇魔法(レベルを上げる毎に闇属性魔法の威力が1%増加する)
・高速詠唱(レベルを上げる毎に詠唱速度が1%増加する)
・魔力増幅(レベルを上げる毎にMPの最大値が10増える)
・心力増強(レベルを上げる毎に心力の値が10増える)
・魔道具作成(魔道具作成のレシピが手に入る。LVを上げる毎に1つのレシピを得る事が出来る)
正に魔法特化のスキル構成である。
こちらの世界の普通の人々が持っているスキル数は大体3~6程度であり、スキル数8は父さんと並んで最高クラスの所持数だ。
しかもハズレスキルも無く、同一系統能力で締められているので分かりやすい。
流石は宮廷魔道士長の娘と言った所か。
勇者のパーティーにおいて魔法使いとして活躍することを約束された様なスキル構成だ。
ちなみにこの中で最も重要なスキルは『魔法の心得』である。
これは多くの魔法使いが持っているスキルであり、これが無いとどれだけ勉強しても魔法を習得することは出来ない。
ステータスを見れば分かる通り、この世界の魔法はスキルを基にした特殊能力扱いだ。
つまりこの世界では魔法を使うことが出来るスキルを持っていない限り、魔法を使うことは出来ないのである。
俺もロゼも幼い頃から魔法の勉強はやって来た。
やって来たが、この『魔法の心得』を手に入れられなかったが為に魔法を使うことは出来ない。
しかしエルは『魔法の心得』を手に入れた。
だから今日が初陣にも関わらず、特殊能力の欄に基礎魔法と載っているのである。
なお、攻撃魔法は使うことが出来ない。
何故ならまだ教えて貰っていないからだ。
魔法系のスキルを覚えたばかりの子供が、攻撃魔法の制御に失敗して大怪我をしたり死亡したりする事例は多数報告されている。
よってまずは簡単な魔法を覚えて、段々と難しい魔法を学んでいくのがこの世界の魔法教育の王道なのである。
「ライト! ダークアイズ! グラウンドダウン! クール! カップウォーター!」
そんな訳で先程からエルが使っている魔法は明かり、目くらまし、落とし穴、冷気を出す、コップ一杯の水を出すといった戦闘にはとても使えない物ばかりだ。
それでもエルは楽しそうに魔法を使い続けている。
それを見ると俺も「魔法を使いたかったなぁ」とか考えてしまうが、無い物は仕方がない。
所詮人は与えられたカードで勝負するしかないのである。
最後は勇者であるアナのステータスとスキルの内容だ。
『名前:ダイアナ
LV0⇒LV6
HP:14⇒2060 2060/2060
MP:10⇒2036 2036/2036
力:13⇒2059
頑強:14⇒2060
素早さ:16⇒2122
心力:15⇒2041
運:10⇒2056
所有スキル:巫女、勇者LV2、暗殺の天才、闇の加護、無限収納、闇属性魔法、忍者LV2、影使いLV2、モンスター使役、料理人
特殊能力:アイテムボックス無限、初級暗殺術、中級暗殺術』
・巫女(MP、心力の値を2倍にする。レベル10で発動)
・勇者(レベルを上げる毎に全ステータス1000上昇)
・暗殺の天才(あらゆる暗殺系技能を簡単に習得する事が出来る。レベル0で発動)
・闇の加護(闇属性攻撃を無効化・闇属性攻撃力2倍。レベル0で発動)
・無限収納(アイテムボックス無限。レベル0で発動)
・闇属性魔法(闇属性魔法を習得可能。闇属性魔法の威力が100%増加。
ただし他属性の魔法を習得できなくなる。レベル0で発動)
・忍者(レベルを上げる毎にHP、力、頑強、運が20増加、素早さが50増加。MP、心力が10増加する)
・影使い(自らの影を自在に操ることが出来る。レベルを上げると影の長さが伸び、精密な動作が可能となる)
・モンスター使役(モンスターを使役することが出来る。レベルを上げると使役数が増える)
・料理人(レベルを上げる毎に、料理のレシピを1つ手に入れる事が出来る)
ステータスの上昇値がとんでもない事になっている。
この世界で『勇者』が特別だと言われている理由が一目で分かる内容だ。
『勇者』というぶっ壊れスキルに加えて『忍者』という2つ目のステータス増加系スキルまで持っている。
更に重要なのは『レベルを上げる必要のないスキル』が4つもある事だ。
これにより他のスキルを優先的にレベルアップすることが出来、レベル60になれば、全てのスキルの効果を完璧に使いこなすことが出来るようになるのだ。
唯一おかしな所といえば『料理人』のスキルであるが、これもまた重要なスキルであると考えられている。
この世界、保存食の数は少ないし、食料の備蓄に些か心許無い所がある。
そんな中で『料理人』が1人パーティーに居れば、生存率が格段に上がるのだ。
まぁ彼女がこれを取ったのは実は俺のせいである。
昔、闇の神殿で戦闘訓練の一環として、まだ殺せないモンスターの代わりに家畜を殺していた時期があり、殺しが嫌いなアナが弱音を漏らした時があった。
「動物を殺すのは可哀想だ」と言うのである。
それを聞いた俺は「あいつらはお肉になって俺達の腹を満たすから大丈夫だ。そんなに嫌なら、殺した家畜をちゃんと有効活用すれば良いんだよ」と言ったのだ。
その後アナは『有効活用』を『料理』と置き換えて納得し、事ある毎に料理を作ってはそれを俺達に振る舞うようになったのだ。
最初の頃はまともな料理ではなかったが、最近では腕を上げ、それなりの物を作れるようになって来ている。
だからアナのスキル授与の儀式の際に『料理人』を取った時も騒ぎにはならなかった。
そもそも『勇者はハズレスキルを取ることは無い』とされているため、他の『料理人』スキル持ち達が再評価される結果に繋がったりしたのだ。
それと『スキルの中には1つくらい戦闘系とは別のスキルがあった方が良い』という風潮も関係していると思う。
ただでさえ強い勇者がガチガチの戦闘系のスキル構成だと、回りからビビられて避けられてしまうという事態になることもある。
人間、1つ位趣味を持っていた方が取っ付き易いという事だろう。
ロックにしろアナにしろ勇者と呼ばれている者達は『勇者』のスキルが強力過ぎて、正直お供が必要なのかという意見もある。
しかし彼らはいくら強くても人間だ。
そして『勇者』となればモンスターも魔族も、そして同じ人間ですら必要以上に群がって来るものだ。
そんな時、ステータスがいくら優れていてもどうにもならないことなど幾らでもある。
そんな時はお供の出番だ。
勇者のパーティー制度には、勇者1人に問題を押し付けず、共に問題を解決させようという考えが元になっているのだ。
俺もロゼも脱落したが、エルにはどうか頑張ってアナを支えて貰いたいと無責任にもそんな事を考えてしまっていた。
そして気がつけば、いつの間にか太陽が中天に差し掛かっている。
朝からモンスター退治をし続けていたが、腹が減っては戦は出来ぬ。
そんな訳で昼食の時間となったのであった。