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勇者の隣の一般人  作者: 髭付きだるま
第三章 冒険編
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第七十四話 ダンジョン探索の終わり

 更新チェック終了後、俺達は宝物庫の中の財宝をかき集め、大きく重い物から次々と俺のアイテムボックスの中へと放り込んでいった。


 ダンジョンに入る際には食料や水、そして医薬品で満載だった俺のアイテムボックスの中身は、9日間のダンジョンアタックの間に大分空きが出来ていたので、かなりの数の財宝を回収することが出来たのだ。

 アイテムボックス内に入り切らない分は、各々が身に付けて持ち帰る。

 ロックとライが初めに装備していた、アイテムボックス能力を持つ魔法のカバンがここに来てまさかの活躍をした時は思わず笑ってしまった。

 一体どれだけの量の財宝が宝物庫の中に溜まっていたのであろうか。


 俺達は何だかんだで宝物庫の中の財宝を全て持ち出すことに成功した。

 しかし普通の探索者ではこうは行かないという。


 何しろ重さも大きさも無視して物を運ぶことが出来るアイテムボックス能力を持つ探索者の数は極めて少なく、持っていたとしてもそのアイテムボックの容量はこれまでは多くても100が限度だったのだ。

 アナが持つ無限収納は勿論のこと、俺のような1000を超える容量を持つアイテムボックス能力が無ければ、持ち出せる財宝の数にはどうしたって限界が存在する。

 だから普通の探索者達はせっかくダンジョンを攻略し、宝物庫へと到達したとしても、数ある財宝の中から厳選した物だけを選び、地上へと持ち帰っていたのだという。

 ダンジョンコアを使って地上に帰る時に持って行ける荷物の数は、自らの力で持ち運べる物だけに限られているのだそうで、持ち運べない財宝は泣く泣く宝物庫の中に置いていくハメになるのだそうだ。


 そしてダンジョンクリアをした際に確認したかった事柄である『勇者のダンジョンを攻略するとスキルを授かる』という話はミスターであっても知らない情報であった。

 そして実際に勇者であるロックがダンジョンを攻略してもスキルを授かるイベントは発生しなかった。

 この事から考えるに、どうやらダンジョンを攻略してスキルを授かれるのは、勇者のダンジョン限定なのではないかという予測が立ったのだった。


 朱雀の国の首都バードにあるという『勇者のダンジョン』

 現在人類最強と言われている光の勇者であっても、『攻略は不可能』と宣言したというそのダンジョンを俺達が攻略できる可能性は限りなく低い。

 そもそも勇者が他国のダンジョンを探索する際には色々と厄介な制約が付くという話を聞いているので、俺達はこの件に関してはすっぱりと諦めることにしたのであった。



 そして最早この場でやることも無くなった俺達は、いよいよダンジョンから地上へと戻る事になった。

 ダンジョンコアに手を置き、帰還を願うと、ダンジョンコアの表面が薄っすらと光り輝き、転送先の場所の選択が開始される。


 そこにはこの罠のダンジョンを始めとした、今まで潜ってきたヤマモリの町近郊のダンジョンに加え、今まで訪れてきた町や村、そして何故か行ったこともない白虎の国の城や闘技場に加えて聞いたこともない地名も沢山表示されていた。

 

 ミスター曰く、ダンジョンコアを使ってダンジョンから脱出する際の転送先はダンジョンをクリアしたメンバーが知っている場所を指定できるのだという。

 俺達の中ではハヤテとデンデが白虎の国の城や闘技場を知っている。

 聞いたことのない地名は恐らく老師かミスターが知る場所なのだろう。


 なお、転送先は例外なく選択した場所の入口になるのだそうだ。

 俺達はヤマモリの町を選択し、ダンジョンコアに帰還を願う。

 すると一瞬の浮遊感の後、突然周囲の景色が変化した。

 いや周囲が変化したのではなく、俺達が瞬間移動したのだ。


 青い空と白い雲、

 頬を撫でる風と汗ばむほどの陽気、

 そしてギラギラと輝く太陽と驚いている門番の顔。


 俺達は無事にダンジョンを脱出し、ヤマモリの町へと帰還を果たしたのであった。


 驚く門番に事情を説明し、俺達はヤマモリの町へと入って行く。

 そしてその足でヤマモリの町にある探索者協会の建物へと直行し、ダンジョンクリアの報告をしてから、宝物庫から回収した財宝の内訳を報告し、財宝の鑑定をお願いした。

 一応目利きでも有るミスターに大凡の値段は聞いていたのだが、専門家の意見も聞いておきたかったのだ。

 勇者がダンジョンをクリアし、山程の財宝を持ち帰ったというニュースはあっという間に探索者協会の中を掛け巡り、建物の中に常駐していた職員が総出で取り組んでくれはしたが、余りにも量が多かったので鑑定するだけでも数日は掛かると説明されてしまった。

 俺達は回収した財宝の中でもすぐに使えるマジックアイテムを優先的に鑑定してもらい、それだけは先に持ち出して、残りは探索者協会の鑑定人達に預け、今日の所は退散することにした。


 そして探索者協会の受付の前で、この9日間お世話になったミスター・グラモとお別れする事となったのだった。


 「ミスター、今日まで本当にありがとうございました!」

 「「ありがとうございました!」」


 ロックの号令で俺達は全員揃ってミスターへと頭を下げる。

 彼の指導がなければ、あの高難易度ダンジョンの攻略は俺達には出来なかっただろう。

 そしてあのダンジョンを攻略したという自信は、間違いなく俺達の財産になったのだ。


 俺達はミスターに感謝を捧げ、回収した財宝の分配の水増しを提案したが、ミスターはそれを断った。

 『一度決めた取り分を変更すると、後々問題になるから止めた方が良い』と注意までされてしまったのだった。


 結局ミスターには、鑑定が終わった後、最初の取り決め通り、宝物庫から回収した財宝の1/8が渡される事が決定した。

 俺達は総勢8人で潜ったから、一人の取り分は1/8。

 最初に取り決めた内容通りではあったが、ミスターの取り分をもっと多めにしておくべきであった。


 そう思ったのであるが、探索者協会の職員曰く、この量の1/8であれば並の探索者が数回ダンジョンをクリアをして手に入れる財宝の総額に匹敵する程の量であるから気に病むことは無いと説明された。

 まぁそうか、アイテムボックス能力が無ければ大きいものは持ち帰れないし、パーティーが総出で持ち運んだ所で持って帰ることが出来る財宝の数は知れているのだ。


 どうやら俺のアイテムボックス能力の恩恵は凄まじい物があったようである。

 俺達は探索者協会の職員に鑑定が終わったら役所へと連絡をしてほしいとお願いし、探索者協会を出て、宿泊している役所へと向かって行った。



 俺達がダンジョンから帰還した時にはまだ高かった日も、ダンジョンクリアの報告やら財宝の鑑定やらをしている間に大分沈んで周囲を赤く照らしている。

 俺達は探索者協会を出た後、夕暮れ迫るヤマモリの町の中を歩いて役所へと向かっていた。


 俺達がダンジョンに潜っている間に、随分と復興も進んだようだ。

 取り敢えずメインストリートを歩いている限りは、少し前までこの町が荒れ果てていたとは到底思えない。

 ロックの建てた石造りの建物には多くの商人が品物を並べ、夕餉の買い出しに皆忙しく動き回っている。

 町の人々の顔には、町を開放した当初には無かった、普通の暮らしを満喫できる喜びが宿っていた。


 俺達は道の途中の屋台で串焼きを購入し、食べながら役所を目指している。

 久し振りのまともな食事だ。

 ダンジョンアタックも確かに良いが、どうしたって食事が保存食ばかりになってしまい味気ない。

 屋台で売っている謎肉の串焼きであっても、今の俺達の舌には十分であった。



 そして役所に辿り着くと、そこには大勢の騎士がたむろしていた。

 彼らの服装には見覚えがあり、ライとロックは「あっ」と声を上げている。

 彼らは二人も入隊していた、玄武の国の騎士団員達であったのだ。

 恐らく、俺達がダンジョンに潜っている間にタートルから派遣された本隊が到着したのであろう。


 見知った顔があったのだろう、ライとロックが彼らに近づいていった。

 しかしその前に俺達に気づいた騎士団員達が慌てて、役所の中へと走り去って行く。

 何だと思っていると、一際立派な鎧を着た一人の騎士が大慌てで役所の中から現れ、ロックの前にひざまずいたのだった。


 「お久し振りですロック王子。お元気そうで何よりでございます」

 「お前ヨンか!? 驚いたな、父上は親衛隊を派遣して来たのか!」


 俺も驚いて彼の顔を見た。

 彼の名前はヨン。

 騎士団の中でもエリート集団と言われる親衛隊の内の一人である。

 親衛隊の主な仕事は国王陛下を含めた王族の護衛であるのだが、緊急時にはこうして各地に派遣され、国王の代行として指揮を取ることもあるのだ。


 その中でもこのヨンは俺達とは縁のある親衛隊員であった。

 何しろ彼は普段、謁見の間の入口を護る門番の仕事をしているのである。


 俺達からすれば、たまに謁見の間の盗み見を見逃してくれる話の分かる兄ちゃんという認識であるのだが、それでも彼はこの国の騎士団の中でもトップエリートなのだ。

 その彼が派遣されて来ているとは。

 盗賊団の襲撃とハヤテとデンデの保護、どちらを重要視したのかは知らないが、国も本腰を入れたということか。

 俺はそう思っていたし、ロックもライも同じ事を思っていただろう。


 しかし彼が慌てていたのは全く別の理由であった。

 彼はひざまずいたまま、ロックに要件を簡潔に伝えたのであった。



 「土の勇者であるロック王子、並びにその同行者達に緊急招集が掛かりましたのでお知らせ致します!」

 「緊急招集!? 一体何が起きたのだ?」


 緊急招集と聞いた俺達の間に緊張が走る。

 勇者にはたまに国から緊急招集が掛かることがあるという。

 それは国が『この案件は勇者の力を借りなければ解決出来ない』と判断した時のみ発せられる特別なものだ。

 旅に出て幾らも経っていない俺達にとって、これは初めての緊急招集だ。

 俺もライも背筋を伸ばしてヨンの報告を聴くことにした。


 「闇の勇者であるダイアナ様一行が、我が国と朱雀の国との国境に流れる大河の中の小島で、魔王の軍勢を確認!

  その姿形から、朱雀の国が取り逃がした火の魔王の軍勢であることが確認されました!

  我が国と朱雀の国の上層部は活動中の全勇者を招集しての奇襲作戦を立案!

  現在、光の勇者と氷の勇者にも連絡が行っており、全勇者が集結中でございます!

  土の勇者であらせられますロック王子とその仲間達も大至急の移動をお願い申し上げます!」


 久し振りに会ったヨンが運んで来たのは、まさかの魔王軍との決戦への招待状であった。


 玄武の国と朱雀の国、二カ国が共同で立案した、活動中の勇者を集結させての魔王軍への奇襲作戦。

 旅を始めて2ヶ月も経っていない新米勇者パーティーの俺達は、まさかの魔王軍との決戦に参加することになるのであった。

第三章終了

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