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勇者の隣の一般人  作者: 髭付きだるま
第三章 冒険編
74/173

第七十二話 罠のダンジョン3

2017/09/05

更新チェッカーの能力を『スキルの更新先が分かる』から『スキルの更新の可否が分かる』に変更しました。

 俺達は現在、ヤマモリの町近郊に集中しているダンジョンの中でも最難関と呼ばれるダンジョンの一つ、罠のダンジョンの最下層の最奥の部屋。

 通称宝物庫の中に入っていた。


 多くの探索者達がダンジョンへと挑む理由。

 それはこのダンジョン最奥の部屋、宝物庫へと到達するためである。

 もっと言うならば、その部屋に山と積まれている財宝を持ち帰るためである。


 そして最難関ダンジョンの一つとされるこのダンジョンは、潜っている人数も少なければ、ここまで到達できる人数も少ない。

 最後に探索者達がここを攻略したのは五年も前だという。

 それから今日まで、誰一人ここまで到達は出来なかったのだ。


 そして時間が経てば経つほど、財宝部屋の宝の量は増えていくのだという。

 財宝部屋の真ん中には巨大なダンジョンコアが鎮座している。

 その奥には、多数の金銀財宝と、山と積まれた宝箱が転がっていた。

 そんな目に眩しい部屋の片隅で、俺は一心不乱に宝箱の罠の解除に取り組んでいたのであった。



 「こうして……こうやって……こうすれば……良し出来た! 開いたぞ!」

 「お見事ですな。では次です」

 「いや、少し休ませてくださいよ! 一体どれだけやれば良いんですか!?」

 「勿論全部に決まっておりますな。

  宝箱に設置された罠を解除する腕を磨く折角の機会なのです。

  無駄にする理由はありますまい?」

 「でもせっかく罠を解除しても、大した物は入っていないじゃないですか!」

 「難易度の低い宝箱から開けて貰っていますからな。

  中身が残念なのは仕方がありません。

  初級は後4個、それが終わったら一度休憩にして中級に挑戦ですな」

 「難易度とかあったんですか?」

 「勿論ですとも。ダンジョンの罠にすらあったのです。

  宝箱にもあって当然ではないですか」

 「ぐぐぐ……でも何で俺だけ!」

 「他の皆さんは罠の解除ではなく、罠を見破ることを修行の目的にしていましたからな。ここまで到達してしまえば、皆さんの修行は終了なのですな」

 「だから後は、俺の罠解除の技術を上げるだけだと?」

 「そういう事ですな。それに皆さんは別にやることがありますからなぁ」


 そう言ってミスターは後ろを振り返る。

 現在俺とミスターと老師だけが部屋の隅で宝箱の罠の解除に挑戦しており、他のメンバーは部屋の中央で戦いに没頭していた。


 戦っている相手は宝物庫の宝箱の中に巣食っていたミミックやら、壁や床に擬態していたモンスターやらである。

 安全な場所だと思っていた宝物庫の中にもしっかり敵が配置されているとか、流石は罠のダンジョンと言った所か。

 ちなみに老師は俺とミスターの護衛の為にこちらに居る。

 罠の解除をしている最中は、どうしてもそちらに集中してしまうから、敵の接近に対応できないことがある。

 その為に常に最低一人は護衛として付いて貰っているのだ。

 この部屋に入ってからは、ロックとライと老師が順番に護衛に付き、俺とミスターを敵から守ってくれていた。


 それからしばらくして、初級・中級の宝箱の罠は全て解除し、残っているのは3つだけあった上級の罠のある宝箱だけとなった。

 その頃には部屋に巣食っていたモンスターも全て仕留め終わり、俺達は遠巻きに解除の様子を眺めている。

 解除しているのはミスターだ。

 3つの内最初の一つだけは彼が手本を見せてくれることになったのである。


 ダンジョンを深く潜れば潜るほど、宝箱の中身の質が良くなって行くという話は良く知られている。

 そして同じ階にある宝箱であっても、より良い物が入っている宝箱には、大抵罠が設置されている。

 その罠にも種類があり、ミスターは初級・中級・上級と分けて区別していた。


 初級の罠は痺れガスが噴出したり、ナイフが飛び出てくる様な基本的な罠。

 中級の罠は毒ガスが周囲にばら撒かれたり、宝箱が爆発するような危険な罠。

 そして上級の罠になると、アラーム鳴らしてモンスターの大群を呼び寄せたり、転移の魔法を発動して、ダンジョン内の何処かに飛ばしてしまう様な非常に悪質かつ危険な罠が組み込まれているという。


 そして罠の難易度と解除の難易度は比例するので、上級の罠の解除はとにかく時間が掛かるのだ。

 ミスターは初級ならば1分と掛からず、中級ですら数分もあれば罠を解除することが出来る。

 そのミスターが一つの宝箱の罠の解除に既に10分も使っている。

 これだけで罠の難易度が良く分かるというものである。


 そして遂に宝箱の罠の解除が成功した。

 上級の罠に守られていた宝箱が今ゆっくりと開いて行く。

 宝箱の中には一対の篭手が入っていた。

 緑と金色の綺麗な魔石が組み込まれ、デザインも良ければ威力も値段も高そうな代物である。

 恐らくこれは俺がジョーカーから購入した『妖刀闇切』に匹敵するマジックアイテムだと思う。

 俺達はダンジョンをクリアした後に到達できる宝物庫の中にはこれ程の一品が眠っているのかと、感心してしまった。


 「いやいや、これはそれだけが理由ではありませんな」

 「と言うと?」

 「宝箱の中身の質はダンジョンの深さに比例する事は良く知られていますが、それよりも重要なのは、ダンジョン自体の難易度と、攻略頻度なのですな」

 「どういう事です?」

 「難易度が高ければ、それだけ人が入らなくなり、宝箱も開けられません。

  攻略頻度も同様です。

  そういったダンジョンにある宝箱からは、例え階層が低くても、他のダンジョンの更に深い場所にある宝箱の中身に匹敵するアイテムが手に入るのですな」

 「成程、つまりこれは他のダンジョンならもっと深い階層にある筈だと」

 「その通りですな。そもそも他のダンジョンならば20階層で上級の罠が設置されている宝箱なぞ、あり得ませんからな。人数のダンジョンとかですと、10階~25階までは初級の罠がせいぜいですな」

 「え? そうなのですか?」

 「そうなのですな。それなのに人数のダンジョンに潜る人達は皆26階以降に潜らないのですな。もっと頑張って下の階まで行って貰いたいですな」


 その話が本当なら、俺達は随分と高難度のダンジョンに潜っていたことになる。

 いや、最初からここは『最難関』ダンジョンだと説明されていたじゃないか。

 ベテランのミスターが居る安心感からか、その事をすっかり忘れていた。

 つまり俺達は、いつの間にやら並のダンジョンならば問題なく攻略できる程の力を身に着けていたということか。

 俺はミスターに感謝したのであった。


 「さて、それでは残り2つの宝箱の罠の解除に進みましょうか」


 そんな事を思っていたら、ミスターが俺の肩を叩いて、良い笑顔でキラリと歯を見せて笑う。

 ――そうだった、残りの2つは俺が罠の解除をするんだった。

 ミスターですら10分以上も掛かる、罠の解除など、どれだけ時間が掛るのか見当も付かない。

 俺はため息を付きながら、宝箱へと向かっていくのであった。


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 ハヤテとデンデとゲンのちびっこ集団がすっかり飽きて部屋の隅で遊んでいる頃、俺はようやく残り2つの宝箱の罠の解除を終了させた。

 その余りの難易度に、終わった瞬間に膝から崩れ落ちる。

 特に最後の宝箱がやばかった。

 最初に取り掛かった宝箱の罠の解除は30分位で終わったというのに、残りの宝箱の罠の解除には何と1時間以上も掛かってしまったのだ。

 どうやら『上級』とは言っても、その難易度の幅は結構広いようだ。

 最初の宝箱は中級寄りの難易度だったのに、最後の宝箱は明らかにレベル違いだった。


 ちなみに最初に開けた宝箱の中身は槍だった。

 全体的に薄っすらと青色に輝き、その穂先からは冷気が漏れている。

 とてもきれいな色をした槍だ。

 どうやら氷属性を持つ槍のようだ。


 ちなみに宝箱の大きさに比べて、どう考えても槍の方が長い。

 不思議な事だが、明らかに宝箱の大きさに入り切らない程の大きさの物も、宝箱の中には入っていることがあるのだという。

 それらは宝箱を明けた瞬間、外に飛び出て、元の大きさに戻るのだ。

 宝箱の中に入っている間は、魔法的な要因で圧縮されているのではないかと考えられているが、詳細は未だに不明だ。


 そして槍だが、これは迷わずライが所有権を主張した。

 俺達の中で槍使いはライだけなので、その意見はあっさりと通り、この氷の槍はライの持ち物となった。

 ライはこれまでは玄武の国の騎士団で正式採用されている槍を使っていたが、マジックアイテムにも憧れがあったのだろう。

 槍を持ったライはとても嬉しそうにしていたのであった。


 そして最後の宝箱である。

 俺はこの宝箱の罠の解除に1時間以上も費やしたのだ。

 これで中身がショボかったら許せないな。

 俺は2つ目の宝箱を開けてみた。

 中には雑誌くらいの大きさの黒くて平べったい謎の板が入っていた。


 ――何だこれ?

 取り敢えず中身を取り出して、ジロジロと眺めてみるが、さっぱり用途が掴めない。

 俺は部屋の隅で遊んでいたハヤテとデンデとゲンも呼び寄せて、この謎の物体の正体を確かめようとした。

 しかし3人がすぐ近くまで来た瞬間、謎の板が突然光り輝き、その用途が判明したのであった。



 〈魔道具『更新チェッカー』をお手にとって下さり誠にありがとうございます!〉

 〈この魔道具はダンジョンコアの有る部屋の中で、ダンジョンを攻略したメンバーが揃った時のみ発動するタイプの魔道具です〉

 〈この更新チェッカーを使えば、貴方のスキルの更新の可否が丸分かり!

  更にスキルを持っていないお子様も、レベルを極めた貴方も、ストックされた経験値からスキル更新時の到達レベルを知ることが出来ます!〉

 〈更新チェッカーを使うためには、魔石が必要です〉

 〈必要な魔石の数は、更新チェッカーを使用するダンジョン内で倒したモンスターの魔石100個、若しくはダンジョンのボスの魔石1個が必要となります〉

 〈さぁ、貴方も更新チェッカーを使って、有意義なスキル更新をしてみませんか?〉

 〈ご利用お待ちしております!〉


 そんな説明が表示された後、更新チェッカーと呼ばれる謎の板は沈黙した。

 板の表面には現在〈魔石を置いて下さい〉という文章のみが表示されており、その他の文章は表示されていない。


 これはあれだ、勇者の供の選別の儀で使ったあの『勇者の検索器』と同じ種類の魔道具だ。

 しかし何なんだろうこれは、幾らなんでも浮かんできた文面が胡散臭すぎる。

 一体何処のテレフォンショッピングなのか。

 魔道具の方から『ご利用お待ちしております!』なんて言われるとは思わなかったぞ。


 しかもこれ、使うための制約が地味にキツイ。

 ダンジョンコアの有る部屋の中で、ダンジョン攻略メンバーが揃わないと使えないって、厳しすぎるだろう。

 おまけに魔石が100個とかボッタクリにも程がある。

 俺達が罠のダンジョン内で戦闘をしたのは、さっきのボス戦と、この部屋の中での戦いだけだ。

 魔石100個には到底届いておらず、使うためにはダンジョンのボスであったドッペルゲンガーの魔石を使うしか無い。

 あれは本来ダンジョン脱出後にゲンに食べさせる予定だったのだが。


 しかし、これを使えばスキルの更新の可否が分かるのはありがたい。

 ついでにハヤテとデンデの現在の到達レベルも分かるのなら、やっておいても良いのかもしれない。


 俺達は全員で相談した。

 そして全会一致で使ってみようという結論に達したのだった。

 何しろ使ってみる為にはダンジョンのクリアが条件なのだ。

 ここで使わないと、次が何時になるかも分からないのだから。


 俺はドッペルゲンガーの魔石を更新チェッカーの上へと置いた。

 すると巨大な魔石は更新チェッカーの中に吸い込まれるように消えて行き、更新チェッカーには次の文字が浮かび上がってきたのであった。


 〈更新チェックを開始致します。

  メンバーの選択をお願い致します。


  グラモ/ゲン/デンデ/トウ/ナイト/ハヤテ/ライ/ロック〉

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