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勇者の隣の一般人  作者: 髭付きだるま
第三章 冒険編
50/173

第四十九話 ライとロックのステータス

2017/08/18 本文を細かく訂正

 新たにゲンを加えて男4人のパーティーになった俺達は、玄武山脈に沿って、街道を南へと進んでいた。


 現在俺達はモンスターと戦闘中である。

 戦っている相手は『モンスタードッグ』と呼ばれる半透明な犬だ。

 半透明とは言え、体の中心には魔石が輝いているので、実際には普通の犬よりも見分けが付きやすい。

 それが群れをなして俺達を取り囲んでいる。


 モンスタードッグは玄武の国ではよく見かけるモンスターである。

 一頭一頭は弱いが、群れをなして襲ってくるため危険な相手と言われている。


 しかし俺達は冷静に対処している。

 普通の兵士やモンスターハンターにとって、集団で襲い掛かってくるモンスタードッグは厄介な相手だ。

 しかしこちらには『勇者』がいるのである。

 残念ながらモンスタードッグ如きでは勝負にもならないのだ。


 「ふん!」


 パンチ一発、一撃必殺。

 ロックのパンチでモンスタードッグが吹っ飛んで行く。

 動きを止めたモンスタードッグはもがいていたが、骨をやられたのか内臓をやられたのか身動きが取れず、しばらくすると活動を停止してしまった。

 死んだ訳ではない。

 モンスターは半透明な体を持ってはいるが、見えないだけで肉も皮も骨も内臓もちゃんとあるのだ。

 そして一定のダメージを受けると活動を停止し、体の修復を開始する。

 これが普通の動物ならそのまま死亡する所だが、モンスターは魔石が体内にある限り、時間が経てば復活するのだ。


 「これで7匹か、後何匹だ?」

 「残りは5匹! このまま追い詰めるぜ弟!」


 ゲンがその高いステータスを活かして、モンスタードッグ達の背後に周り、退路を断つ。

 そして逆方向からやって来るのは、土の勇者であるロックだ。

 上下を挟まれたモンスタードッグ達は左右に逃げようとする。

 しかし左にはライがおり、そして右には俺が待ち受けている。

 俺の方向に逃げて来たのは3匹。

 俺は手に持った剣を握り締め、迎撃に動いた。


 モンスタードッグはモンスターではあるが、元になった犬の頭脳を持っているため意外に頭が良い。

 こいつらは既に俺達には敵わないことを理解しており、無理には戦わず、俺達の包囲をすり抜けようとしてくる。

 俺はそうはさせずと、モンスタードッグ3匹に突っ込む。

 近づけば近づく程、包囲は狭まり、逃亡を阻止することが出来るからだ。


 覚悟を決めたモンスタードッグ達は3匹揃って俺に向かって来る。

 そして一匹が俺の右へ、残り二匹が左へと別れた。

 どちらか一方が倒されている間に、もう片方が逃げられるようにとの算段なのだろう。

 俺はまず右の一匹に剣を振り下ろす。

 かつて、10歳になるまでは毎日の様に振っていた剣だ。

 その刃はモンスタードッグの首を切断し、残った体はフラフラと動いた後、地面に倒れた。


 そして左に逃げた二匹は、地面にうずくまり咳き込んでいる。

 その顔はもし皮膚や体液が見えたのならば、鼻水と涙でグチャグチャになっていたであろう。

 俺は右に向かう際に、左の二匹に向かって特性の催涙粉をぶつけていたのだ。


 『毒殺師』の異名は伊達ではない。

 この8年の修業の間に、俺はモンスターに効く毒薬や睡眠薬、催涙粉などの各種アイテムを大量に作成していたのである。

 それを樽に詰め込んでアイテムボックスに入れて持ち運べば、あら不思議。

 大量の薬品を持ち歩く、危険な薬師の誕生である。

 とは言え、流石に戦闘中に巨大な樽を出して使う訳にはいかない。

 俺は樽に入れて持って来ている薬品を小分けにして装備し、状況に応じて使い分けているのである。

 俺は動けなくなったモンスタードッグに近づき、まずは首を切り落として動きを止める。

 見ればライの方は既に仕留め終わっていた。

 俺達は総勢12匹のモンスタードッグの群れを全て仕留めた後、倒した相手を一箇所に集め、体内の魔石を抜き出したのであった。


 《経験値が一定値に達しました。レベルが14に上がります。全ステータス値が5上昇しました》


 《レベルを上げるスキルを選択して下さい。選択を確認しました。スキル『有名人』のレベルが1上がります》


 《スキル『有名人』がレベル4になりました。スキルの効果により全ステータス値が16上昇しました》



 早速俺のレベルが1上昇した。

 スキルの更新でレベル13まで上がっていたレベルは、上昇間近だったようだ。

 選んだスキルは『有名人』である。

 『中級罠師』の罠の自動設置も捨てがたいが、やはり最初はステータスを上げておくことを選んだのだ。


 俺はレベルアップをしたが、ロックとライはレベルアップをしなかった。

 レベルとは高ければ高くなる程、必要とされる経験値が増えていく。

 ロックもライもこの8年でそれなりにレベルを上げているのだ。

 二人共この程度の相手を倒した程度では、そう簡単にレベルは上がらないのである。


 ちなみに二人のステータスだが、まずライはこんな感じだ。


 『名前:ライ=ロックウェル 


  LV32


 (『剣士』による上昇値:HP、力、頑強が300、素早さ、運が200、

             MPと心力が100

  『騎士』による上昇値:HP、頑強、心力が300、力、素早さが200

             MPと運が100

     レベルアップによる上昇値:42)


  HP:30+642=672 672/672

  MP:12+242=254 254/254


    力:28+542=570×1.1=627

   頑強:30+642=672 

  素早さ:32+442=474×1.1=521 

   心力:21+442=463 

    運:10+342=352 



  所有スキル:剣士LV10、騎士LV10、魔法の心得、高速移動LV2、身体強化、視覚強化、槍術LV10、鍛冶師

  特殊能力:基礎魔法、初級魔法、中級魔法、玄武騎士団流戦闘術、視力強化  』


・剣士(レベルを上げる毎にHP、力、頑強が30増加、素早さ、運が20増加。MPと心力が10増加する)


・騎士(レベルを上げる毎にHP、頑強、心力が30増加、力、素早さが20増加。MPと運が10増加する)


・魔法の心得(魔法を習得することが可能となる。レベル0で発動)

・高速移動(瞬間的に素早く動けるようになる。レベル10で発動)

・身体強化(MPを使用することでMP・心力・運を除いた全ステータスを上昇させる。レベルを上げる毎に上昇率は増加し、同時に使用MPも増加する)

・視覚強化(視力が良くなる。レベル0で発動)

・槍術(槍の扱いに補正がかかる。また、槍を装備しているとレベルを上げる毎に力と素早さが1%増加する)

・鍛冶師(レベルを上げる毎に、鍛冶の設計図を1つ手に入れる事が出来る)



 8年間鍛え続けたおかげで基礎ステータスも高く、スキルも優秀な物が揃っている。

 『剣士』と『騎士』というステータス・スキルが2つもあり、『魔法の心得』のお陰で魔法も使うことが出来る。

 そして『高速移動』『身体強化』『視覚強化』『槍術』と揃った4つのスキルの影響で、ライの獲物は自然と槍に決定した。

 このスキル構成、どう考えても槍を持って戦場を縦横無尽に走り回れと言っているとしか思えない内容だ。


 ライに『槍術』スキルが発現した理由。

 それはライが昔から槍を使っていた事が理由だと考えられる。

 16歳になり、父さんに似たライは、体型すらも父さんに似てかなり背が高く筋肉質だ。

 しかし昔のライは、俺達幼馴染の中で一番小さかったこともあり、一番リーチが短かった。

 故にライは、リーチの差を無くそうと、訓練の際には良く槍を使っていたのだ。

 しかも武器の改造も割りと頻繁に行なっていたので、『鍛冶師』のスキルまで発現したのであろう。


 そう考えると、ライのスキル構成は完全に戦闘特化型と言える。

 エルが魔法特化型のスキル構成だったことを考えると、ものの見事に別れたこととなる。

 だが、これはこれでバランスが良いのだ。

 ロックのスキル構成が必ずしも戦闘寄りでは無いのだから。



 『名前:ロック=A=タートル 


  LV32


 ( 『勇者』による上昇値:10,000

 レベルアップによる上昇値:    42)


  HP:24+10,042=10066×2=20132 

     20132/20132


  MP:15+10,042=10057×2=20114 

     20114/20114


    力:20+10,042=10062×2=20124

   頑強:24+10,042=10066×2=20132

  素早さ:18+10,042=10060×2=20120

   心力:32+10,042=10074×2=20148

    運:10+10,042=10052×2=20104



  所有スキル:王族LV10、勇者LV10、格闘の天才、大地の加護、鉄壁LV10、地属性魔法、オートヒール、画家LV2、読書家、音楽家


  特殊能力:全ステータス2倍、鉄壁、地属性魔法、玄武騎士団流戦闘術、オートヒール』



 ・王族(全ステータス2倍。レベル10で発動)

 ・勇者(レベル上げる毎に全ステータス1000上昇)

 ・格闘の天才(あらゆる格闘術を簡単にマスター出来る。レベル0で発動)

 ・大地の加護(地属性を無効化・地属性攻撃力2倍。レベル0で発動)

 ・鉄壁(瞬間的に自身の防御力を上昇させる事が出来る。レベル10で発動)

 ・地属性魔法(地属性魔法を習得可能。地属性魔法の威力が100%増加。

  ただし他属性の魔法を習得できなくなる。レベル0で発動)

 ・オートヒール(怪我や病気になった際、自動的に治癒する。発動にはMPが必要。レベル0で発動)

 ・画家(レベルを最大値まで上げると、MPを消費して画材を手に入れる事が出来る)

 ・音楽家(レベルを上げる毎に、楽譜を1つ手に入れる事が出来る)

 ・読書家(レベルを上げる毎に、本を1冊手に入れる事が出来る)

 



 無茶苦茶なステータスだ。

 『勇者』と『王族』の組み合わせが凶悪過ぎる。


 全ステータス、2万超え。

 そこに加えて『格闘の天才』と『大地の加護』に『地属性魔法』が加わる。

 『鉄壁』と『オートヒール』のお陰で防御にスキが無さ過ぎる。

 それなのに、非戦闘系スキルが3つもある。

 

 確かに昔から言っていたよ。

 「本当は部屋に篭って絵を描いたり、音楽を聞いたり、本を読んだりして暮らしたい」と良く言っていた。

 だからって『画家』と『音楽家』と『読書家』ってお前。

 昔から戦闘訓練に明け暮れていたのに、思いっきり文系勇者のスキル構成じゃないか。

 『勇者』と『王族』が凄すぎて分かりにくいが、土の勇者としての代表的なスキルを除けば戦闘系のスキルが『格闘の天才』しか存在していない。


 ステータスだけ見れば世界最強。

 しかしスキルだけ見ると首をひねらざるをえない。

 何と言うか宙ぶらりんな印象を受けるステータス内容だ。


 だが強い。

 ステータス2万超えって、これ並の相手じゃ傷一つ付かないぞ。

 頑強も心力も高いから、ただ突っ立っているだけでも無傷で過ごせるし、素早さも運も高いから、そもそも攻撃が当たらない。

 当たった所でHPが高いから倒せないし、MPも高いので『オートヒール』が発動して勝手に治ってしまう。


 流石は土の勇者と言った所か。

 こと防御力と生存力に関しては右に出る者は居ない。


 ちなみに二人のレベルが思ったよりも低いのには理由がある。

 ロックの安全を考えて『王族』と『勇者』と『鉄壁』の分はレベルを上げておいたが、「それ以上のレベルアップは自力でやるべし」という父さんの指導方針に基づいたからだ。

 おんぶに抱っこのままレベル上げを続けても、真の実力は身に付かないからという理由らしい

 もっとも『勇者』をマックスまで上げてしまった時点で、真の実力も何も無いと思うのだが、それはあくまでも雑魚の相手をしているから。

 勇者と互角の力を持つとされる魔王を倒すためには、『勇者』というスキルに頼らない実力が勇者には必要とされているのだ。


 とは言え、これだけのステータスなのだ、それ程心配もしていない。

 下手をすれば現時点でも魔王相手に勝てそうな程なのだから。


 「流石にそれは言いすぎだぜ旦那」

 「その通りだ。それに記録に残っている魔王の中には、このステータスでも倒すのに苦労したという話も残っているからな」

 「……それは最早魔王ではなくて、大魔王か何かなんじゃないのか?」

 「ほう、何だ知っていたのか」

 「はい?」

 「だから『大魔王』についてだ」

 「……居るのかよ大魔王」

 「現在の魔王の中には存在していない。しかし記録を読み解けば、かつての勇者達の中には大魔王と呼ばれる相手と戦ったという記述も存在するのだ」

 「その話ならご主人も知ってるぞ! 昔、親父から聞かされたんだよな!」

 「国王陛下である父上の書斎にある古い本に記録が残っていた。魔王を統べる魔王、即ち大魔王はかつて確かに存在していた。しかし当時の勇者達が総掛かりで戦いを挑み、仕留めたのだと記述が残っている」

 「ゆっ勇者が総掛かりですか?」

 「そうだ、並の魔王は勇者とその仲間達でも倒すことが出来るが、大魔王の相手は複数の勇者が揃わなければ無理だったらしい」

 「正直言って、想像も出来ないのですが……」

 「私もだ。今の私の強さであっても十二分だとも思えるくらいだからな。なに、心配はいらないさ、大魔王は歴代の勇者達の手で全て倒され、今の世には普通の魔王しか居ないのだ」

 「そもそも、その普通の魔王すら今の勇者では倒せていないしな」

 「そういう事だな。今は地道に経験を積み、光の勇者殿の如く、魔王相手にも戦えるように鍛えるべきだろう」

 「分かりました」

 「了解だ」

 「頑張ろうぜ、お前ら! おっ早速次の敵だぜ!」


 話をしている間に、別のモンスターが寄って来ていたようだ。

 俺達は再び戦闘態勢に移行するのであった。

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