第三十七話 ナイトのスキル更新
第三章開始します。
2017/07/07
日刊ランキング3位に入っていました。
BEST5に載っていたのを見た際、思わず吠えてしまいました。
皆さん、ありがとうございます。
2017/07/14 本文を細かく訂正
俺の目の前には映画館のスクリーンの様に巨大な画面が空中に出現している。
そしてそこでは俺の人生がダイジェストで映し出されている。
しかしそれは全てではない。
映し出されているのは8年前、この闇の神殿の中でスキル授与の儀式をした後からの俺の人生であった。
俺は転生者である。
だから前回と同じく前世から映し出されたりしたら流石に弁明は不可能だった。
しかしどうやらのこのスキルの更新時に映し出される人生は、前回のスキル取得時から更新時までの人生を映し出すものであったらしい。
正直焦ったが、今はホッとしている。
そして俺は懐かしい気持ちでこの8年間の人生を垣間見ている。
スキルを1つしか取得できなくてガッカリしたこと。
王宮へと報告に行き、ロックに泣かれたこと。
父さんに連れられて、ロゼ達と一緒にレベル上げの為に町の外へと出向いたこと。
魔族に襲われて死に物狂いで戦ったこと。
薬局で働き始めたこと。
モンスター退治を始めたこと。
孤児院で働き始めたこと。
孤児院の子供達に勉強を教え始めたこと。
氷の勇者であるサム倒したこと。
サムを孤児院に放り込んだこと。
商人の真似事を始めたこと。
自分の店を持ったこと。
稼いだ金でマジックアイテムを集めたこと。
武器を持ったチンピラに囲まれながら交渉したこと。
町長に任命されたこと。
学校の設立に走り回ったこと。
ロゼと結ばれたこと。
町長として過労死するかと思うくらい働いたこと。
俺のこの8年間の人生が目の前の大画面に映し出されている。
それは決して格好良くもスマートでもない。
歯を食いしばって必死になり、毎日毎日地道に継続し、出来ないことは周囲に頼り、少しずつ出来ることを増やしていった一般人の人生だ。
それは最終的に今日のこの日へと繋がっている。
画面では俺とロゼが共にこの闇の神殿前に作られた特設ステージへと移動してくる場面が映し出されている。
俺もロゼも2人共笑顔だ。
そこには、例えスキルが少なくとも、胸を張って人生を歩んできた2人の若者の姿があった。
気がつけば、いつの間にか俺の隣にはロゼが並んで立っていた。
彼女は俺の手をギュッと握り、俺の歩んできた人生を涙を流しながら観ていた。
そして俺の8年間の人生のダイジェスト映像の上映会は終了した。
これが映し出されたという事は、本当にスキルの更新とやらがあるのだろう。
――やばい、ワクワクしてきた。
一体どんなスキルをどれだけ手に入れることが出来るのだろうか。
ちなみに今の俺のステータスはこんな感じだ。
『名前:ナイト=ロックウェル
LV10
HP:38⇒42 42/42
MP:30⇒30 30/30
力:34⇒38
頑強:38⇒42
素早さ:34⇒38
心力:33⇒40
運:30⇒30
所有スキル:一般人LV10』
この8年間の絶え間なき修行の成果がしっかりと反映されているステータスである。
HP・力・頑強・素早さは4上昇し、心力に至っては7も上がっている。
これは孤児院の副院長とか、学校の教師とか、この町の町長とかをやっていたお陰だ。
俺の歩んできた人生はそれ相応の変化を俺に与えてくれたらしい。
MPと運はそのままだ、これは上げることが出来ないので致し方ない。
これがどのように変化するのか、正直楽しみで仕方がない。
さてどうなるのかなと思っていると、映像が消えた画面に今度は文字が浮かび上がって来た。
前回、スキル授与の儀式の時には画面が消え、ライフルーレットが現れたのだが、今回は違うらしい。
そして俺のスキルの更新が開始されたのであった。
〈ナイト=ロックウェルのスキルの更新を開始します。
現在のスキル帯はレベル1、スキルの数は1つです。
更新特典としてスキル帯をレベル2へと変更致します。
新たに2つのスキルが与えられます。
但し、更新されるスキルが有る場合にはそちらが優先されます。
スキル『一般人』はスキル『初心者』に更新されました。
スキル『初心者』を入手しました。
レベルを1つ上げる毎に全ステータスが2上昇します。
更新スキルは以上です。
新たなスキルを獲得するためにライフルーレットを開始致します〉
思わずずっこけそうになった。
――『初心者』って何だ!
全ステータス2上昇って『一般人』とあんま変わんねぇじゃねぇか!
と言うか、スキルの数は2つになるだけなのか。
いや、それでもマシなのか。
元々1つだけだったのだ。
倍になったと思えば十二分な成果なのかもしれない。
そんな事を考えていると、いつの間にか画面の横にこれまた巨大なライフルーレットが現れていた。
そこには俺のこの8年間の人生が記されている。
一番大きいマスは『薬師』だ。
続けて『商人』『先生』『罠師』『狩人』『町長』等のマスが大きく、後は小さく『武闘家』とか『戦士』とかも載っている。
これはあれだ、8年間毎日行っていた雑魚モンスター退治で、俺は弓を使ったり、罠を使ったりして仕留めていたからだ。
反面剣や槍等の武器を使った攻撃はしてこなかった。
何しろ相手が弱すぎたので、オーバーキルになってしまうのだ。
最近では素手で仕留めるようになっていたので『武闘家』はそれが反映されたのだろう。
というか『先生』とか『町長』のスキルなんて初めて聞いたぞ。
殆どの人は10歳でスキル授与の儀式を行うから誰も知らなかったって事だろうな。
そして相変わらず1つしか無い針が回り、それは『商人』のマスで止まったのだった。
〈スキル『商人』を獲得しました。特殊能力『アイテムボックス』が使用可能となります。レベルを1つ上げる毎に、アイテムボックスが10増加します〉
――おお、これは結構良いスキルを手に入れた。
俺も1人の商人としてアイテムボックスには憧れがあったんだよな。
これは早速レベル上げをして、率先してレベルを振り分けねばなるまい。
そう考えていた。
だがその必要は無かった。
〈ナイト=ロックウェルのレベルを初期値へと戻します。LV10⇒LV0
ステータスが以下の様に変更となります。
『名前:ナイト=ロックウェル
LV10⇒LV0
HP:42⇒22 22/22
MP:30⇒10 10/10
力:38⇒18
頑強:42⇒22
素早さ:38⇒18
心力:40⇒20
運:30⇒10
所有スキル:初心者LV0、商人LV0
特殊能力:アイテムボックス0個』
経験値のストックが存在しています。
確認しています。
……
……
確認しました、レベル限界までレベルを上昇させることが可能です。
レベルアップを開始します。
なおスキル更新の特典として、レベルアップ時のステータスの上昇値が1上昇します。(1⇒2)
……
……
レベルアップを終了しました。
ステータスが以下の様に変更となりました。
『名前:ナイト=ロックウェル
LV0⇒LV20
( 『初心者』による上昇値:20
レベルアップによる上昇値:40
合計:60)
HP:22⇒82 82/82
MP:10⇒70 70/70
力:18⇒78
頑強:22⇒82
素早さ:18⇒78
心力:20⇒80
運:10⇒70
所有スキル:初心者LV10、商人LV10
特殊能力:アイテムボックス100個』
続いてスキルの更新を継続します〉
……ちょっと待て、ちょっと待て!
経験値のストックって何だ!?
何で勝手にレベルが上って、何で勝手にスキルの更新が継続するんだ!?
いや分かるよ?
理由は分かる。
あれだろ? モンスターを3万匹も倒していたから経験値が有り余っていたってことだろ?
そもそもあの時の魔族の経験値も反映されているって考えると、相当貯まっている筈だしな。
いやでもやっぱり待ってくれ。
経験値がストック出来るなんて初耳だぞ。
周りを見れば皆驚いている。
この場に居る人の幾人かは限界値までレベルを上げているはずだ。
そしてそれからもモンスターを仕留めているのならば、経験値のストックがある筈。
あれ? これはひょっとしてとんでもないことが目の前で起きていないか?
それにスキル更新の特典も初耳だ。
基礎ステータスの上昇値が2倍って、地味にデカイぞ。
更新前の倍位のステータスになっちゃってるんだけど!?
これから俺はどうなるんだ?
でも起きてしまったことはもう止められない。
俺の目の前で再びスキルの更新が開始された。
〈ナイト=ロックウェルのスキルの更新を開始します。
現在のスキル帯はレベル2、スキルの数は2つです。
更新特典としてスキル帯をレベル3へと変更致します。
新たに3つのスキルが与えられます。
但し、更新されるスキルが有る場合にはそちらが優先されます。
スキル『初心者』はスキル『努力家』に更新されました。
スキル『努力家』を入手しました。
レベルを1つ上げる毎に全ステータスが4上昇します。
スキル『商人』の更新スキルの判定を開始します。
更新スキル名『中級商人』
『商人として3年以上のキャリアが必要です』、クリア。
『自らの店舗が必要です』、クリア。
『雇用している従業員の数が10人以上必要です』クリア。
スキル『商人』はスキル『中級商人』に更新されました。
スキル『中級商人』を入手しました。
レベルを1つ上げる毎にアイテムボックスが100増加します。
更新スキルは以上です。
新たなスキルを獲得するためにライフルーレットを開始致します〉
また新しい要素が出てきた。
更新スキルの判定なんてものがあるのか。
あれか、もしも判定に満たない場合は更新が出来ないって事なのか。
と言うか、アイテムボックス100増加って凄いな。
最大まで上げれば1000まで入るって事じゃねぇか。
アナの『無限収納』には劣るけどアイテムボックスの容量が1,000もあるのはかなりデカイ。
あれか? 異世界物でよくある輸送無双とかアイテム無双が出来るんじゃね?
夢が広がるな。
そんな事を考えるている間にライフルーレットは終了していた。
今度手に入れたスキルは一番広い範囲を持っていた『薬師』だった。
〈スキル『薬師』を獲得しました。レベルを1つ上げる毎に、薬のレシピを1つ手に入れる事が出来ます〉
まぁこれは手に入って当然と言うか、8年間の集大成みたいな感じだな。
俺はこの8年間、余程忙しい時でない限り毎日の様に薬を作り続けてきたのだ。
今ではハイポーションどころか、モンスターにも効く毒薬だって作れるのである。
俺のこれまでの人生で、このスキルが手に入らなかったらむしろ問題だ。
〈ナイト=ロックウェルのレベルを初期値へと戻します。LV20⇒LV0
ステータスが以下の様に変更となります。
『名前:ナイト=ロックウェル
LV20⇒LV0
HP:82⇒22 22/22
MP:70⇒10 10/10
力:78⇒18
頑強:82⇒22
素早さ:78⇒18
心力:80⇒20
運:70⇒10
所有スキル:努力家LV0、中級商人LV0、薬師LV0
特殊能力:アイテムボックス0個』
経験値のストックが存在しています。
確認しています。
……
……
確認しました、レベル限界までレベルを上昇させることが可能です。
レベルアップを開始します。
なおスキル更新の特典として、レベルアップ時のステータスの上昇値が1上昇します。(2⇒3)
……
……
レベルアップを終了しました。
ステータスが以下の様に変更となりました。
『名前:ナイト=ロックウェル
LV0⇒LV30
( 『努力家』による上昇値:40
レベルアップによる上昇値:90
合計:130)
HP:22⇒152 152/152
MP:10⇒140 140/140
力:18⇒148
頑強:22⇒152
素早さ:18⇒148
心力:20⇒150
運:10⇒140
所有スキル:努力家LV10、中級商人LV10、薬師LV10
特殊能力:アイテムボックス1,000個、薬レシピ入手残り10』
続いてスキルの更新を継続します〉
……更にステータスが倍になったんだが。
最早驚きを通り越して驚嘆の領域だな。
俺の人生でステータスが3桁になる日が来るとは想像もしていなかったぞ。
そして新しい薬のレシピは地味に嬉しい。
でもレシピを手に入れるのは、今回の更新が終わってからだ。
次はどんなスキルを手に入れることができるのか。
俺は次の更新をワクワクしながら見守っていたのであった。




