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勇者の隣の一般人  作者: 髭付きだるま
第二章 修業編
36/173

第三十五話 勇者の供の選別の日2

2017/07/04

総合評価とアクセス数が突然増えてびっくりしました。

一体何が起こったのでしょう?


追記:日刊86位に入っていました。

とても驚きました。

皆さん、ありがとうございます!


2017/07/14 本文を細かく訂正

 勇者の供の選別。

 それはそのものズバリ、勇者の最後の仲間を決める為に行われる。


 勇者には共に旅立つ仲間が必要であり、その数は通常2人だ。

 そして勇者の供には勇者と共に世界の命運を背負う覚悟が必要とされている。

 勇者はモンスターと戦い、魔族と戦い、魔王と戦い、世界を救う。

 だからその勇者に付いて行くためには生半可な実力では不可能なのである。


 だがしかし、勇者の供として選ばれれば、それは名誉である。

 勇者とは伝説に謳われ、歴史に記され、人々に語り継がれる本物の英雄。

 この世界に勇者の活躍を知らぬ者は誰も居ない。

 その勇者の仲間も同じ様に名が残っている。

 勇者ロックと勇者ダイアナと共に歴史に名を残すのは誰か。

 闇の神殿前の広場に集まった者達は固唾を呑んでその時を待っていた。



 「え~それでは、これより勇者の供の選別を開始致します」



 その場に居た者達は揃いも揃って気合を入れた。

 何しろ勇者の供を選ぶのだ。

 どのような試練なのか想像も出来ない。

 だがどのような試練を課されようとも必ず勇者の隣に立ってみせる。

 この場に居る誰も彼もが気合に満ち溢れていた。


 「え~皆さん気合が入っているようですが、今回の選別において、皆さんにして頂くことは、特に何もありませんのでゆるりとしていて下さい」


 だというのに司会の男はいきなり出鼻をくじいて来た。

 その話を聞いた血気盛んな若者たちが司会者に食って掛かる。


 「オイふざけんな! 俺達は遊びに来てんじゃねぇぞ!」

 「そうだ、そうだ! 俺達は勇者の供に名乗りを上げてんだ!」

 「何もしないってどういう事だ! 説明しろ!」



 会場は急にヒートアップしてくる。

 しかし司会の男は気にせず言葉を返した。


 「え~では逆にお聞きしますが、貴方達は何をすると考えていたのですか?」

 「決まってんだろ! 戦いだよ!」

 「そうだ! 勇者の供に必要なのは何と言っても戦闘力!」

 「勇者の隣には強い奴こそ相応しい!」


 参加者達はどうやらこの場に戦いに来たようだ。

 司会者はその答えを聞いて呆れたように言葉を返した。


 「それで? その強い奴とは一体どうやって決めるのですか?」

 「あ? そりゃやっぱトーナメントだろ」

 「この場の全員がそれぞれ戦って、最強の男と最強の女を決めるのさ」

 「白虎の国に存在する、闘技場でも使われている方法だ!」

 「完璧じゃねぇか!」


 広場は益々盛り上がって行く。

 しかし司会の男はそこに冷水を浴びせたのであった。


 「成程、貴方達は馬鹿なのですね」


 司会の男は容赦などしない。

 勝手にヒートアップした馬鹿共に現状を叩きつけた。


 「貴方達、今日が何の日か分かっているのですか?

  勇者の旅立ちの日の前日ですよ?

  そんな時に呑気にトーナメント?

  一体何日掛かると思っているのですか。

  開いた口が塞がりませんね。

  そもそも何でしたっけ?

  勇者の供に必要なのは戦闘力?

  貴方達ロック王子やダイアナ様に並び立てると思っているのですか?

  『勇者』というスキルを持つあの方達に。

  理解していますか? あの方達のステータスは平均1万を超えているのですよ?

  スキルに恵まれ、更に限界まで鍛え上げた英雄であろうとも手が届くかどうかも分からない領域にお2人はいらっしゃるのです。

  そもそも戦闘力など勇者の供にはあって当然です。

  それがなければ、そもそも勇者に着いて行くことすら出来ませんからね。

  戦闘力があり、その上で更に何が有るのかが重要なのですよ。

  これ以上馬鹿なことを言い続けるつもりでしたらこの場から退去して頂きます。

  それが嫌なら黙って私の話を聞いてくださいね」


 司会の男はそう言ってニッコリと笑った。

 代わりに先程まで騒いでいた若い男達は絶句して黙ったままだ。

 無言のプレッシャーが彼らを小さく見せている。


 父さんといい司会の男といい、折角用意したロック達の晴れ舞台なのだからもう少し盛り上げてくれないだろうか。

 しかしそんな俺の心の声が届く訳もなく、司会の男は選別の方法を説明し始めた。


 「え~さて、選別の方法ですが、闇の神殿に協力を依頼し、特別な魔道具をお借りすることとなりました」


 司会の男がそう言うと、ステージの奥から何やら馬鹿でかい物体が運ばれてきた。

 あれは……確か見たことが有る。

 闇の神殿の宝物庫の奥に布を被されたまま鎮座していた魔道具の1つだった筈だ。


 闇の神殿で働いている男性が10人がかりで持ち運び、その物体はステージの中央へと設置された。

 そして被せられていた布を引き下ろすと、そこには真っ黒に光り輝く謎の立方体が存在していた。



 立方体、確かに立方体に見える。

 見えるが何だろう?何となく動いているようにも見える。

 いや違う。間違いなく動いている。

 その立方体は縦横高さの長さが微妙に移動している『動き続けている謎の四角い物体』であったのだ。



 「さて、これに関しては私から説明するよりも、闇の神殿の神殿長様から直々にご説明される方が良いかと思います。では神殿長様、宜しくお願い致します」


 その場の全員が一斉に神殿長のばっちゃんに視線を向ける。

 ばっちゃんは前に出てきて司会の男からマイクを受け取り、この物体について説明を開始した。



 「はいはいどうも、ご紹介に預かった闇の神殿の神殿長だよ。

  まぁ面倒な挨拶は省かせて貰うよ。

  こんなババアの挨拶なんてあんたらは興味ないだろうからね。

  今は目の前にあるこいつの説明さ。

  こいつは俗に『勇者の検索器』と呼ばれている代物さね。

  あくまで俗称だ、正式名は誰も知らない。

  ただその機能だけは闇の神殿に語り継がれていてね。

  こいつはね、莫大なエネルギーと引き換えに、この世界のありとあらゆる物について調べることが出来る魔道具なんだよ。

  そのエネルギーってのは魔石のことでね。

  魔石を大量投入する事で聞きたいことに対して答えをくれるっていう代物なのさ。


  但し、条件が厳しくてね。

  まず勇者に関する事にしか答えちゃくれない。

  そして勇者が認めた相手の質問しか答えちゃくれない。

  更にはエネルギーとして使うことが出来る魔石は、勇者が直に集めた魔石じゃなけりゃ受け付けない。

 おまけに1つ質問したら向こう1年間は使用不可能になる。

 10の質問なら10年間使い物にならなくなる。

  面倒なことこの上ないね。

  でも今回みたいな事態では大層役に立てるのさ」



 そう言ってばっちゃんはロックとアナに頷いて道を譲る。

 するとロックとアナは謎の立方体に近づいて、懐から取り出した魔石をその立方体に放り投げた。

 すると何と立方体の形が変化して口のような形を取り、魔石を吸収してしまったのだ。

 それを見た俺達は驚きの声を上げる。

 しかしロックもアナも気にせずに魔石をポイポイと立方体へと放り込んでいく。

 そうしてしばらくすると、立法体に変化が起き、突然その表面が光り輝いたのであった。

 俺達は驚いて声も出ない。

 口の形をしていた立方体は平べったい形に変化し、その表面には文字が浮き上がっていたのだ。

 そこにはこう書いてあった。


 〈調べたい事柄を入力して下さい。(口頭入力可能)〉



------------------------------------



 そうして再び司会の男の手にマイクは戻された。


 「はい、そんな訳でこの魔道具を使って勇者の供を選別したいと思います。

  方法はとっても簡単、この魔道具に向かって勇者の供に必要とされる能力を尋ねるだけです。

  そうすればこの魔道具がこの場の全員の能力・過去・実績を調べ上げ、この表面にその結果が映し出されるという寸法です。

  エネルギーの関係上、尋ねられる項目は限られております。

  ですので質問者はこちらで決めさせて貰っております。


  まずは土の勇者であるロック王子、

  闇の勇者であるダイアナ様、

  ロック王子と共に旅立つライ=ロックウェル殿、

  ダイアナ様と共に旅立つエリザベータ=エリシュ殿、

  そして国王陛下と闇の神殿の神殿長様、

  最後にロック王子達を鍛え上げたハロルド=ロックウェル将軍、

  以上7名の質問により最終候補者を選抜し、最終的には選ばれた者達の中から勇者であるお二人が直々に勇者の供を選んで頂きます。

  ちなみに候補者が何人も居ても困りますので、上位3名のみの選抜と致します。

  それではまず闇の神殿の神殿長様からお願いします」



 広場に集まった全員が予想外の選抜方法に呆気にとられている。

 勿論俺もロゼも同じだ。

 俺達は今日と明日の準備こそ仕切っていたが、そこで何をするかは具体的に教えて貰っていなかったのだ。

 まさか秘蔵の魔道具を持ち出して、候補者を項目別にピックアップする方法を取るとは。

 これはあれだな、異世界版のグー○ルだな。

 予想外の出来事ではあるが、これはこれで面白い。

 さて、この世界の先生の実力はどんな物か、お手並み拝見と行こうじゃないか。



 「あたしが必要と考えるのは何を置いてもやっぱり『スキルの数』だね。

  スキルの数が多ければ多いほど最終的にレベルは上がるんだ。

  何を置いてもこれは譲れないよ」


 〈検索項目『スキルの数』確認しました。

  検索範囲内において検索を開始します。

  ……

  ……

  終了、検索結果上位3名を出力します。


  同率1位:ダイアナ(10)

  同率1位:ロック=A=タートル(10)

    3位:ウメコ(9) 〉



 広場に集まった民衆から驚きの声が上がる。

 アナとロックのスキルの数10は分かっていた。

 だからそれに関しては驚かない。

 というか、この検索機、ロック達までまとめて調べるのか。

 下手すると上位は勇者が独占するんじゃないだろうか。


 それよりも第3位。

 ウメコという人物は何と9つのスキルを持っているのだ。

 随分と古風な名前だ。

 名前からして女性だな。

 これはアナの仲間の最有力候補ではないか?

 その場の全員がそう思った。

 しかしそれは間違いだった。


 「あ~ごめんよ。

  まさかこうなるとは思っていなかった。

  ウメコってのはあたしの本名さね。

  流石にこの歳で旅はキツイからね。

  あたしは勇者の供の候補からは辞退させて貰うよ」


 何とウメコの正体はまさかの神殿長のばっちゃんだった。

 つーかスキルの数が9とは。

 どんだけ凄いんだばっちゃんは。

 先代の闇の勇者の仲間だったとは聞いていたけど、まさかの実力者である。

 しかしばっちゃんでは駄目だ。

 流石に90近い老人を勇者の供にする訳にはいかないのだ。



 「え~気を取り直して次に行きたいと思います。では次はロック王子とダイアナ様に求める能力を選んで貰いたいと思います」


 流石は司会の男だ、さっさと次に進んで行く。

 そして今度検索するのは勇者達本人だ。

 これは否が応でも期待が高まる。


 「ふむ、では私は『戦闘用スキルの数』だな。私はスキルの数こそ多いが、純粋な戦闘用スキルの数は少ない。それを補ってくれる仲間は是非欲しいからな」

 「私は『これまでに助けた人の数』を調べて欲しい。私は殺すのは得意だけど助けるのは苦手だから。仲間には誰かを助ける力を持っている人が良いと思う」



 〈検索項目『戦闘用スキルの数』確認しました。

  検索範囲内において検索を開始します。

  ……

  ……

  終了、検索結果上位3名を出力します。


    1位:ダイアナ(8)

  同率2位:ハロルド=ロックウェル(7)

  同率2位:ライ=ロックウェル(7)〉



 〈検索項目『これまでに助けた人の数』確認しました。

  検索範囲内において検索を開始します。

  ……

  ……

  終了、検索結果上位3名を出力します。


    1位:ゴック=A=タートル(1,289,501人)

    2位:ナイト=ロックウェル(124,589人)

    3位:ウメコ(28,564人) 〉




 勇者2人は自分に足りない要素を求めた。

 それは良い。

 それは良いが、結果は駄目だ。

 ダイアナは『無限収納』と『料理人』以外が戦闘用スキルと判断されて8つ。

 そして父さんとライはそれぞれ7つ持っていて同率2位。

 この時点で3人居るので終了だ。

 ……全員身内だというこの状況、正直笑うに笑えない。


 そして『これまでに助けた人の数』

 正直驚いた。

 まさか俺が2位に入っているとは。

 1位は納得だ、流石は国王陛下。

 善政を敷く名君だけの事はある。

 3位はまたしてもばっちゃんだ。

 勇者の仲間をしていた時代に加え、闇の神殿での功績が大きいのだろう。

 しかしまたしても駄目だ。

 国王陛下もこの町の町長も勇者の供には不適切だからだ。

 と言うか、この項目だと、圧倒的に文官が選ばれる確率が高い。

 勇者の供を選ぶ為の質問としては不適切だったのだ。



 「……え~、これはまた予想外の結果になってしまいました。ですがまだ3つの質問が終わっただけです。気を取り直していきましょう。次はライ殿とエリザベータ殿です。質問宜しくお願いします」


 宜しくお願いします。

 これは「ちゃんと勇者の供を選抜するための質問をして下さい」という意味だ。

 先程まで駄々をこねていた二人ではあるが、このままでは旅立ちもままならないという現状は理解できている筈だ。

 俺も含めたこの場の全員が二人の言動に耳を傾けたのであった。


 「では僕から。僕が重視するのは『勇者に対する貢献度』です。皆さんこれまでも様々な活動をして来たと思います。そんな皆さんがどれだけ勇者のために尽くして来たのかを検索して貰いたいと思います」


 「あたしはねぇ、正直言ってばあちゃんと同じ事考えてたんだ~。重要なのはスキルの数だってね。でもそれは駄目で、次に考えていた戦闘用スキルの数もロックが聞いたけど駄目だったでしょ~。だからもう良く分かんないからさ~、いっその事『人気』で選んだらどうかと思うんだよね~。皆が考えているロックとアナの2人に相応しい相手。あたしはそれで調べて貰いまーす」


 〈検索項目『勇者に対する貢献度』確認しました。

  検索範囲内において検索を開始します。

  ……

  ……

  終了、検索結果上位3名を出力します。


    1位:ナイト=ロックウェル(勇者の幼馴染、勇者の親友、勇者の想い人、勇者の命の恩人、勇者の出身地の治安回復、勇者の出身地の知識レベル向上、勇者の出身地の平均レベル上昇、多数のマジックアイテム回収による戦力増大)

    2位:ハロルド=ロックウェル(勇者の師、勇者のおじさん、勇者の父親の親友、勇者の供の師、勇者の命の恩人、勇者の出身地の治安回復)

    3位:ロゼッタ=A=タートル(勇者の姉、勇者の幼馴染、勇者の親友、勇者の出身地の治安回復、勇者の出身地の平均レベル上昇)〉



 〈検索項目『人気』確認しました。

  検索範囲内において検索を開始します。

  ……

  ……

  終了、検索結果上位3名を出力します。


    1位:ナイト=ロックウェル(12,547人)

    2位:ロゼッタ=A=タートル(10,398人)

    3位:無し(5,863人) 〉



 ……どちらの質問も俺がトップを取ってしまった。

 と言うか、またしても身内しか居ない。

 特に『人気』が凄まじい。

 俺とロゼがツートップで、3位が『無し』とかどういう事なのか。


 そして貢献度だが、これもまた凄まじい。

 最初の4つと最後は分かる。

 俺は確かに幼馴染で親友で想い人で命の恩人だ。

 マジックアイテムも集めまくったので、戦力は確かに増大しただろう。

 ……命の恩人だという事がバレてしまったがまぁ仕方ないか。


 しかしその後もまた凄まじい。

 治安回復・知識レベル向上・平均レベル上昇とか。

 そんな事をした覚えは無いのだが。

 あれか、昔強盗をブッ飛ばしていた事や、学校を開設した事が評価されたってことなのか。

 まさかこんな所でこれまでの仕事の評価を得られるとは感無量だ。

 感無量だがこれでは困る。

 これでは俺とロゼしか選ばれていないじゃないか。



 「……え~、え~と。しばらくお待ち下さい。

  ……

  ……

  え~次で最後です。

  国王陛下とハロルド将軍に質問をして頂きます。

  え~それでですね。

  今回は1つ注文を付けさせて頂きます。

  今行っている検索は勇者の供を探すための検索な訳です。

  しかしナイト町長のスキルの数は1つだけで、ロゼッタ王女のスキルの数は3つだけです。

  折しも闇の神殿の神殿長様やエリザベータ殿も申しておりました通り、スキルの数は絶対なのです。

  勇者の供には最低でもスキルの数が5つ以上必要であると規定されております。

  ですから、どれだけお二人が素晴らしい方達であったとしても、勇者の供として不適切である事に違いはありません。

  ですので今回の質問は、お二人が決して該当しないであろう質問に限定して戴きたい。

  勿論、勇者であるロック王子やダイアナ様にも該当しない質問をお願い致します。

  国王陛下や将軍閣下に対して失礼を申し上げているのは承知の上ですが、これもこの国の為、世界の為です。

  どうか宜しくお願い申し上げます」



 そう言って司会の男は頭を下げた。

 そんな司会の男に対して惜しみない拍手が送られている。

 見ればロックやアナですら拍手をしている。

 何しろ相手はこの国の国王陛下と将軍なのである。

 そんな雲の上の人に対して意見を言うなど中々出来る事ではない。

 相手が誰であれ、おのが職務に全力を尽くすその姿は感動を呼んだのだ。



 さて拍手も収まってきた頃、国王陛下と父さんがマイクのある位置までやって来た。

 二人は考えに考え抜いたのだろう、難しい顔をしながらマイクを手に持つ。

 そして二人は尋ねたのだ。

 最後の質問を。


 「ワシが尋ねるのは『過去10年間の実戦の日数』じゃ。

  10年前から数えて今日この日までの間にどれだけの期間戦闘に携わってきたのかを知りたい。

  我が息子を預けるにあたっては、やはり豊富な戦闘経験も持つ相手が必要じゃからな。

  かと言って余り年を食っていても困る。

  ウメコ殿やハロルドもこの条件ならば当て嵌まるまい。

  ちなみに息子もダイアナも勇者として訓練は積んできているが、実戦の数は数える程じゃ。

  ナイトとロゼッタに関しては言わずもがなじゃろう」


 「私が重視する事柄は『これまでに討伐したモンスターの数』だ。

  例え多くのスキルを持っていようとも、モンスターと戦い倒さなければ経験値は手に入らない。

  また、仮に限界レベルまで上げていた所で、そこで戦闘を終了してしまったのではそれ以上の成長は無い。

  レベルを限界まで上げたとしても鍛え上げるべき事柄は山のようにあるからだ。

  そして勿論ロック王子もダイアナ様もモンスターの討伐数は少ない。

  当然、勇者として旅立つために戦いの経験も積んで貰ったが、倒した数で言えば、まだまだ少数だ。

  今回この検索機を発動させるために久し振りにモンスターを狩ったくらいだからな。

  ナイトとロゼッタ王女に関してはそもそも町の外に出ることは出来ない。

  これで問題無い筈だ」



 二人の発した問いに周囲はホッとした様な、納得した様な雰囲気を出している。

 今回の質問ならば問題無いと判断したのだろう。

 そして検索機は現在検索を開始している。


 でも駄目だ。

 駄目なんだ。

 その質問は失敗なんだよ。


 父さん、そして国王陛下。

 あなた達は自分の長男と長女を修羅へと育てていたのだから。



〈検索項目『過去10年間の実戦の日数』確認しました。

  検索範囲内において検索を開始します。

  ……

  ……

  終了、検索結果上位3名を出力します。


    1位:ナイト=ロックウェル(2,800日)

    2位:ロゼッタ=A=タートル(2,795日)

    3位:ジョーカー(本名は封印されています)(1,127日) 〉



 〈検索項目『これまでに討伐したモンスターの数』確認しました。

  検索範囲内において検索を開始します。

  ……

  ……

  終了、検索結果上位3名を出力します。


    1位:ナイト=ロックウェル(30,830匹)

    2位:ロゼッタ=A=タートル(29,046匹)

    3位:ジョーカー(本名は封印されています)(9,968匹) 〉



 一瞬広場から全ての音が消え去った。

 その後、凄まじい絶叫が広場を埋め尽くしたのであった。

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