第百六十九話 勇者の隣の一般人(上)
最終章です。
「陛下、ロゼッタ様がお見えになっております」
「ああ、もうそんな時間か。通してくれ」
「かしこまりました」
執事から姉上の来訪を告げられた私はグッと背伸びをして服装を整える。
亡き父上に習い、何時いかなる時でもスキを見せないような格好をしているつもりではあるが、それでも気をつけて気をつけ過ぎということはない。
「久し振りね、ロック。はい、お土産よ」
姉上は入ってくるなり、私の机に数本の瓶を置いたのだった。
「ありがとうございます、姉上。これは……見覚えがあるような?」
「昔あなた経由でお父様に渡してもらった疲労軽減の薬ですもの」
「ああ、サムに会いに行く前のあの時の! 懐かしいですねぇ……」
姉上は結局王族には戻らず、ナイトの跡を継いで学校の教師となった。
忙しいだろうに暇を見てはこうして私を尋ね、その時の私に必要とされる薬を調合して持ってきてくれるのだ。
更に姉上は、再建された孤児院の院長としても働いている。
その万能ぶりを見ていると、亡き親友の姿を思い浮かべて目頭が熱くなってくる。
「それで姉上、今日は一体いかなるご用件なのですか?」
「実は本を書いてみようと思い立ってね。関係者に話を聞いて回っているのよ」
「本?」
「ええ、ナイトを主人公にした物語よ」
「それは……なるほど、承知いたしました。私にできることなら可能な限り力を貸しましょう」
子供たちを立派に育て上げた姉上は、遂に執筆活動にまで着手するらしい。
ナイトの子供たちは今や世界各地で父親に劣らぬ活躍をしている。
そして姉上はそんな子供たちが尊敬して止まないナイトの活躍を物語として記そうとしているのだ。
もちろん大賛成である。この世界に住む全ての者たちがナイトの物語を読みたいと思っているだろうから。
「それでライとハヤテとデンデに話を聞いて、大陸から脱出したところまでは一通り資料が揃ったのよ。後はあなたに話を聞けばおおよその話は書けると思うわ」
「私の話と言われましても、3人が知っているものとそう大差はありませんよ。あの当時の私は理不尽という濁流に飲み込まれるだけの一枚の枝葉に過ぎませんでしたからね」
「馬鹿言わないで頂戴。あの当時から今に至るまで、あなたは常に皆を引っ張ってきた指導者じゃないの。鬼気迫る形相をして港で待ち受けていたって、今でも語り草になっているというのに」
「あ~……ええまぁ。あの当時の私には全く余裕がありませんでしたからね」
今思い出しても、あの当時の私は追い込まれすぎていた。
無理もないとは思うのだ。ナイトや姉上の生存を知らなかったし、『勇者』を失い、シャインを失い、大陸から逃げ出して、人類の運命を背負っていたのだから。
「でも折角です。ナイトについて話すのでしたら、あいつとの出会いから話すことといたしましょう」
「ありがたいけれど、そんな時間があるの?」
「足りなければまた来てください。妻も姉上に会いたがっていますから」
「あの当時のあなたが、将来元魔族と結婚するだなんて知ったら、どうなっていたのかしらね?」
「絶対に信じなかったでしょうね。そもそもシャインの死を乗り越えられるとも思っていませんでしたから」
「それでもあなたは乗り越えた。笑えるようになったあなたを見ればきっとシャインも喜ぶと思うわ」
私はかつて幸せにすると誓った一人の女性を思い浮かべる。
彼女が亡くなって既に20年だ。
もはや顔も思い出せないが、彼女の笑い声だけは今でも耳の奥に残っていた。
「もちろんナイトも喜ぶはずよ。あなた再会してからずっと怒った顔ばかりしていたものね」
「あいつとは再会してからずっと喧嘩ばかりしていましたし、最後は泣き顔を見せてしまいましたからね」
「結局ナイトは最後の最後まであなたの味方だったのよね」
「そんなあいつを私は殺してしまったのです。最初から最後まできっちりと語ってみせますとも」
「ありがとう、ロック。それじゃあまずは……」
こうして姉上と私の昔語りは開始された。
だが流石にこの日だけでは終わらず、何度か日を分けて話すこととなったのである。
「こんにちは、ロック。では早速前回の続きからお願いできるかしら」
姉上が私の部屋を訪れるのもこれで7回目だ。
前回は私が島へと渡り、そしてそこで生き残った仲間たちと共に10年に及ぶ雌伏の日々を過ごしたことを語り終えたところで終わっていた。
姉上やナイトの行ったモンスター退治の期間は8年間だったが、私とハヤテとデンデは最大レベル100に到達するのに10年の月日が必要だったのだ。
レベルとは上がれば上がるほど必要とされる経験値が増えていく。
そして最高レベル100へ到達するにあたって、雑魚モンスターしか倒せないという当時の現状はまさに致命的だったのだ。
今思い出しても、あの日々は本当に辛かった。
レベル90まではいいペースで伸びていったのだ。
しかし90を96にするのに2年間、96を98にするのに1年間、98が99になるまで要した日数は1年近くに及び、99が100になった時、私とハヤテとデンデは涙を流して抱き合ったのである。
そうして私たち3人はスキルの更新に望んだ。
てっきり11個のスキルを授かれるものと思っていたのだが、勇者は特殊であるとのことで、全てのスキルを廃棄し、しかもスキルが1つの段階から始めねばならないと聞かされ、私は一瞬躊躇した。
しかし『勇者』以外の9つのスキルを放棄しても新しいスキルを手に入れたほうが良いのは少し考えればすぐに分かる。
私はしつこいくらいに確認をしてくる脳内の声に全てOKを出し、私はめでたく当初のスキルを全て破棄して、新たなスキルを授かることとなった。
この時、最初のスキルを放棄すると同時に、私の額に輝いていた勇者の印が消失した。
そして一番始めに授かるスキルの内容を選ぶことが出来ると聞かされた私は、『勇者』よりも優れたステータス・スキルを望んだのである。
正直言ってダメ元だった。
無いというならば諦めていたのだが、それは確かに存在したのだ。
しかしそれは封印されていたスキルであり、なんとか条件を満たせないかとライフルーレットが別ルートを検索した結果、私の親友がそのスキルの所有者で、しかも所有者が生きているので取得可能という結果が出たのである。
そうして私は新たなスキルを授かった。
授かったスキルの名は『一般人』、そう私はナイトの代名詞である『一般人』を授かってしまったのである。
この結果を受け、私のスキルの更新を見るために集まっていた人類の生き残りたちは大変な騒ぎとなった。
まずこの情報が正しいのならば、ナイトはまだ生きているということになる。
そして『一般人』だ。全スタータス1上昇というハズレスキルが、1万上昇の『勇者』を超えるという内容を誰一人として認められなかったのだ。
だが改めて計算してみたところ、これが正しいということが証明された。
私のスキルの更新の際に、一度に授かることの出来るスキルの数は最大10であることが分かったのだ。
つまり1+2+3+4+5+6+7+8+9+10=55で、55個が個人の授かることの出来る最大のスキルの数ということになる。
そしてこれに『一般人』を当てはめてみたところ、驚きの結果が現れたのである。
ナイトの代名詞であるスキル『一般人』は全スタータス1の上昇値だ。
それは更新をするごとに、2,4,8……と倍々に跳ね上がっていく。
全てのレベルの最大値は10である。つまり最高でもこの10倍までしかステータスは上昇しない。
だがこの更新を10回こなすとどうなるか。
10+20+40+80+160+320+640+1280+2560+5120=10230
そう、『一般人』は最後まで更新をして始めて、『勇者』を上回ることの出来る大器晩成型の最高のステータス・スキルだったのだ。
この結果を受けて、ハヤテとデンデも当然のように最初のスキルを放棄してスキルの更新を行い『一般人』を授かった。
ちなみに最初のスキルの授与の際、『勇者』は授かった瞬間に大魔王の『独占』の餌食となってしまっていたので、これは当たり前の対応である。
だが私たちはこの時、誰一人として気づいていなかったのだ。
最初から10のスキルと単体最強のステータス・スキル『勇者』を授けられた者がそのスキルを放棄することが、神の封印を解くことになるだなんてことは。
「なるほど、その結果が大魔王に報告されてナイトの、いえ私たちの生存がバレてしまったというわけね」
「申し訳ありません。まさか島の住民の中にモンスターの間者が紛れ込んでいたとは当時の私は全く気が付かなかったのです」
「私たちが勇者の迷宮から脱出した後で、ナイトに指摘されたのよね」
「そうです。しかし私はあの時ナイトとまともに会話が出来ていませんでした。シャインを殺され、お腹の子まで殺されていた私は、無事だった姉上たちとその子供たちを見て、ナイトに不必要な敵意を抱いておりましたから」
「「この非常時に何をしているのだ!」だっけ? 後で合流した時にナイトは大分しょんぼりとしていたわよ」
「当時の私は本当に馬鹿でした。ナイトはダンジョンの攻略のために、つまり私との合流を目的として子作りに励み、妻と子供を守りながら、必死に戦い続けていたというのに……」
「そうね。ナイトは勇者の確保とダンジョンの攻略以外の目的では決して子供を作ろうとしなかったわ。
迷宮の攻略は不可能、地上にも戻れない。あの状況下でそれでも万が一の可能性にかけて準備を怠らなかったからこそ、こうして私は生きていられるのだしね」
「返す言葉もありません。それで……あの後、ナイトたちはどうなったのでしたか」
「それは……ええと、私以外に、セブンやロイ、ミスターやエースから聞いた話を総合してあの後の展開を話すわよ」
「お願いします」
ロックたち3人の『勇者』の放棄、そして『一般人』の取得とナイトの生存はすぐに大魔王の知るところとなった。
そして大魔王は情報を聞くやいなやバードを任せていたエースの下へと出向き、エースを半殺しにしてしまう。
そこにエースとムツキの娘である『光の勇者』セブンが、決死の覚悟で父親を守るために大魔王に立ちはだかった。
彼女を見て大魔王はようやく冷静になり、思考に没頭したという。
勇者の枠を消費するためだけにエースとムツキに子を作らせ、しかし光の勇者以外の勇者が生まれてこなかったことを訝しんでいた大魔王は、残る3人、火、水、闇の勇者がナイトと共にいるのではないかという推論を立てた。
そうしてエースは大魔王に命令されて、11年前の戦いの真実を暴露した。
ナイトは死んではおらず、トウ老師の手で勇者の迷宮の中に逃されていたと大魔王はその時ようやく知ったのだ。
大魔王は直ちにナイトの殺害を命じ、迷宮探索のためにセブンもエースに連れられて勇者の迷宮へと入っていった。
そこは罠の巣窟だった。
古今東西ありとあらゆる罠という罠が仕掛けられまくっていたのだ。迷宮に吸収されもせずに。
これを見てエースはナイトの生存を確信する。
しかし命令には逆らえないので、配下のモンスターを引き連れて、迷宮の攻略が開始された。
それは随分と簡単な攻略だったという。
罠だけは多かったが、道に迷うということがなかったからだ。
当たり前の話である。ナイトはこの時のために、最下層までの最短ルートを構築し、エースたちを勇者の迷宮最下層『勇者の試練』の大扉前まで誘導していたのだから。
途中で行く手を阻むはずのゲートの攻略時にはわざわざ私たちが出向いてゲートの突破を手伝ったりしながら、遂にエースは迷宮の最下層へと到達した。
そこは広い空間でありながら、随分と生活臭のする場所だったという。
当たり前である。私たちは最下層まで到達したものの最後の扉の条件を満たすことができず、ここで長い間生活していたのだから。
勇者の迷宮のゲート。
地下80階までの突破条件は、考察した通り人数であった。
エルの妊娠により60階のゲートを突破した私たちは70階まで到達したが、アナにこれ以上の無理をさせるわけにはいかないと、この階でアナとエル、2人の出産を行うことにしたのだ。
そうしてまずはアナが男の子を出産した。
ナイトとアナ、2人の特徴である黒髪黒目を受け継いだ長男はロックとライの名を合わせたロイという名を与えられた。
それから数カ月後、今度はエルの出産が始まった。
エルも無事に女の子を出産した。しかし生まれてきた子を見た瞬間、私たちは揃って驚きを顕にすることになる。
生まれてきた子は赤毛と赤い瞳、そして額に勇者の印を持つ火の勇者だったからだ。
これは完全に予想外の出来事だった。
なぜなら勇者が死んだ後は、そう時を空けずに同じ属性の勇者が世界の何処かで生まれているというのは共通認識だったからだ。
だがエルは火の勇者を産んだ。
火の勇者が死んでから優に1年もの月日が経過している。
これでは計算が合わないのだ。
『何か』が勇者の転生を妨げていなければ。
「それで姉上たちは大魔王の氷河を怪しいと考えたのですね?」
「ええ。あの時、大魔王は無造作に勇者を殺していたでしょう? でも下手に殺しても勇者は別の場所で新たに生まれてくるはず。それでも大魔王が殺してみせたのは生まれ変わりを防ぐ手段を構築しているからだと考えたのよ」
「そして考えた結果、バードを囲んだあの氷壁が勇者の魂の牢獄になっているという仮説に辿り着いたと」
「私は結局その氷の壁を見ていないのだけれど、話を聞いただけでも過剰な行為であることは分かるもの。でも勇者の魂を閉じ込めると考えれば過剰すぎてしすぎることもないでしょう?」
大魔王の生み出した氷河にはただ移動を妨げるだけではなく、勇者の魂を封じ込める力もあった。
実はあの時殺された3人の勇者の次世代が生まれないことが島の中でも問題になっていたのだ。
島で生まれなくて当たり前である。
火も水も光も全てがバードの町の中とその地下で生まれていたのだから。
「そして姉上はナイトの子を産む覚悟をなさったのですね」
「仮に私が光か水の勇者を産めば、それだけで人類のためになるからね。闇の勇者であるアナの子供は勇者にはならないし、エルは出産したばかりですぐに子供を産むことが出来なかった。消去法で私しかいなかったのよ」
「しかしその当時、姉上はまだ肉体年齢が幼かったはずです。時間を置いてでもエルに頼むという選択はなかったのですか?」
「あったわよ。実際エルだけはもう一度出産をしたでしょう? でもこの考えが正しいのなら大魔王側との競争になる。実際、セブンの弟が生まれたのは、ラックが生まれてから数日後だったというし、結構タッチの差だったのよね」
ちなみにナイトの次男であり姉上の息子であるラックの名は、長男と同じくライとロックから取られている。
「そうして姉上たちは、闇と火と水の勇者と家族になったのですね」
「その通りよ。そして3人では最後のゲートの条件を満たすことは出来なかったのよ」
姉上が水の勇者ラックを産み、エルが産んだ2人目の女の子が勇者ではなかったことで、ナイトたちは光の勇者を大魔王側に押さえられてしまったと考えたのだという。
そして、ナイトたちはそれ以上の人数を増やすことを良しとしなかった。
子供一人に対し大人一人がギリギリのライン。
これで80階のゲートは突破可能。90階以降はゲートの条件次第で考えるべきだという結論にいたり、遅れて生まれた子供たちが動かせるようになるまで70階で粘った後、ナイトたちは迷宮の攻略を再開した。
もっとも姉上たちが動けない間にナイトとアナが70階より下をあらかじめ探索していたので、それほど無理はしなくて済んだという。
そして80階は読みどおりまた人数であったが、90階の条件は異なっていた。
勇者の迷宮90階のゲート突破の条件は『勇者が2名以上いること』だったのだ。
もちろん額に勇者の印が輝く勇者が3人もいるのだからゲートを潜るのに問題はなかった。
この時点でナイトも姉上たちも、私との合流時にする説明を考えることに忙しかったのだという。
迷宮を攻略するために、そして勇者を大魔王に奪われないために子作りが必要だとは言っても、いきなり子供と一緒に現れて信じるかどうか分からなかったからだ。
実際私は子供たちを見た瞬間にナイトを殴ろうと決心した。
だが結局その考えは無駄になってしまったのである。
勇者の迷宮最下層、地下100階。
そのゲートの突破条件が、『勇者が4名以上いること』だったからだ。
「正直ゲートの突破条件を理解した瞬間は絶望したわよ。これ以上勇者はどうしたって増えない。そして地上への入り口は大魔王の氷河で塞がれている。迷宮の最下層まで到達しておきながら、閉じ込められたという事実を突きつけられたわけだしね」
「地上に残った私たち、私とハヤテとデンデが死んでいるという可能性は考えなかったのですか?」
「その可能性も考えたけれど、氷河のドームが外からの移動も妨げている可能性も同時に考えたのよ。それに私たちはなるべく貴方たちは生きていると思いたかったから、別の方法を考えることにしたのよね」
私はその時のナイトたちの心情を思い浮かべようとする。
必死に頑張り、子供まで作ってようやく辿り着いた迷宮の最下層で、最後の最後で条件を満たせないだなんて、絶望し気力を失っても何の不思議もないように思えた。
「それで姉上たちは、どうにかして勇者をもうひとり揃えようとしたのですよね」
「そうよ。でもそうなると、もはや狙うのは大魔王と融合したサムしかいないという結論に至ってね、結局1階まで戻って、全ての出入り口に私たちの生存を知らせる証拠をばら撒いて、大魔王を呼び寄せるという方法しか取れなかったのよねぇ」
「それなのにやって来たのは大魔王ではなくて、セブンだったと」
「セブンだけじゃなくてエースの子供全員よ。迷宮を突破するには複数の勇者かその家族が必要だったから、家族総出でお仕掛けて来たのよね」
「最下層に到達した途端、子供たちは姉上たちに助けを求めたのでしたよね」
「エースからそう指示されていたのですって。おかげでセブンが合流してくれて、最後の扉が開いた時は絶体絶命な状況下なのに嬉しかったわ」
「そして中には門番がいたと」
「4属性を操るゴーレムだったのだけど、どうやらやって来た勇者に反応して力が変化するみたいでね、アナ以外の勇者はスキルを得てもいなかったから、バランスが悪くて、すぐに倒せたのよねぇ」
「そうして姉上たちは迷宮から脱出できたのですよね」
「正確にはナイトとロイとセブン以外の全員でね。転移直前に邪魔が入って3人とはぐれてしまったのよ」
「そして3人は魔族の国へと転移することとなった」
「ミスターグラモが魔族だったおかげよね」
「勇者の迷宮のクリア特典で個人を選べたのは僥倖でしたが、それがこういう結果に繋がるのですから分からないものですね」
「私は転移した直後に見たあなたの表情を今でも覚えているわよ」
「止めてください、忘れてください」
「上半身裸で、目は血走っていて、髪はボサボサ。突然現れた私たちに向かって奇声を上げながら襲いかかってきて、私は思わず……」
「NOです、姉上! それ以上はいけない!」
「あの一件ですっかり子供たちに怯えられたものねぇ」
「とにかく私たちは11年ぶりに合流を果たした! その頃ナイトは魔族の国へと転移していた! そうですね!」
「そうよ、長くなったから続きは明日にしましょう。ところでこの感動の再会シーンは……」
「もちろんカットで!」
「沈黙もまた事実を捻じ曲げることだと理解しているかしら?」
「余計な恥を掻きたくないだけです!」




