22 花言葉は健康と贅沢②
「あらぁン! 久々の顔ぶれねえン! 元気そうでよかったわン!」
「マロニエさんも元気そうでよかったわ!」
もう帰りたい。
入店3秒で帰りたい。わかってる、マロニエさんはすげえ良い人だってわかってる。俺のメイスを選ぶ時だって、剣やストリングショットやアックスの基礎を踏まえつつかなり丁寧に見繕ってくれたし、送り出すときだって「負けんじゃないわよン!」って言ってくれた。
そりゃあ良い人だ。あちこちで武器の話聞くたびにまずマロニエさんが出てくるし、なんならロス君の武器だってそのほとんどがマロニエさん謹製だという。個人でいくつも武器所有すんなと思うがそれは一旦置いておく。武器と名の付くもの全部使いこなせるのはさすが物理・傾国ってところか。
「ウタキもちょっとだけたくましくなった気がするわねン。けど、そのメイスの出番はあんまり無かったみたいねン……」
「ロスくんがいたら使う暇ないっすよ、しかもウタキさんが」
「それもそうよねぇン」
「やめて、そのセリフは俺に効く」
女騎士と魔導士でメイン攻撃張れるくらい強いはずだったのに、ロスくんがパーティじゃ物理技が一番強かったのなんかのバグじゃんと思ったくらいだ。
フィーアはそもそも人間じゃないし、パーティ加入もイレギュラーだったけどそれでも強いには違いなかったし。
結果、戦闘で役に立たないの俺とリトだけ。
「といってもリトさんは回復ができましたし、戦闘関連で一番アレだったのはウタキさんでしたけどね」
「うるせーな! どうせ俺は飯炊き係だったわ! けど無血開城したの俺だからなこんちくしょう!」
「あらっ、考えてみたらそうよねぇン、旅は終わったのに武器見に来たのン? 近衛兵にでもなるのかしらン?」
「あぁ、ちがうのよマロニエさん。私たち、その、調べものをしててマロニエさんに相談にきたの」
「調べもの? 鉱物の産出地とかしか役にたてないわよン?」
さすが貴金属に強い店は言うことがごつい。
そういや南のほうの町と東のほうの町では特産の金属が違うんだってティタニアさんが言ってたな。武器にする固いものと、装飾品向きの柔らかいもので、産地も価値基準も違うものがたくさんあるって話をした。
まあ、様々な観点で様々な価値を見出すものだ。お前のようにな……といいながら川に沈められかけたのも今となっちゃいい思い出だ。勇者タイム終わったのに姫様がルートに居るって知ったらあの人どんな顔するかおっかねえからしばらく会いたくないけど。
「アリアさんについて聞きたいことがあるんです」
「アリア? なんでまた」
「彼女が役持ちだから」
「ふうん……厄介そうな話ねン。待ってて、表の看板を仕舞ってくるわン」
ピリッとした空気をかもしたマロニエさんは普通に武人っぽかった。漏らさなくてよかったまじで。




