21 内包した光が持ち主を食い殺してしまうまで
「抹消、ねえ」
困ったようにマスターは笑う。食人鬼の話、最初からずっと気持ち悪かった。誰もが知ってる話なのに、誰もその中身を知らない。
秘密結社とか宇宙人の研究のほうがまだ現実味がある。おかしいだろ、こんだけ聞きこんでもまだ何一つちゃんとわかってないなんて。
「そりゃあまあ、関係者としては助かる話だけど、そこまでする理由は? ウタキくんとマツリカには、何の関係もないのに」
「俺は転移者です」
「うん?」
「マツリカさんもきっと転生者です。それだけで、いいじゃないすか」
たとえば俺になんの関係もなくても。
たとえば俺が、勇者じゃなくても。
たとえば俺が、エレーナを好きじゃなかったとしても。
たとえば、その人が、苦しんでると知ってしまったら。
「見て向ぬふりはしたくない」
「ウタキ……」
マツリカさんが何者か? しらねーよそんなの。エレーナがエリューニスだって? だからなんだよ。
アシュタルさんが悔やんでるって? それこそ俺にはどうしようもねえし、クレオがなんかを怖がってるって、俺だってその原因は知らねえし。
ただ、エレーナも、アシュタルさんも、クレオも、俺は好きだから。俺小難しいこと考えられる頭持ってないし。
「……まず、この世界は虚像だ」
「虚像?」
「文字通り、実体がない。そう見えているだけの場所なんだ。私や、きみや、ほかの転生、転移者たちにも」
「虚像って、でも俺たちちゃんと生きてるっすよね……?」
「ああ、君らから見ればここはちゃんと地に足の着く場所なんだろうけどね、よそ者の私たちにはそうじゃない」
意味はよく分からないけど、前にどこかでそういう話を聞いたような気がする。
うすぼんやりした白い記憶の中で、俺はあの時、どこで何をしていたんだっけ。
「たとえ話だけど、この世界の住人はいわば「メインキャラクター」。ウタキくん、君はプレイヤー」
「プレイヤー……」
「私はエンジニアで、タカミツ先生はベータテスターかな。役持ちっていうのはゲームマスターに相当する」
「べーたてすたー? ってなんですか、ウタキさん」
「治験する人かな、簡単に言うと」
この世界にテレビゲームに相当するものは存在しないのでそうとしか言いようがない。俺の少ない語彙で説明できるレベルであってほしいまじで。
「アリアのほかにもいるけど、まあ、対外的に役持ちと公言されてるのは彼女しかいないから彼女を攻略するのが一番早い。私は壊れたところを直すのが仕事であって、進行形でどこが壊れそうか見張ってられるのは役持ちだけなんでね」
「アリアさんをオトす方法とかないすか? 俺あの人に文字通り一杯食わされてるしなぁ」
忘れたとは言わせねえあの紅茶。なのに魔法がほぼ使えねーとはどういうことだちきしょー!
「とりあえず、まずマロニエに会うのがいい」
「…………どうしても?」
「どうしてもだね」
おかしいな、ここまで超シリアスパートだったのにマロニエさんでてくる? まじ? ここで?
次、絶対ギャグパートなんだが??????




