表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?  作者: 沢瀉 妃
エレーナと食人鬼とあれこれ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/99

18 利己的で道徳的で献身的な愛のカタチ


「約100名に及ぶマツリカの被害者たちだけど、そのほとんどは私たちと同じ異世界の人間だ」


「え、そうなのね……血の零時事件は、たしかお屋敷の人たちが中心だったと聞いてるけど」


「ああ、そうだね、あれは特殊だよ。発端ではあるけど」



 血の零時事件。

 この世界で何度その単語を聞いただろう。誰もが知ってる猟奇事件の主犯はいまもなお心に巣くって恐怖の象徴となっている。

 王様がこぼしてたけど、「零時になったら食人鬼がくるぞ」というのが寝ない子供への常套句だそうだ。俺も言われたな、鬼が来るとかお化けが来るとか。最近はそういうアプリもあるんじゃなかったっけ。



「まずね、そもそもどうして血の零時事件が起きたかというと当時の当主の奥様というのが望まぬ輿入れをしたからだね」


「政略結婚ってことかしら?」


「まあ、そうだね。そもそもはマツリカと恋仲だったそうだよ」



 マスターがちらりと俺を見るので首を横に振る。

 彼女は知らない。自分の産みの親がその奥様……ロータスさんだということを。



「その後、懐妊したはいいがそのころから気狂いになってしまって大変だったらしい。生まれた子のその後は、私は知らないんだがね。マツリカはかつての恋人の発狂を知り、彼女を助けようとした。一応〈外〉ではそういうふうに記録されている」


「……ただの、人殺しってわけじゃないのね」


「理由があっても殺した事実は変わらねえよ、エレーナ、ほだされるな」


「そう、ね」



 この世界の大衆は、アシュタルさんであってもその事実をおそらくきちんとは知らないはずだ。気づいているかもしれないけど裏付けるものはないだろう。なんせ彼はその事件を起こした後またすぐに行方をくらませていたはずだ。



「そのあとに被害者となった者たちは、いわば救済されているんだよ」


「救済?」


「死ぬしかないほど追い詰められていた者たちさ。異世界に来てもなお、まだ自信の呪縛から逃れられない、そういう人間がここにはたくさんいるんだよ」



 異世界転生とか転移とか、ラノベの題材としては結構ハッピーな話だと思う。

 いや、支配者になったり人外になったり、戦争に巻き込まれたりとパターンはあるけどな。それでもその根底には逃避がちらつくもんだ。

 大人にウケるのは、みんなストレス社会から逃げたいからかもねなんて意見もあるくらいだし。


 俺は、どうなんだろう。

 なにかから、逃げてきたかったのかな。



「彼が食ったのはそういう死にたい連中ばかりだよ」



 ほだされてはいけない。結局死んでるんだからそれがどんな理由であっても。

 たとえそれが本当の意味での、救いなのだとしても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ