12 なーんてうそうそ
「というのは冗談でして」
「ですよね! さすがにどうかと思うわ!」
くすくすと笑うフォルトゥナさんだが、この人なかなかいい性格してるわ。ここにきて俺をおちょくるだけの余裕があるってことだもんな。
仕切り直しだと思って姿勢を正す。
にっこり笑うとフォルトゥナさんは口を開いた。
「あなたはこれから大きなお祭りに向かおうとしています」
「……」
「その途中でカップル3組、三人家族2組、双子を連れた老夫婦1組とすれ違いました。会場に着いたとき、何人いましたか?」
ん?
カップル3ってことは、まず6だよな。三人家族が2だから、これも6?双子が2で老夫婦も2……だから、全部足して16、でいいのか?
いや、知恵比べってんだからこれはなぞなぞの類のはずだ。ただの計算でいいわけはないよな。
まず問題文を思い出せ。俺は、……いやなにが悲しくて一人で祭りなんぞいかなきゃなんねえんだよ。クーラーのかかった部屋で日がな一日ゲームするわくそが。この世はクソゲーだ。
だいたい、会場着くころになってそんな誰とすれ違ったかなんて覚えてられるわけが……
すれ違う?
「ウタキさぁん、降参したほうが」
「いーや、しない。わかった答え」
「そうですか、チャンスは一度きりですがよろしいですか?」
「うん。会場に着いたのは……一人だな」
「えっ、うそ、なんでよ? だってカップルと三人家族と……えーっと?」
この問題ひっかけなんだよな。気づけばなんてことないけど、たぶんまじめに考えるとわからなくなるんだ。
あんな神妙な空気で言うからまじめに考えそうになったけど、言ってることはそんなに難しくない。
「いいかエレーナ、カップルも家族も双子も、どうしたって?」
「どうって……道すがらですれ違ったんじゃ……?」
「あっ、俺わかったっす!」
そう。〈すれ違った〉だけだ。別にその人たちはお祭りに向かってたわけじゃない。
だから会場に着くのは向かってた人間一人だけ。
まあ冷静に考えて一人で祭りとか行かねえんだけどな!!!!そんな心ごりごり削るような真似する⁉ 俺はしないよ。フリじゃなくて。フリじゃないって。フリじゃねえっていってんだろ!
「……意外と冷静なんですねぇ」
「合ってました?」
「たいてい1回きりなんて言えば間違えてくれるんですがね。仕方ありません」
よーやっと、あのわけわからん日記を紐解けるらしいな。




