75 シリアスパートになれると思ったの?
「アリアドネちゃんのことはロッタさんからちょっと聞いたわ」
「えっ、お母様に会ったの?ふぅん、きれーでしょ、お母様」
「そうだね、君とは違うタイプだね」
ロッタさんがマリリン・モンローならアリアドネちゃんはきゃりー〇みゅぱみゅだっていえば伝わるだろうか。ちなみにアルバートくんの雰囲気は黒執事にでも出てきそうな感じだ。身長は二人ともそんなにかわらない。ぱっと見が160後半くらいってところだろうか。ちらっと自陣を見るとエレーナが小さくてびびる。
「改めて自己紹介するね。・・・我が名はアリアドネ、この世界を統べるために生まれし闇の申し子。勇者よ、貴様の首を私の晩餐の席に華々しく飾らせていただこう」
「ちょっと待って」
「え」
「な、なによウタキってば、この期に及んで」
「言いたいことが増えた」
まず、その取ってつけたような「魔王っぽい口上」なんなの?我が名はとか言われても違和感ばりばりすぎて展開についていけない俺がいるよ?ていうか読者が絶対置いてきぼりじゃない?無理過ぎない?きゃりーぱ〇ゅぱみゅのビジュアルで「我が名は」ってなに?ツッコミ待ちなの?ここもシュールギャグパートなの?
「あ、あのね、勇者サマ、イレギュラー対応でも一応こういう口上が必要で」
「ほらあああ、それが素じゃん、絶対そっちが元の性格じゃん!ザ・魔王です!みたいなの嘘じゃん!ロッタさんの言う通り角と羽あるけどただの可愛い女の子じゃねーか!」
「う、ウタキさん、あの、ここ一応魔王城っすよ・・・?」
「だからなんだよ!?今日まで魔王城に匹敵するシリアスパートなんてアシュタルさんの話くらいだったじゃねーか!食人鬼にだって言いたいこと余りまくってんよ俺!?そもそもリトてめえ今更、魔王城っすよとか言われてどうなる世界だったら俺とっくに死んでない!?ねえ!?これまでの70話はなんなんだよ!?俺がティタニアさんとフィーアに殺されかけてるとこ何回も見てるよな!?」
「すいません、俺が悪かったっす」
キッとにらみつけると困ったような顔をしてリトは頭を下げた。その後ろではティタニアさんもフィーアもあさっての方向を向いている。ちょっと、目線そらせばチャラになるとかそんなのないからな。忘れられがちだけどこの連載の趣旨は「ヤンデレハーレム」なんだからな。俺だって忘れたいですけどそんな設定?タイトル詐欺じゃんと言われても仕方ないメタ全開なのに苦情がこないの奇跡だと思ってんよ?これも何回だっていうけど俺の好みはエレーナ一択だからな?
「うん、だからウタキは私の好みじゃないのよ。ごめんね」
「モノローグに話しかけちゃだめだし、こんなところで改めて俺を振るのもやめろ」
さすがにわかりきってる上で何回も振られるのは俺だって傷つく。
ロスくんにこにこしてるけど自分もA級戦犯って認識持ってくれなマジで。乙女ゲームに出てきそうな線の細い優男が戦闘狂で実力行使で傾国させたって目に見えない設定盛るのよくないよ、夢女子とか腐女子の餌食になるんでしょ俺知ってんだからねそういうのも。
「う、うう、どうしようアルバート、こんなときのマニュアルないよね?」
「そうだねえ、さすがにこういうギャグ・・・んんっ、勇者はニュータイプかと思うし」
「聞こえてんぞこらぁ」
「うーん、あ、あのね、勇者サマ、通常イレギュラーだとしても顔合わせたら一応否応なしに戦闘するのが恒例なんだよ?戦いに来たんでしょ?」
「俺は武力行使は望んでないよ」
「えーっ!折角対魔王シーンなんですよ!?戦うためについてきたんですよ!?」
「ちょっと黙って傾国S級戦犯」
おろおろしているアリアドネちゃんと絡みつくような目線を送ってくるアルバートくん。
違和感はあった、部屋に入ってきた時からずっと。なんせ俺と魔王は固定役職で、そのうえ俺たちのルートの強制力は一般人とは比べ物にならない枷だから。だからわかる。自分の意志と関係なく起きる「ルート」 のちからは絶対で、例外なんてないってことが。だから気になる。その反応が。
「アリアドネちゃんてさ、女の子じゃないだろ?」




