73 まおうじょうについたよ
「呼ばれてないけどババンババンバンバン」
「ビバノンノン」
「待って今合いの手入れたの誰!?」
ネズミを連れていざ魔王城。むかし、自分で絵描いて戦うゲームなかったっけ。ナントカ王国とかいうやつ。あれうまくかけた試しないけど友達のお兄ちゃんが某テーマパークの香辛料キャラ作ってた気がする。あれは上手かった。あいつ今頃なにしてんだろうな。
「思ったより早かったな、俺もっと百話とかかかるんかと思ってた」
「倒すのが本編じゃない、とかじゃないですか?」
「まだ続きあんのかよ、泣きそう」
「人生は日々がシナリオの延長よ、ほら行きましょう」
エレーナがちょっといいこと風なこと言ったけど、俺は異世界にいるんだよ?ここで一生を終えるつもりは…とはいえ現実世界のことなんてあんまり覚えてないしどうしていいかはよくわかんないかもしれない。タカミツ先生みたいにこっちに定住してる人だっているわけだし。
正門がら空きなので正面からお邪魔することにした。ちゃんと邪魔しますって言った。
まじでいなくない?本当に大丈夫?なんなら罠の可能性でてきたぞ、このネズミ嘘ついたんじゃねえだろうな。
「うええ、怖いっす怖いっす怖いっす~」
「情けない声で喘ぐな、みっともない」
「今は誰よりもティタニアさんが怖いっす・・・」
「わかる」
黒い石造りの城は空気もどことなくひんやりしている。上は天井が高いのでごうんごうんとなにやら不穏な音が響いているけど床は分厚い深紅のカーペットなので足ごと吸い込まれるんじゃないのかってくらいに音を吸い取っている。
「フィーちゃん、どっちが魔王の部屋?」
「玉座はここまっすぐだけどお、私室なら東の棟の最上階だよお、でもまじでだあれもいないみたいねえ」
「はん、裏切り者風情が・・・」
「うっさいんだけどお、勇者サマこれ燃やしていい?」
「よそでやって」
セオリー通りなら玉座の間にいくんだろうけど、なんせ俺らはハズレのドぐされパーティらしいからここは私室を責めるのが賢いんだろうな。ロッタさんに見せられた写真を思いだす。大量のぬいぐるみとケーキに囲まれた合法ロリサキュバスみたいな見た目の女の子。あれがアリアドネだとしたら十中八九ヤンデレコース一名様ご案内だろうな。
「ドア開けて一旦待機な、向こうの口上くらいは聞いてあげないと最終的に勇者認定されないかもしれない」
「考えていることがすでに勇者様とはいいがたいですけどね」
「殺されかけたり泣きつかれたり死体でもいいから欲しいって言われる俺の気持ちなんか誰にもわかんねえよ!わかってたまるかくそ!」
「いろいろマックスなのはわかったから落ち着いて」
どうどうとエレーナに御される。馬か俺は。
「んあ、みんな、あっち階段あんのお、あっち」
「これのぼるの?帰る?」
シンデレラのネズミの気持ちだった。なんだこのとんでもねえ螺旋階段。バトル前に死ぬじゃん。もうなんなの、早く魔王倒しておうち帰ろうぜ。




