71 そもそも魔王は今何してるんだろう
「まず、現状の魔王軍の規模と幹部クラスについてな」
「まず!?」
「たりめーだろ、なんで一つ吐けば終わりだと思ってんだ」
「お前は本当に勇者なのか・・・?」
うるせえ、もうこうなったらなりふりなんぞ構っていられるか。ぶっちゃけ、修行パートがうける時代じゃないのに俺が頑張ってる描写を読みたい読者なんているもんか。メタいとかいうな、そんなもんなんだ。あと趣味なんだ。誰のとは言わないが。
メタ云々はさておいてもあまり時間をかけてる余裕はない。俺が達人クラスになるまで修行パート書こうと思ったらコミックスでは平然と四冊分くらい必要になるだろう。つまり作中では年単位で修行することになる。誰が読みたいんだよそんな漫画とかラノベ。俺なら読まないよ。
あと単純にここ最近の魔族の動きが活発化してるのがどうにも解せない。フィーアの奇襲で失敗した(というかフィーがルートだったのは俺にも誤算だったわけだけど)のを懸念してるのか大きな動きはないけどそうじゃなくても一匹がかなり強いみたいなのには何回か出くわしてる。なにか企んでるのかもしれない。
「規模は、数千万、厳密な数字はわちきも把握できてない。幹部なら知ってるかもしらんがそもそも魔族は純血統以外にも発生することがあるから勝手に増えるしな、そこのジョロウグモみたいに」
「はあああ?ドブネズミ風情に言われたくないんですけどお!?あんただって元はパン屋のネズミ捕りで死にかけた小物でしょうがあ」
「なるほどな、小娘もドブネズミも突然変異なわけだ」
「ティタニアさん、突然変異ってなにかしら?」
「魔族には、私の祖母たちと同じように純血統、エルフや吸血鬼なんかのようにその一族の血筋というものが存在する。ハーフエルフなんかは混血児なので血統からは外されるがヒト以上には違いない。翻って突然変異は元々は普通の動植物がなんらかの要因で魔族に昇華することを言う」
「そーなのお、まあ基本は酷いことされてえ恨みつらみを吸収してえ、みたいな?だから魔族の大多数は人間が嫌いなんだけどねえ」
なるほど、勝手に増えて勝手に傘下になって勝手に減ってんのか。そりゃ厳密な数はわからんわな。
とはいえ引っかかる。「うらみつらみ」なんていうけれどこの世界での対魔王戦にはそういうじめっとしたものはないはずだ、なんせこれは恨みつらみによる戦争じゃなく戦争そのものに意味があるらしいから。とってつけたような設定な気がするけどなんか意味はあんのかな。
「じゃあその幹部っていうのは?」
「わちきは諜報部、それ以外にも暗殺部隊や医療部隊があるがその総括をしているのがアリアドネしゃまの側近のアルバートしゃまじゃ」
「なんか新しい名前でてきたっすね」
「アルバートしゃまは、魔王族の血統じゃが直系じゃないらしいのでな」
「お前けっこうぺらぺらしゃべるのな」
まあ、後ろでロスくんがにこにこしてるからだろうというのは想像に難くないけど。なんせさっきから一言もしゃべってない。もう気配がこのネズミに向かってとんがってるもん、黙秘したら殺すって感じだもん、こえーな。
「で、そのアルフォートくんってのはどんなやつなんだよ」
「ウタキさん、それはお菓子だと思うっす・・・」




