07 王女様は転生者様がお好き
よくよく考えてみたけど、俺って転生というか転移なんじゃないかと思うって話をしたらエレーナは首を傾げてしまった。
何が違うのかわからないと。まあそうか。大差はないのかもしれない。
と、思ってたのが数分前のこと。
「失礼いたします、新たな転生者が固定役職でしたのでお連れしました」
「ほう、6人目か...名を名乗れ、若人よ」
や べ ぇ ぞ こ の お っ さ ん。
なにがやばいって貫禄っていうかオーラがすごい。王族ってこんな感じなの?フランクとか言ったやつどこのリトロスだよ?
「もう、アシュタルさんってば、またそんな怖い顔して」
「しかしな、エレーナ、私は王の側近として常に緊張感を」
「王様じゃないのかよ!」
無駄に迫力満点だからてっきり王様かと思ったじゃん!側近ってことは国務大臣レベルってことだよな。
それでも十分えらいんだろうけど、なんだよこの圧力。側近でこれって王様どんな人なの?俺は死ぬの?
「お、あ、ウタキです」
「ウタキ。見知らぬ地で大変だろう、我々はそなたを歓迎する」
動きが仰々しい。衣装のせいなのかしらないが、とにかく絵になるしめちゃくちゃ格好いいのでしゃべり方とかもあんまり気にならないのがすごい。異世界すごい。でもやっぱりちょっと怖い。
エレーナもリトもそうなんだけど、衣装が西洋風ファンタジーだ。甲冑やらマントやら。みんなの服や鎧の胸元にはふくろうを模した刺繍やレリーフがあるんだけど、これはどうやらこの国のマークらしい。国旗みたいなもんだろうか。
愛国心やっべえwwwって思ちまってごめんな。でも俺以外にも絶対思ったやついたはずだから口には出さない。
「お、なんだなんだ新しい転生者か?」
「あ、陛下」
「おいっすー」
「...あれが?」
え?側近のおっさんはこんなFPSの登場人物かと疑うような渋いおっさんなのに、陛下ってあれ?ほんとに?どっからどう見ても文系のウェイじゃん。俺が友達になれないタイプじゃん。経営学科とかによくいるやつじゃん!青い鳥にバーベキューとか海とかドライブの写真載っけちゃうタイプじゃん!!
思考力がほとんど死んだ。なにがなにやらさっぱりわからない。
っていうか陛下っていうから余はなんとかぞ、みたいなおっさん想像してたけどこんな若いお兄さんなの?見た目年齢は俺とそんなに変わらなさそうだ。
「ほら、ウタキ、ご挨拶して」
「えっ、まって、おれなに言えばいいの」
「あはははっ、萎縮してんのかー?もっと楽にしてくれよ」
玉座にどっかり座り込む文系ウェイ、もとい国王陛下。
貫禄みたいなものはないけど、オーラは感じる。他のやつらとは違うんだぞっていう安っぽくないカリスマ性みたいなもの。
「俺はオディール、この国の顔だ」
オディールて女性名だよな、とは聞かない。命が惜しい。
「俺はウタキ。えっと、転生したっぽい」
「ウタキ!そうか、転生したあげくルートがあるのか!そりゃあ災難だ!」
大口開けて笑ってる姿に品みたいなものは感じない。なるほど、こりゃフランクだ。
聞けば、前王亡くなったのが3年ほど前でそれからすぐ王位を継承したらしい。聞いたところによるとなんと16歳だった。
「困ったことがあればいってくれ、力になるぞ。そんで、どういうルートなんだ?」
「えーー「お兄様、こちらにいらっしゃいますの?」
俺とエレーナを遮って現れたのは髪の長さ以外、オディールと瓜二つの女の子だった。二人は緑色の髪だから草属性なんだろう。
「オデット!ちょうどいい、ウタキ。こいつは双子の妹のオデットだ」
「まぁ、新しい転生者...さま...」
「あ、どうも」
「緊張感ないわねえ...」
目をぱちくりさせながら、俺に近づいてくるオデット姫。
エレーナより顔は格段に幼いが、バストサイズはDってところだろうか。発育が良さそうではある。
「ウタキ様とおっしゃいますの?」
「うん、そうです」
「なんて高貴なお名前でしょう...」
今、背中ゾクッとした。
エレーナに目線を送るとエレーナも困ったような顔をして俺と姫様を交互に見やっている。
『王妃じゃなくて王女に気をつけたほうがええぞ』
ふいにパキラの言葉を思い出した。ま、まさか
「ウタキ様、私のこともオデットとお呼びくださいまし?」
「いやでも王族らしいし、エレーナとはわけがちが」
「わたくし至らぬ点も多いですけれど、ぐすっ、なにがいけないんですのぉ、えう、ひどいですわ、ひどいですわ、お名前くらいいいでしょう?ひっく、エレーナ様はお名前呼びなさいますの?そんな、そんなのって...羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましいいいいいぃぃぃずるいですわああぁぁぁうわあああん」
この世界にきて初めていっそ死ねないかなと思った。