68 ヘタレ勇者と魔族の子
「ほんっと最悪、ひっさびさに元同胞かと思ったらよりにもよってお前とかあ」
「きっ、この裏切り者がっ アリアドネ様にもアルバート様にも恩を仇でかえしゅとはっ」
「はんっ アタシがアルバート様に気に入られてたのまぁだ根に持ってるわけぇ?やだやだ器のちっちゃい魔族はこれだから」
「きいいいいいいいっ!言わせておけばああああ!」
「なんだあれは」
ぽかーん、といった効果音が見えそうなほどぽかーんって表現がぴったりの顔をしている。ティタニアさんはじめ全員、多分俺も。フィーアだけがマジの悪役面して対岸を睨んでは鼻であざ笑っているけれど、どうやらあいつも魔王群の一人なわけか。見た目はネズミ。ハムスターとかかわいい感じのじゃなくてマジのドブネズミ。汚いし目つき悪いやつ。
「小娘、あれはお前の、なんだ、同族か?」
「やだああ!あんなのと一緒にされたくなあい!」
「魔族には違いないんですよね?」
「そお、あいつ諜報部のボスやってるドブネズミなのお」
「わちきをドブネズミ呼ばわりすんじゃねえ!この図体しか取柄のないジョロウグモが!」
「言っとくけどお!アシダカグモは益虫だからあ!アタシの眷属は益をもたらすのお!あんたみたいにフンもゴミもばい菌まき散らさないから一緒にしないでくれるう!?」
「子供のけんか、みたいっすね・・・」
困ったようにリトが笑う。
一応、魔王群諜報部のトップってことはそれなりのあれなんだろうけど、なんだろう、強そうとかそういう単語絶対に使いたくない。ちなみにサイズ感はウサギくらいなんだけど、フィーアみたいに人間サイズってわけでもなし単にちょっとでかいネズミってなると本当にかわいくねえのな。
でもたしかに、ネズミってどこにでもいるもんな。あいつの眷属とか部下がネズミだっていうんならこっちの行動なんか筒抜けだったろうしこれからはもうちょっと気を付けよう。
「なあ、フィーア」
「なあに?」
「ここであいつぶっ倒したら諜報部の指揮系統崩せる?」
「に゛ょお゛!?な、な、なんてこといいやがる、きしゃまっ勇者のくせして!」
「ええ・・・俺正々堂々とか嫌いなんだもん・・・」
ナントカ戦隊とか戦う魔法少女の変身シーンでボコしちゃえばよくね?っていう夢もへったくれもないタイプだ。ティタニアさんは騎士だけど正攻法じゃなきゃだめだー!ってほど戦いが綺麗だと思ってるわけじゃないし、エレーナは隙をつくのが楽よねーってかんじだし、なによりロスくんの外道具合には頭が下がる勢いなわけで。
「敵の自己紹介も聞かないのかっ シェオリーガン無視かっ!」
「ロープレじゃあるまいしいらんでしょそんなの、興味ないもん」
「ぐうううううう!!!!このハズレ勇者がああああああ!!!」
「フィー、あれほんとに強いの?」
「全然」
そんなこったろうと思ったけど、まだこいつに尺つかうの?もういらなくない?




